アインブラットの本

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初演日:2013/4 作者:桜木想香
虹の素 雨上がりには好きだといってVol.2 4月編

    「アインブラットの本」

                       桜木想香



    それは、君に伝えたいたったひとつの言葉を探す旅。



 CAST

♂  結城 龍之介 ……教育実習生。高校時代に、一葉と付き合っていた。

♀  関口 二葉  ……2年A組。図書委員長。姉の一葉を亡くしている。実家は書店。
♂  結城 玲央  ……2年B組。サッカー部のエース。美鈴を好きになる。
♂  井上 治   ……2年C組。副委員長。新美先生が好き。(女子でも可)
♀  篠原 紫   ……2年D組。いつも音楽を聴いている。
♀  土屋 美鈴  ……2年E組。賢治が好き。二葉の書店で働いてる。
♂  皆川 賢治  ……2年F組。紫が好き。

♀  新美(しんみ)先生   ……2年B組の担任。司書資格もあり、図書委員会の顧問も務める。
♂  関口 隆介  ……二葉の父。書店を営んでいる。

♀  千帆先輩   ……大学1年生。元横南高校サッカー部のマネージャー。




 神奈川県立横南高校。横浜市内の丘の上にある。
 来年度より、県立浜北高校と合併し新設校になるため、最後の1年である。
 「雨上がりには好きだといって」シリーズは、時代を2013年に設定しています。
 が、実際の史実・時代状況とは違う箇所もあります。


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    「OPENING」


    4月1日。駅前の商店街から少し離れた所にある小さな書店の月曜日。
    外は突然降りだした雨の音でにぎわっている。お客さんは誰もいない。
    カウンターで暇を持て余している高校生くらいの店員の女の子が2人。

美鈴     暇だねぇ。
二葉     うん、暇だ。
美鈴     お客さん、来ないね。
二葉     来ないね。
美鈴     雨、すごいね。
二葉     いきなり降ってきたよね。
美鈴     暇だねぇ。
二葉     うん、暇だ。

美鈴     私ね、賢治と付き合うことになった。
二葉     え!?

二葉     おめでとう!
美鈴     嘘だよ。
二葉     え?
美鈴     今日はなんの日ー?
二葉     うっわ、騙された。
美鈴     そんなことできるわけないじゃん。
二葉     あ、そう。

美鈴     あ。

    美鈴、店の外になにかを見つけ、奥にいきビニル傘を一本持ってくる。

二葉     どうしたの。
美鈴     あの女の人、傘持ってないみたい。
二葉     ほんとだ。あまやどりかな。
美鈴     一本くらいあげてもいいよね。
二葉     全然いいよ。捨てるのにもお金かかるし、あげちゃえ。

    美鈴、傘を持ってお店の外に出て行く。
    二葉、日付でふと気づき、店の奥の父親を呼ぶ。

二葉     お父さーん。

    店の奥から隆介が出てくる。

隆介     ん、どうした。
二葉     お父さん、明日。
隆介     明日?
二葉     お姉ちゃんの!
隆介     あぁ、そうか。明日か。
二葉     いくよね。
隆介     あぁ、そうだな。行こうな。

    陰っていく。


    「1」


    4月12日金曜日。新年度明けの図書室。先生と生徒6人がいる。

新美     さて、それでは、今年度の図書委員会。第1回目の委員会をはじめます!まずは出席から。えーとA組、関口二葉!
二葉     はい!
新美     でB組がこいつ。
玲央     こいつってなんだよちゃんと呼んでくださーい。
新美     結城玲央!
玲央     ……。
新美     呼んだんだから返事してくださーい。
玲央     はーい。
新美     C組、いの
治      はい!
新美     井上治。D組、篠原紫。
紫      はい。
新美     E組、土屋美鈴。
美鈴     はい。
新美     F組、皆川賢治。
賢治     はい。
新美     そして担当が瀬川新美です。よろしくおねがいします。じゃぁ早速、委員長を決めるけど、誰かいますか?
二葉     はい、私やります。
治      えっ!
新美     あ、関口さん。本当。
治      そしたら俺、副委員長やります!
新美     あら、治くんも。ありがとう。他にいなければ。
賢治     異議なーし。
新美     なら、2人、よろしく。それじゃぁ次。みなさん御存知の通り、うちの高校は、図書室の利用率がとても低いです。あなた達図書委員には、生徒達に読書の習慣を植え付け、この寂れた図書室を活気のあるものにするようやっていってもらいます。
玲央     はぁ?なんだよそれ。
新美     皆に読書の楽しみを知ってもらうこと。そのためにはまず、あなた達が本を読む楽しみを知ること。今日1冊持って帰って、来週までに読んでくること。いいですね。それじゃ、今日は以上です。解散。
玲央     お疲れ様でした。
新美     こら、帰るな。
玲央     俺読む時間ないもん!
新美     じゃぁすぐ読める本を先生が選んであげる。
玲央     だからいいって!

    新美に連れられ、本棚の方へいく玲央。

賢治     まじかよー。
紫      どうしたの。
賢治     俺、本読むの苦手なんだよー。読むとすぐ眠くなってさー。
紫      あぁ、それはわかるかも。
賢治     今のうちに帰っちゃおうかな。
紫      でも、先生。
賢治     いいっていいて。なぁ治。
治      先生、俺にも何かおすすめの本教えてください。
賢治     あら。
紫      先生、私にも。
賢治     ちょっとー。

    治と紫、行ってしまう。

賢治     まじかよー。
美鈴     大丈夫?
賢治     土屋ぁ。俺嫌われたかな。どうしよー。
美鈴     そんな落ち込むことないって。一緒に本選んでおいでよ。
賢治     でも……。
紫      賢治くん。
賢治     はい。
紫      先生が、最初だからみんなに課題図書決めてくれるって。いこう。
賢治     あ、うん!行く!

    戻ってきた紫と一緒に、賢治も行く。

二葉     いいんだか悪いんだか。
美鈴     いいよ。
二葉     そう?
美鈴     うん、いい。
二葉     そう。ならいいけど。
美鈴     私達もなにか選ぼうか。
二葉     私はもう決めてるから。
美鈴     はや。
二葉     美鈴が来る前に。
美鈴     じゃぁ私も選んでくるわ。
二葉     うん、いっておいで。

    美鈴、後を追って本棚へ。
    二葉の家。二葉が本を読んでいると、父がビールをもって来る。

隆介     また本読んでるのか。二葉は本当に本が好きだなぁ。一葉にそっくりだ。
二葉     ご飯たべる?
隆介     いや、自分でやるからいいよ。読んでて。

    隆介、ビールをとりにいってあけて飲みだす。

二葉     あのね。
隆介     ん。
二葉     私、今日、お姉ちゃんにあったよ。
隆介     え。

隆介     お前、見えるのか。
二葉     見えないよ。
隆介     そうか。
二葉     これ。

    二葉、本を差し出す。

隆介     ん。
二葉     図書室で見つけた。
隆介     これが。
二葉     貸し出し名簿。

    隆介が裏表紙を開くと、そこには2人になじみのある名前が記されていた。

隆介     あぁ。
二葉     それ見つけたとき、お姉ちゃんが見えた。
隆介     やっぱり見えたのか。
二葉     いやそういうのとは違くて。その本を読んでるお姉ちゃんの姿が浮かんだ。
隆介     そうか。

隆介     一葉、図書室の本をしょっちゅう借りて来てたなぁ。本なんかうちにいっぱいあるんだからそれを読めばいいじゃないかって言ったら、「あの本は売り物でしょ」って怒られたっけな。

二葉     私、他にもお姉ちゃんを探す。
隆介     そうか。

隆介     でもな。お前はお前だからな。
二葉     わかってるよ。ありがとう。

    陰っていく。


    「2」


    15日月曜日。委員会の皆が集まっている。

新美     それじゃ、今週の委員会をはじめます。今日は当番を決めます。当番は月曜日から土曜日まで。一日2人ずつ。面倒くさいから、クラス順に順番でいいわね。
治      どういうことですか。
新美     つまり、月(AB)火(BC)水(CD)木(DE)金(EF)土(FA)

    さされた通りに手を挙げていく。

新美     これでいいわね?
玲央     2人もいらないだろ。一人でよろしく。
新美     ちゃんとやらなかったら、単位あげないからね。
玲央     おいそれずるいだろ。

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