幸福で不幸な王子と三人のどろぼう

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初演日:2015/2 作者:樋口雅夫
「幸福で不幸な王子と三人のどろぼう」
    作 樋口雅夫  


オープニング

  舞台がざわめく。
  とうぞく三人が舞台を走る!

ユライ「兄貴、結構盗みましたね。」
フック「ああ、あれだけ盗めば十分だろう。」
ユライ「ん!?兄貴!追手が!!」
ジェイ「あ、兄貴!なんか沢山人がくるよ!」
フック「さあ、逃げるぞ!」
ジェイ「あれ…なんか…。」

  急に暴れるジェイク、ユライにパンチが当たる

ユライ「おい!ジェイク!」
フック「さっき変なの食べたな!?」
ユライ「兄貴!」
フック「ここで捕まるわけにはいかない、ユライ、ジェイクを静かにさせて逃げるぞ!」
ユライ「はい!」

  フック、ユライはジェイクに黙らせる。

ジェイ「あれ?おれ?ごめーん。」
フック「さあ!次の国に行くぞ!」
ユライ「ええ…」
フック「ユライ?」
ユライ「いえ、何でもありません。」
フック「さあ。次の国でも俺たちは暴れるぞ!」
2  「はい!」

  フック、ユライ、ジェイクはける。

            プロローグ
 
  サンジェルマン伯爵の邸宅。外は雷雨。
  そこに一人の男が入ってくる。※客席入口から
  部屋にはテーブルとソファ。

童話 「夜分すいません!サンジェルマン伯爵は居らっしゃいますか?」

  執事が入ってくる。

執事 「どなたさまですか?」
童話 「僕は…。」
サン 「(声)いいわ!お入りなさい。」
童話 「ありがとうございます。」

  童話は舞台に上がり、サンジェルマン伯爵が本を持って出てくる。

サン 「私がサンジェルマン伯爵です。」
童話 「!?…僕は…。」
サン 「結構!御用件は?」
童話 「はい、では…」
サン 「ちょっと待って、(執事に)あなた、この客人に温かいモノを。」
執事 「はい、かしこまりました。お嬢様。」
童話 「え!?」
サン 「何か?あ、冷たい方が良かったかしら?」
童話 「いえ、そこじゃなくて。」
サン 「いいわ、行って頂戴。」
執事 「はい、お嬢様。」
童話 「……。」

  執事はける。

サン 「で御用件は?」
童話 「はい、ここに来ればちょっと変わった話が聞けると聞きまして。」
サン 「誰から?」
童話 「それは…」
サン 「まあいいわ、でどんな話が聞きたいのかしら?」
童話 「子供が喜ぶような話しを。」
サン 「アバウトね、まあいいわ、(本を開いて)なら『幸福な王子』が良いかしら?」
童話 「それは僕も知っています。」
サン 「本当に?」
童話 「はい、有名ですから。」
サン 「知っているの…なら、あなたは『幸福な王子』は本当に幸福だったと思う?」
童話 「…僕は、そう思いません。」
サン 「そう、ならこの話にします。」
童話 「え、でも…」
サン 「あなたが知っている『幸福な王子』と同じ話かどうかわからないわよ。」
童話 「はあ…。」
サン 「とにかく聞きなさい、うだうだ言っているとキスするわよ!」
童話 「え!?分かりました、聞きます。」
サン 「宜しい、では始めましょう、『幸福で不幸な王子と三人のどろぼう』の話を。」

 BGMが入り暗転。

            1

  季節は秋。
  町のにぎわいの中、王子がツバメと一緒に入ってくる。

王子 「いつもありがとうツバメさん、君のおかげで毎日沢山の人を助けられるよ。」
ツバメ「いえいえ、僕は王子の目であり手であり足ですから。」
王子 「本当は、僕自身が助けたいんだけど…。」
ツバメ「それはいけません、もし民衆に王子自らが金品をくださっているのが分かれば、恐縮してもらわなくなります。」
王子 「そういうものだろうか。」
ツバメ「そういうものです。ですから、僕を使ってください。僕ならどんな場所でもひっと飛び、高いところも、
    狭く入り組んだ場所もなんのその!」
王子 「頼りになるよ、ありがとう。」
ツバメ「えへへ」
王子 「(寒さを感じて)あー、寒くなってきたね。そうだ!この前不思議な行商人からもらったお茶を飲もう。」
ツバメ「え!良いんですか!?」
王子 「もちろん!」
ツバメ「頂きます!」

  王子とツバメはける。
  その直後にフック、ユライ、ジェイクが入ってくる。

フック「(王子たちを見ながら)ウワサ道理だな。」
ジェイ「ですね。」
ユライ「…。」
フック「どうした?」
ジェイ「コイツはまだ気にしているんですよ。」
ユライ「いえ、別に…。」
フック「そう気にするな、確かにその年でオネショは不味いが…。」
ユライ「違う!そして、オネショもしていない!」
フック「昨日のは違うのか…では何だ?」
ユライ「それは…」
ジェイ「(焦って)あ!兄貴、それより景気づけに『あれ』をしませんか?ユライもな!」
フック「いいだろう!」
ユライ「まあいいけど…。」
フック「では!七つの都市をまたにかけ!老若男女はお構いなし!他人のポッケは俺のモノ!スリの達人!ジェイク!!」
ジェイ「王族からこじきまで経歴なんて何でもない!どんなものでも着こなし潜入するぜ!変装のスペシャリスト!ユライ!!」
ユライ「生まれた時から悪い奴!全ての国の手配書に俺の顔は載っている!俺を知らない悪党はいない!俺達の兄貴、フッーク!!!」
三人「そう!俺達ブラック盗賊団!!」

  三人決めポーズ!

ジェイ「…で、これから俺たちは何をするんで?」
ユライ「そうだな、何をするんですか?」
フック「この国は何が有名だ?」
ジェイ「え?○○○?(アドリブ)」
フック「なんだそれは?初めて聞いたぞ!」
ユライ「王様でしょ!ここの王様は強欲で有名ですからね。」
フック「そうだ、今回のターゲットはその王様だ。」
ジェイ「その王様をどうするんで?」
フック「この国の王様は珍しいモノに目がないらしい。」
ジェイ「はあ…あ!分かった!それを盗むんですね?」
フック「いや、違う。今回俺たちは盗むのではなく、珍しい物を差し上げるのさ。」
ジェイ「え?俺達盗賊ですよ?」
ユライ「何か考えがあるんですか?」
フック「まあな。」
ジェイ「え?なんなんですか?」
フック「それは…。」
ユライ「兄貴、ここでは…。」
フック「そうだな、行くぞ!」
2人 「はい!」

  フック、ジェイク、ユライはける。
  その後ろから帽子をかぶった人物が盗賊たちを追いかけながらはける。
  高台から、王様と大臣が高笑いをしながら入って来る。

王様 「大臣!」
大臣 「はい!王様!」
王様 「世界で一番偉いのは?」
大臣 「王様です!」
王様 「世界で一番かっこ良いのは?」
大臣 「王様です!!」
王様 「世界で一番強いのは?」
大臣 「王様でーす!!」
王様 「その通りだ、ワシは凄い!そんな王様が欲しい物は…。」
大臣 「すぐ手に入れて見せます!」
王様 「うむ、では早速だが…」
大臣 「はい!」
王様 「○○○が欲しい!(アドリブ)」
大臣 「ハッ!直ちに!…って、え!?」
王様 「何だ、すぐに用意せい!」
大臣 「え!?あ、ハイ!」
王様 「では、後でワシの前に持ってこい。」
大臣 「は、ハイ!」

  王様はける。
  街頭のざわめきの中、照明変化。

大臣 「はあ…もうやだ…どこにあるんだ…まったく強欲な王様だ…」

  ふらふらしながら1人のこじきが入ってくる。

こじき「はあはあ…。」
大臣 「なんだ、この汚い奴は。」
こじき「あの…助けて下さい…。」
大臣 「ええい!汚い!触るな!」

  こじき倒れ、大臣はける。
  そこに、ツバメが入ってくる。

ツバメ「(こじきを見つけ)ねえ、君、大丈夫?」
こじき「助けて下さい…お母さんが病気なんです。医者に行ってもお金がないから…。」
ツバメ「そっか、ならこれを上げるよ。」

  ツバメ、金のバックルをこじきに渡す。

こじき「これは?」
ツバメ「ある人から困っている人を見つけたらあげるように言われているんだ。」
こじき「でも、こんな高価なものもらえません…。」
ツバメ「大丈夫、だから君はこれをお金に変えてお母さんをお医者さんに連れて行くんだ、いいね?」
こじき「あ、ありがとう。」

  こじき、精いっぱいツバメの手を握った後はける。
  入れ替わりにユライが入って来る。

ツバメ「……。」
ユライ「よう、スワロウ、元気そうだな。」
ツバメ「…ユライ。」
ユライ「寒くなって来たな…もう直ぐ冬だ。」
ツバメ「皆も一緒なのか?」
ユライ「兄貴とジェイクは所用で。」
ツバメ「お前はいいのか?」
ユライ「まだ、俺の出番はないのさ。それより、なんだその姿は?」
ツバメ「僕はもう足を洗ったんだ、お前達には関係ない。」
ユライ「確か、王子の家来になったんだよな?」
ツバメ「調べたのか?」
ユライ「まあな。そうかそうか、王子の家来になって?困った人に施しをする。とんだ偽善だな!」
ツバメ「うるさい!後、家来じゃない!友達だ!」
ユライ「友達?ふん!もう冬になる!そうなったらどうする?お前なんかはその辺で凍え死ぬのがオチだ!」
ツバメ「そんなことはない!王子が何とかしてくれる!」
ユライ「本当に?あのボンボンの王子にお前の過去を教えたらどうなる?」
ツバメ「それは…」
ユライ「きっと捨てられるぞ、そして直ぐにお前の代わりが用意されて、ソイツが他人に施しをするのさ。」
ツバメ「そんなことはない!」

  王子が入ってくる。

王子 「どうしたんだいツバメさん?知り合い?」

  ユライ、王子を睨みはける。

ツバメ「いえ、どうやら人違いだったようです。」
王子 「そっか。」
ツバメ「そうだ!王子!今、母親が病気だって子に王子のバックルをあげましたよ!」
王子 「そうなの!?喜んでもらえた?」
ツバメ「はい!」
王子 「それは良かった!」
ツバメ「そういえば王子、いつもこんなに沢山の宝物を何処から持ってくるんですか?」
王子 「え?」
ツバメ「あ、すいません。余計なことを聞いてしまって。」
王子 「いいんだよ。宝はね、王様からもらっているんだ。」
ツバメ「そうなんですか?良い王様なんですね。」
王子 「…うん。」
ツバメ「王子?」
王子 「さあ!ツバメさん、困っている人を探してきておくれ!」
ツバメ「はい!!」

  ツバメが去るのを見送った後王子はける。
  王子たちと反対側から大臣が出て来て。

大臣 「ほう…面白い。」

  暗転。

            幕間(1)

サンジェルマン伯爵の邸宅。
  童話、サンジェルマン伯爵の手元にはティーカップ、テーブルには本。
  紅茶を有意義に飲むサンジェルマン伯爵。

サン 「さてこれからどうなるのか?」
童話 「さあ?」
サン 「あら、お気にめさない?」
童話 「いえ、まるで見てきたかの様に話されますね。」
サン 「(高笑いしてから)見てきましたから。」
童話 「え?」
サン 「(高笑いしてから)だから、見てきたって言ったでしょ。」
童話 「いや、だって王様と王子の話しなんて、今じゃ…」
サン 「五月蠅いわね!」

  手をパンパンと叩いて執事を呼ぶ。

執事 「はい!お嬢様。」
サン 「紅茶が切れたわ。」
執事 「はい、お次は…。」
サン 「マンドラゴラとツボクランを半分に、後、少しコニャックを入れて頂戴。」
執事 「はい。かしこまりました。」
サン 「(童話に)あなたは?」
童話 「…僕は結構です。」
サン 「謙虚ね…まあいいわ。では話の続きをしましょう。(本を開き)季節は秋を終え冬になりました。」

  暗転。

            2

  季節は冬。
  王子がはいってくる。

王子 「ツバメさーん!!」

  ツバメ本を持って走って入って来る。

ツバメ「はーい!」
王子 「あ、ツバメさん、今日も宜しくお願いします。(手に持っている本を見て)…それは?」
ツバメ「これは、…何でもありません。クシュン!」
王子 「大丈夫?」
ツバメ「大丈夫です!行ってきます!」


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