好きです つき合ってください

(すきです つきあってください)
初演日:0/0 作者:たぬきさん
『好きです つき合ってください』

登場人物
 ユリエ 高校二年生。女子。康一郎の双子の妹。康一郎役と顔が似ていない役者が望ましい。
 夏実  高校二年生。女子。男言葉。
 翔子  高校二年生。女子。
いずみ 高校二年生。女子。
アケミ 高校二年生。女子。
 啓介  高校二年生。男子。ユリエの双子の兄。ユリエ役と顔が似ていない役者が望ましい。
 雄一  高校二年生。男子。啓介より背が高い役者が望ましい。
 担任  男性。

開幕

    下手にホワイトボード、教卓。下手から上手にかけて生徒用の机椅子が7セットのみ並んでいる。
    上手から生徒たちがしゃべりながら歩いてきて席につく。
雄一 「池田さん、おはよう」
夏実 「おはよ」
雄一 「伊吹さん、おはよう」
翔子 「おはよう」
雄一 「松本さん、おはよう」
いずみ「おはよう」
雄一 「市川さん、おはよう」
アケミ「おっはよーっ!」
雄一 「ユリエちゃん、おはよう」
ユリエ「はいっ、義理っ!」
   ユリエ、ポケットからブラックサンダーを出して雄一に渡す。
ユリエ「何? 気に入らないの?」
雄一 「いや、ありがとう」
   ユリエ、上手の自分の席につく。啓介、雄一に近づく。
啓介 「おい…、なんであいつだけ中村さんじゃなくてユリエちゃんなんだ」
雄一 「おまえと同じ苗字でまぎらわしいからだ」
啓介 「兄妹なんだから当たり前だろ」
雄一 「しかし、この様子は…」
   雄一、自分の席(いちばん前)から周りを見回す。
啓介 「ずいぶん広いな」
下手から担任登場、教卓につく。
   チャイムの音。
ユリエ「起立!」
   生徒、全員起立。
ユリエ「兄貴! 緒方! もっときびきび立て! (間)きをつけ! 礼! 着席!」
   生徒、全員着席。
啓介 「先生、いつからうちのクラスは七人だけになったんですかあ?」
担任 「いま説明しようとしたところだ。この七人以外は全員インフルエンザで倒れた」
啓介 「ってことは…」
担任 「学級閉鎖だ」
啓介 「ヤッターッ!」
   雄一とユリエ以外、全員思い思いにガッツポーズを取る。
担任 「もっともウチのクラスだけ春休みが短くなるわけだが」
啓介 「ええええっ! 学校オーボー!」
   雄一以外、わあわあ騒ぐ。
担任 「やかましい! 今日は出席だけ取って解散するが、寄り道せずにまっすぐ帰れよ!」
啓介 「先生、ほかの連中が休みなのはわかりましたが、机まで無いのはなぜですか」
担任 「今日、隣の教室で研究授業があるんだ。それで机椅子が足りないから運ばせてもらった。次に学校に来た時、みんなに運び入れてもらう」
啓介 「ええええっ!」
   雄一以外、わあわあ騒ぐ。
担任 「やかましい! (ユリエの顔を見て)中村!」
ユリエ「起立!」
   生徒、全員起立。ただし、雄一以外はいい加減に立っている。
ユリエ「緒方! もっときちんと立ちなさい!」
   雄一、背筋をぴんと伸ばす。
ユリエ「きをつけ! さようなら!」
担任 「さよなら」
   雄一と担任だけはきちんと礼。
   担任、下手側に退場。雄一、席につく。ほかの生徒たちも帰ろうという様子はない。雄一、自分の机の中から何か見つける。机の上に置く。板チョコにメモ用紙が貼ってある。メモ用紙を見る。啓介、めざとく見つける。
啓介 「何だそりゃ、もらったのか? ちょっと見せてみろ」
   啓介、手紙をひったくる。
雄一 「おいっ!」
   啓介、メモを見てだまりこむ。間。
雄一 「…まあ、見つかっちまったから言うが、『いつものばしょ』ってどこだろうな。全く心当たりがないぞ。行かないと失礼だろうし。差出人の名前も無い。何とか知る手だてはないかな」
啓介 「(手紙を挙げて女子たちを見て)これを雄一の机の中に入れた人はいないか?」
雄一 「何聞いてるんだ、おまえ!」
   女子、啓介の方を見る。しかし誰も名乗りでない。
啓介 「みんな集まってくれ」
   女子たちが啓介の周囲に集まる。ユリエと翔子の動きは遅い。アケミ、CDデッキを机の上に置いてボタンを押す。『刑事コロンボ』のテーマ。
啓介 「今からこれを雄一の机にいれた人を調べる」
翔子 「はぁ? その子に失礼だと思わないの? 女をバカにしてるとしか思えない!」
いずみ「いいんじゃない? その子への後押しになるだろうし」
翔子 「そうじゃなくて、探偵ごっこみたいなマネをするなって言いたいんだよ!」
夏実 「まあいいぜ。こんな平日に早く家に帰ってもしょうがないし」
アケミ「いいよ、面白そうだし」
翔子 「ちょっとみんな…」
啓介 「嫌なら帰ってもいいぞ」
翔子 「当たり前だよ! だけどあんたたちだけじゃ何を始めるかわからないからここに残るよ」
啓介 「じゃあ、机の向きを変えよう」
啓介、下手からホワイトボードを中央に持ってきて客席に向ける。その前に自分の机を置いて座る。女子たち、ホワイトボードを中央にして机をハの字型に並べて座る。雄一、舞台中央観客席側に机を置き、客席に背を向けて座る。完全に啓介と被る。間。
啓介 「(上手に顔を出して)おいっ!」
雄一 「(上手に顔を出す。啓介の顔と被る)なんだ」
啓介 「(下手に顔を出して)おいっ!」
雄一 「(下手に顔を出す。啓介の顔と被る)なんだ」
啓介 「(立ち上がる)おいっ!」
雄一 「(立ち上がる。啓介より背が高いことが望ましい。顔が被る)だからなんだ!」
啓介 「なんでそこに行くんだ!」
雄一 「おれがここにいちゃまずいのか?」
啓介 「誰がいてもまずい!」
雄一 「普通向かい合って座るだろうが! 何で誰もここに座らないんだ!」
啓介 「はあ…、雄一、こっちに来い」
   雄一、ホワイトボードの前まで歩く。
雄一 「なんでだ?」
啓介、手紙と板チョコを雄一に渡す。
啓介 「この手紙の文章をそのままホワイトボードに書け」
雄一 「手紙をくれた人に悪いような…」
啓介 「犯人の遺留品は、このチョコレートと手紙だけなんだ…」
雄一 「犯人て…」
啓介 「差出人がわからなくていいのか?」
雄一 「それは困る…」
翔子 「あんたたち、いい加減に…」
啓介 「では、アリバイ調べを行う。(雄一に)さっさと書け!」
   啓介、雄一の机を舞台中央からいちばん下手に持っていく。雄一、首をかしげながらホワイトボードに向かう。「ほうかご、いつものばしょに来てください。きっとおどろくことがあるよ。ハートマークの中に『い』という文字」を書き始める。
啓介 「おれが教室に入ってきたとき誰もいなかった。高彦、おまえは?」
雄一 「最後に教室に入った。たしか、池田さん、伊吹さん、松本さん、市川さん、ユリエちゃんの順で挨拶したことを覚えている」
啓介 「ということは、おれが犯人でない限り、犯人はおれよりも早く来て机の中にチョコレートを入れたあといったん教室を出て、みんなが登校してきた頃合いを見計らって今登校したかのように教室に入ってきたと考えられる。では、登校する前のアリバイを証明できる人は?」
   翔子、啓介を睨む。他の女子四人、顔を見合わせる。
啓介 「誰にもアリバイはないみたいだな…」
雄一 「出来たぞ…」
啓介 「ご苦労。では紙を配る」
   啓介、A3大の紙を女子たちに配る。
翔子 「いつ、こんなもの用意したの!」
啓介 「学級閉鎖中の数学の課題の裏だ。先生から分けるように言われてた」
   女子五人、紙を裏返して悶絶する。
啓介 「裏返せ。裏に『驚く』って漢字で書け」
翔子 「何でそんなことを…」
啓介 「この手紙ではひらがなで書かれている。犯人は『驚く』と漢字で書けないと考えられる」
翔子 「だから、そういう態度が女をバカにしていると…」
啓介 「書けないのか?」
翔子 「バカにするんじゃないよ!」
啓介 「だったら書け」
 翔子、しばらく啓介をにらんでいるが、書き始める。
啓介 「できたか? せーの!」
   啓介『驚く』と書いた紙を客席に向ける。夏実『おどろく』。いずみ『オドロク』。ユリエ『ODOROKU』。アケミ『踊ろ!く』。
啓介 「踊ってろよ、おまえは…」
アケミ「いやだぁ。あたし、体動かすのはいやだぁ。基本ひきこもりだぁ。家がお金持ちだったら、ホントーにひきこもってた」
いずみ「だったら良かったじゃないの、フツーの家で」

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