霧降駅で会いましょう

(きりふりえきであいましょう)
初演日:0/0 作者:ウトカ
霧降駅で会いましょう

キャスト
羽鳥 明日(はとりあすか)♂
高校生
魚住 今日子(うおずみきょうこ)♀
中学生〜高校生
宇佐美 ミミ(うさみみみ)♀
高校生
戌井 一郎(いぬいいちろう)♂
中学生

鯨木(くじらぎ)♀
熊谷(くまがい)♂





1:学校の廊下。
羽鳥がメモになにか書き付けながら登場する。そしてなにか閃いたようにふと立ち止まりしゃべりだす。

羽鳥  僕の話をしよう。そう、他愛もない、ふつうの、平々凡々な、僕、羽鳥明日の物語だ。寝て、起きて、学校へ行って、ご飯をたべ、風呂に入って寝る。それだけ。だけど・・・、うん、その中にもきっとなにかあるはずなんだ。それが何かはまだわからないけど、小説家っていうのは、その何かを見つけ出せる人なんだ。フランスの巨匠、プルーストだって言っていたじゃないか。「発見の旅とは新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ。」
熊谷  アスカ!何やってんの?
羽鳥  熊谷。
熊谷  あ、また小説書いてたんだ。今度はどんな話書くんだ?
羽鳥  秘密。
熊谷  ええ〜?
羽鳥  いつも言ってるだろ?完成するまでは見せたくないんだって。
熊谷  わかったよ。そういえばアスカ、どうだ?新しいクラス。友達できた?
羽鳥  うっ。
熊谷  まさか、一人も?
羽鳥  ・・・。
熊谷  おいおい。もう入学式から一ヶ月もたつんだぜ?
羽鳥  そんなこと言われても。友達のつくり方なんかいつまでたってもわからないよ。
熊谷  お前のことだから、休み時間もずーっと机に向かって小説ばっかりかいてるんだろ?仕方ないやつだなあ。
羽鳥  うるさいな。
熊谷  ま、がんばれよ。せっかく同じ高校に入学できたっていうのに、おれも鯨木もクラスが離れちゃったからなあ。残念だったよな。
羽鳥  べつに。そうでもないよ。
熊谷  な!?アスカ!?
鯨木  アスカ、熊谷!
羽鳥  鯨木。
鯨木  おはよ。アスカ、新しいクラスはどう?
羽鳥  はあ・・。それさっきも言われた。熊谷に。
鯨木  まじ?アハハ。だって心配なんだもん。
熊谷  な。それで俺たち皆クラスが離れて、残念だよなって話してたんだ。
羽鳥  鯨木はまだしも。
鯨木  うん。アスカはまだしも。熊谷は・・・ねえ?
羽鳥  うん。
熊谷  二人共ひどくないか!?
鯨木  アハハ。うそうそ。そうそうあのね、二人に紹介したい子がいるの。
羽鳥  何?
鯨木  新しい友達。いま連れてきてるの。今日子、おいでよ。
魚住  あ、うん。
鯨木  この子、同じクラスの魚住今日子ちゃん。
熊谷  へえ。転校生か。
魚住  魚住今日子って言います。
鯨木  あたしたち、小学生からの幼馴染なの。
熊谷  俺は熊谷。よろしく魚住。
魚住  熊谷くんか。よろしくね。
熊谷  ほらお前も。
羽鳥  あ、うん。ぼくは、
魚住  羽鳥明日くん。だよね?
羽鳥  え・・・?
魚住  あれっ。違った?
羽鳥  ああいや..。合ってるよ。
鯨木  え?どうして知ってるの?
魚住  えっと・・・。エスパー?
熊谷  エスパー!?
魚住  ふふ、うそだよ。本当は、羽鳥くんの作文が、廊下に貼ってあるの見たから。
熊谷  ああ、校内のコンクールのか。
羽鳥  そうだったんだ。
魚住  そう。素敵だなって、思ってたんだ。
羽鳥  ありがとう。
熊谷  アスカ、文章を書くのがすごく上手なんだよ。なんてったって、未来の小説家だからな。
羽鳥  ちょっと。
魚住  え、小説家?すご。
羽鳥  すごくなんかないって。
鯨木  ね、私たち仲良くなれそうじゃない?ね?
熊谷  うん、そうだな。
魚住  よかった。ありがとうみんな。
始業のチャイム。
魚住  あ、休み時間終わるね。
熊谷  また話そう。
魚住  うん。
鯨木  じゃあね。


2:霧降駅。羽鳥が座って小説の投稿雑誌を読んでいる。

魚住  羽鳥くん。今朝ぶりだね
羽鳥  魚住。
魚住  隣、いいかな?
羽鳥  うん。
魚住  ありがとう。
羽鳥  魚住もこのバスなんだな。
魚住  そう。町役場の近くに住んでるの。羽鳥くんは?
羽鳥  僕は湖の近くだよ。
魚住  へえ。羽鳥くんさ、
羽鳥  その羽鳥くんっていうの、やめない?明日でいいよ。みんなそう呼ぶし。
魚住  え?いいの?
羽鳥  むしろそうしてよ。
魚住  ・・・じゃあそうする。よし。明日くん。
羽鳥  はい。
魚住  なんか友達っぽくてうれしい。ありがとう明日くん。
羽鳥  なんでお礼なんて言うんだよ。
魚住  いいじゃん。それでさ明日くん、さっきは何読んでたの?
羽鳥  え?あ、ああ、雑誌だよ。ただの。
魚住  雑誌?・・・ああ、わかった!小説の?
羽鳥  えっ?
魚住  あ!あたり?ねえ明日くんって雑誌に小説を投稿してるの?
羽鳥  あ、あの
魚住  すごいなあ!だけどさっきは浮かない顔してたよね、今回はちょっと嫌な結果だったのかな。
羽鳥  ちょ・・ちょっとまってよ。なんでそんなことまでわかるんだ?
魚住  今朝、明日くん、小説を書いてるって言ってたじゃない。
羽鳥  そうだけど。それにしても本当にエスパーみたいだよ。そうだ、今朝だって、僕の作文を廊下で見たからって、顔もわからない僕のこと知ってたじゃないか。
魚住  ・・・本当に、エスパーだって言ったら?
羽鳥  え?
魚住  ・・・。
羽鳥  ま、まさか本当に、
魚住  ・・・なーんてね!ふふ、エスパーなんか使えるわけないじゃない。
羽鳥  な、なんなんだ。
魚住  アハハ。エスパーなんかじゃないよ。エスパーじゃなくて・・・
羽鳥  え?
魚住  ううん、なんでもないよ。そんなことより、今日はすごく霧が濃いね。
羽鳥  霧?ああ、そうか。魚住は初めてだよな。このバス停の周辺は年に一度、このぐらいの時期に霧が降るんだよ。
魚住  そうなんだ。
羽鳥  あと一週間くらいは霧が濃くなるから、気をつけろよ。視界が悪くなって転びやすくなるんだ。
魚住  ありがとう。明日くんも、気をつけてね。
羽鳥  ぼくは慣れてるから大丈夫だよ。
魚住  明日くん。「事実は小説より奇なり。」だよ。あっと驚くストーリーは、いつでも日常の中に潜んでいるんだから。
羽鳥  な、なんのこと?
魚住  あ、バスがきたみたい。じゃあ明日くん、また。
羽鳥  え?あ、ちょっと魚住。

バスが発車する音。

羽鳥  ・・・なんだか変なやつだな。あいつ。

羽鳥  ・・・あ。僕もあのバスに乗るんだった!!


3:霧降駅。

羽鳥  ・・・はあ・・。(時刻表を確認し)次が最終バスか。よかった。・・・だけど、あと、1時間かあ・・・。
宇佐美 あー!ああ・・・。バス行っちゃった・・・。サイアク。

羽鳥の隣にどかっと腰掛ける宇佐美。派手な飾りをつけたスクールバッグを持ち、ルーズソックスを履いている。とにかく派手な格好をしている。

宇佐美 ねえ、次のバスっていつ来るかわかる?
羽鳥  え、僕ですか。
宇佐美 あんた以外、他に誰がいるのよ。
羽鳥  最終バスは一時間後ですけど。
宇佐美 うっそ!?マジで?テンション鬼サゲなんだけど。
羽鳥  おにさげ。
宇佐美 はあ、今日ついてないなー。

携帯電話を取り出し、メールを打ち始める。大きすぎるストラップがついたそれは10〜15年ほど前の型のものらしい。

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