無貌の神

(むぼうのかみ)
初演日:0/0 作者:玄崎 尭
「無貌の神(むぼうのかみ)」   作 玄崎 尭(げんざき ぎょう)

◇登場人物
 ・医師 ♂
 ・のっぺらぼう ♂

        照明つく。
        診察室。
        向かい合って座る、医師とのっぺらぼう。

医師     …で、今気分が悪いとか、そういうのはない、と。

のっぺらぼう はい。

医師     血色もよさそうですね。

のっぺらぼう はい。

医師     ほかに身体でどこか、変だな、とか異状を感じる所などは
       ありますか?

のっぺらぼう ……、別にどこも。

医師     ……、そうですか。

のっぺらぼう すみません、なんかご迷惑をおかけして。

医師     いやいやいや。
       まぁゆうべね、路上で人が倒れてて、意識がないと通報が
       あって、であなたが当病院に搬送されたわけなんだけど。

のっぺらぼう はい。

医師     通報した方の話も、なんていえばいいか、その、どうも
       要領を得なくてね。

のっぺらぼう はい。

医師     救急隊からも、幸い、かすかに呼吸音はある、ということ
       だったのでね。で、搬送後あなたを診させてもらったわけ
       なんだけれど。

のっぺらぼう はい。

医師     たしかにあなたの言う通り、不調も見られなかった。
       脈拍も正常だし、レントゲン等も怪我や病変等の異状は
       見られなかったのね。

のっぺらぼう はい。

医師     ただ、その後なんだけど、まぁこれは当病院の都合では
       あるのかなとも思うんだけどね…、「何科の分野?」
       みたいな話になって…。

のっぺらぼう あぁ…、はい。

医師     ちょっと、そこでまぁ、ごちゃごちゃしたんだけど…、
       結局うちの整形外科で担当することになりまして。

のっぺらぼう はい。

医師     ま、まぁ、幸いなことに、あなたの意識がすぐ戻って、
       ひとまず様子を見ましょうと一晩休んでもらって、
       ってしてもらったわけなんだけども。

のっぺらぼう はい…。

医師     もう単刀直入に言うね。
       あなた、何なの?

のっぺらぼう のっぺらぼうです。

医師     だよね。
       のっぺらぼう、ね…。(とカルテに記入をしつつ)
       うーん……!

のっぺらぼう あの、なんか本当すみません。

医師     いやいやいや、別に謝らなくていいよ。
       むしろ、まぁ、予想通りの答えが返ってきたな、
       とは思ったから。

のっぺらぼう はい。

医師     そう、じゃあ…、ごめんなさい、あなたが何者かというのは
       後にして…、何があったか先に聞くね。
       その、ゆうべどうしてあそこに倒れてたのか、というのは
       わかります?

のっぺらぼう あ、ああ、それなんですけど…、

医師     はい。

のっぺらぼう 最近、ずっと寝ずに過ごしてまして…。

医師     …はい。

のっぺらぼう ここのところ、どうしても身の上がうまくいかず、
       なんとかしなくちゃと気持ちばかりが焦ってしまって……。

医師     ああ。その、うまくいかなかったことというのは…、
       聞いて差し支えないですか?

のっぺらぼう ああ、それはもう、私たちの仕事というか、役割というか、
       使命そのものみたいなものなんですけど…。

医師     なんでしょう?

のっぺらぼう 脅かすこと、怖がらせることなんですけど…。

医師     ……まぁ、だろうね? …要するに睡眠不足と心労で
       夜路上で倒れてしまったと……、

のっぺらぼう いいえ、それは、ちょっと違うんです。

医師     どこが違うんですか?

のっぺらぼう 正直に言います、夜道に倒れてたっていうのは、
       その……、

医師     その?

のっぺらぼう わ、わざとで…。

医師     わざと?

のっぺらぼう あの、ですから、私たちって脅かすことが役割というか、

医師     うん、じゃあ、なんでうちまで搬送されてくるの?
       わざと倒れて、意識がなくて、で、運ばれて
       なんともないんじゃね、正直こちらとしても、ちょっと
       対応に困るというか…。

のっぺらぼう すみません、きっと疲れが出たんだと思うんです。
       倒れて誰か来るのを待っているうちに、その、
       ふらふら、気絶というか、寝落ちというか…、

医師     寝落ち!?

のっぺらぼう 本当にすみません、お騒がせしてしまって。

医師     まったくだよ。通報してくださった方も救急隊も
       それはもうびっくりしたって言ってたんだから。

のっぺらぼう 本当ですか?

医師     ああ、心臓が止まるかと思ったって。

のっぺらぼう そうかぁ…!

医師     喜んでどうする。

のっぺらぼう ああ、そうか…。

医師     あのね、少しは反省してもらわないと。

のっぺらぼう そうですよね。後悔してます。
       どうしてみんなが驚いた瞬間意識がなかったのか。
       せっかくうまくいったのに…!


面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。


ホーム