さよならサリー

(さよならさりー)
初演日:2018/10 作者:新堀 浩司
人物
夢の島サリー(24)  本名飯島さゆり。ベテラン地下アイドル。
武村美緒  (29)  サリーのマネージャー。通称おたけちゃん。




       音楽。明転。舞台中央でセーラー服姿のサリーが踊る。
       曲が終わり、踊り終わると拍手のSE

サリー  「ありがとー!」

       暗転。
       SE・携帯電話の着信音。
       明転。サリーの部屋。引越し当日。段ボールがいくつか積まれている。
       中央にはテーブルと椅子。テーブルの上には携帯電話。
       やがて携帯電話は留守電に切り替わる。

母(声のみ)「もしもし。お母さんだけど。あんた今日帰ってくるんだよね?何時くらいにこっち着くの?早く帰ってくるなら晩御飯用意しておくから。あ、電車で帰って来るなら迎えに行くからね。とにかく一度連絡しなさい」

       留守電終わる。直後、サリーが登場。部屋着姿。歩きながら一度あくび。携帯の着信に気付き、電話を取る。

サリー  「もしもし。ん?留守電は聞いてない。うん。うん。帰るよ。時間はね、まあそんなに遅くはならない。うん。じゃあそれで。多分バスかな。うん。鹿嶋で降りるから。はいはい。じゃあまた連絡しまーす」

       電話切る。サリー、テーブルを見て

サリー 「これ、ばらさなくても入るかな」

       SE・電話の着信音

サリー 「もしもし。はい、今日引越しです。いや、別にあなたのためではないので。はい・・・まあ、大丈夫だと思いますよ・・・すいませんけど、もうすぐ引越し屋来る時間なんで。まあ、何かあったらメッセージ入れといてください。はい、それじゃ」

       電話切る。
SE・インターフォン

サリー  「・・・」

       SE・インターフォン(連打)

サリー  「はいはい、なによまったく」

        サリー、去る。

武村   (声のみ)「サリーちゃん!」
サリー  (声のみ)「おたけちゃん?」
武村   (声のみ)「良かった!まだいた!サリーちゃん、サリーちゃあん!」
サリー  (声のみ)「ちょっと。暑苦しい」

        サリー、戻ってくる。後について登場するのはそのマネージャーの武村
美緒。泣いている。

サリー  「あのさ。いきなり押しかけて号泣するのやめてくれる?」
武村   「だ、だって。さり、さりーちゃんが、さりーちゃんがあああ・・」
サリー  「・・・誰に聞いたの?」
武村   「・・・社長」
サリー  「・・・あんのクソジジイ。口が軽いんだよなあ」
武村   「・・・おかしい・・・おかしいよサリーちゃん!」
サリー  「何が?」
武村   「なんでマネージャーの私に隠すの?」
サリー  「ああ、引越しのこと?私がどこに住もうが自由でしょ」
武村   「そうじゃないよ!なんで引退するの?」
サリー  「・・・ああ。そっち」
武村   「頑張ってトップを取ろうって約束したじゃん。確かに今は地下アイドルで、アキバの小さいハコでしかライブできないけど。これからじゃん!夢の島サリーのサクセスストーリーはここから始まるんだよ!」
サリー  「じゃあそんなおたけちゃんに質問です。私、夢の島サリーの年齢は?」
武村   「・・・永遠の16歳」
サリー  「私、永遠の16歳を名乗り出して今年で8年目だよ。流石に無理があるって」
武村   「そんなことないって」
サリー  「セーラー服もだんだんきつくなってるし」
武村   「大丈夫だよ。ファンのみんなは絶賛してるよ」
サリー  「いや、そうは言ってもさ」
武村   「みんな言うもん。見てはいけないものを見ているようでドキドキするって」
サリー  「それ絶賛じゃないよね。酷評だよね」
武村   「違うよ。愛だよ、愛。サリーちゃんには固定ファンがいっぱい付いてるんだよ」
サリー  「それほど多くないでしょ」
武村   「少なくとも一定数はいるじゃん。熱心な人がさ」
サリー  「まあそれはありがたいと思ってるけどさ」
武村   「ファンのみんなは、サリーちゃんの年齢詐称なんて気にしてないよ」
サリー  「詐称って言うな」
武村   「生暖かい目で応援してくれてるよ」
サリー  「余計辛いから、それ。ああ、辛いと言えば、あれもだな」
武村   「なに?」
サリー  「私は基本的にソロでイベントやらないから、毎回ライブで共演するアイドルがいるじゃん。結構入れ替わりが激しい業界だからさ、若い新しい子がよく入ってくるわけよ。で、多いのは17歳か18歳くらいなんだよね」
武村   「うん」
サリー  「私さ、キャリア的にはベテランの域じゃん。でも設定上は16歳じゃん」
武村   「・・・うん」
サリー  「若い子が気を使うんだよね。実年齢に合わせて敬語を使うべきか、設定を尊重してタメ語でしゃべるべきか悩まれている。それが分かるから、辛い」
武村   「でも、でもさ。もったいないよ。サリーちゃんは絶対トップになれる才能があるのに」
サリー  「おたけちゃんは私を買いかぶりすぎ」


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