鬼ヶ島からの手紙

(おにがしまからのてがみ)
初演日:2018/10 作者:一 二三
「鬼ヶ島からの手紙」

□登場人物□
 ・法隆寺 雅宗(ほうりゅうじ まさむね) ♂
 ・百目鬼 小町(どうめき こまち)    ♀
 ・無縁坂 達衛門(むえんざか たつえもん)♂
 ・紙芝居屋               ♂




D.O
上手スポットC.I(出来れば幕を上げる前に幕の前で演技)
帽子を被り、眼鏡を掛けた紙芝居屋が紙芝居を持って入ってくる(若しくは紙芝居の自転車を引いて笑)。

紙芝居「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!楽しい楽しい紙芝居の時間だよ!さぁさぁ、あっちの子もそっちの子もおいでおいで。なぁに、お金なんか要らん要らん。おじちゃんは、紙芝居をするだけさ。じゃあ!始めようか!さーて、今日のお話は…」

紙芝居屋、紙芝居を捲る。タイトルが出る。「桃太郎」

紙芝居「桃太郎だ!え?そんなの知ってるって?もう聞き飽きた?…おいおい!帰っちゃ困るよ!まぁ聞いて損は無いって!よーし、じゃあ行ってみよー!」

紙芝居屋、紙芝居を捲る。紙には船の絵。

紙芝居「時は平安時代。この頃は、お隣さんの唐の国って所に色んな人を送っていたんだね。何でかって?そりゃ、色んな事を勉強する為さ。…おいおい!此処で帰るのは早くないかい!?参ったなぁ、まだまだこっからだってのに!…ごっほん!えーっと、それでね、其処に一人の男が乗っていた。それがこの人!」

紙芝居屋、紙芝居を捲る。紙には法隆寺雅宗の絵。

紙芝居「法隆寺雅宗!さて、今回はこの人が主人公!…えっ?桃太郎じゃないのって?だって、わざわざこーんな人前まで出て来て大見得切って、桃太郎なんて普通な話、やる訳無いでしょ!さぁ!此処からが本番!唐の国へ向かう船に乗った雅宗、この後彼にとんでもない災難が降り掛かるっ!」

大きな落雷の音と共に、上手スポットC.O
荒波の音(ここで幕が上がる)。

中央照明(照明の大きさは部屋のサイズに合わせて)F.I
小町の家。中央に卓袱台。小町の頭には三角巾が巻かれている。
小町が部屋の中で作業をしている。小町が作業を終え、部屋から出て行こうとした時、突然、扉を何度も叩く音が響く。
驚いて振り返る小町。恐る恐る扉へ歩み寄り、ゆっくり扉を開ける。

小 町「…誰です―」

扉を開けた途端、部屋に飛び込んでくる雅宗。

小 町「きゃあ!」
雅 宗「はぁ、はぁ…」
小 町「だ、誰ですか!? 貴方、誰なんですか!?」
雅 宗「ご、ごめんなさい! あ、あのぉ…此処は、唐の国ですか?」
小 町「唐の国?」
雅 宗「実は僕、和船に乗って日本から唐の国へ行く予定だったんですが、嵐に遭って、その拍子に船から落っこちてしまって…」
小 町「まぁ、それはお気の毒に…」
雅 宗「此処は…唐の国ではないようですね…」
小 町「はい、残念ながら…」
雅 宗「そうですか…」

雅宗、立ち上がって去ろうとする。

小 町「え、あの…何処へ?」
雅 宗「あぁいや、唐の国でないのでしたら、此処に長居しては貴方のご迷惑ですから。失礼致します。」
小 町「あ、あのちょっと!」
雅 宗「え?」
小 町「あの…人間の方ですよね?」
雅 宗「……は?」

小町、頭の三角巾を外す。そこから、鬼の角が姿を現す。
唖然とする雅宗。

小 町「貴方…鬼ではありませんよね?」
雅 宗「……はい」
小 町「残念ながら、此処は唐の国ではありません。そして更に残念ながら――此処は貴方方が恐れる、鬼ヶ島です。」
雅 宗「……マジか。」
小 町「マジです。」
雅 宗「うわぁ…」
小 町「…怖いですか。」
雅 宗「…………いえっ!」
小 町「え?」

雅宗、珍しそうに小町を見回す。

小 町「え!? ちょ、何ですか…!?」
雅 宗「すんげぇー! へー、鬼ってホントにいたんだー! え、え、これって角でしょ!? うわーホントに縞々なんだ!! つーかでっけぇなぁ!」
小 町「ちょ、ちょっと!」
雅 宗「あっ…ごめん。」

小町、女性らしく恥ずかしがる。

雅 宗「…すいません。やっぱ、帰ります。」
小 町「…待ってください。」
雅 宗「はい?」
小 町「…分かってるでしょう。簡単に此処から帰れる訳無いじゃないですか。」
雅 宗「…まぁ、船とかは今から造るとして…」
小 町「そうじゃなくて。」

間。

小 町「…鬼ヶ島に来た人間が、戻れる訳無いでしょう。」

雅宗、諦めたように座り込む。

雅 宗「まぁ、それはあくまでこっちのルールであって、まぁ…」
小 町「そう言ってルールを変えてくれるのですか、人間は。」
雅 宗「……」

間。

雅 宗「やっぱり鬼って、人間の事食べるんですか?」
小 町「え?」
雅 宗「いや、人間って美味しいのかなぁって…はは、僕何言ってんだろうなぁ。今から食べられるっていうのに…」
小 町「あのっ…食べた事無いので、分かりません。」
雅 宗「え?あぁ…女の人は食べないのか。じゃあ、男の人への生贄とかにするんですかね?」
小 町「いや…ですから、食べた事ありませんって。」
雅 宗「…え?」
小 町「食べるとか、そんな事する訳無いじゃないですか。」
雅 宗「え…だって、地震とか川の氾濫とか、あれって鬼の皆さんがやってるんじゃないんですか?」

小町、溜息をつく。

小 町「そんな事して、私達に何の得があるって言うんですか。あれは貴方方の勝手な妄想に過ぎません。」
雅 宗「へぇ…そうなんだ。」

沈黙。

小 町「…あの。」
雅 宗「? はい。」
小 町「困ってますか?」
雅 宗「え…あぁ、そりゃ、もう。」
小 町「もしだったら、ウチで生活されてはどうですか。」

間。

雅 宗「……え?」
小 町「ですから、此処で生活しては、と。」
雅 宗「な、何で? だってだってだって、僕、人間なんだけど…?」
小 町「だから何ですか?」
雅 宗「何ですかって…」
小 町「私達には人間を敵にする理由はありません。そのルールを決めたのは貴方方ですから。」
雅 宗「……」
小 町「嫌ですか?」
雅 宗「…嫌じゃありませんけど…」
小 町「けど?」
雅 宗「…他の鬼達も、皆そう思ってくれてるんですか?」
小 町「まぁ、中には人間を嫌う鬼もいますけどね。でも、そんなに心配するほどでは無いですよ。」
雅 宗「はぁ…じゃあ…」


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