モノクロ天使

(ものくろてんし)
初演日:0/0 作者:亀山真一
モノクロ天使

登場人物
 黒木明良 美術部期待の星?
 杉本美咲 美術部部長
 白井希望 幽霊部員その一
 秋吉光 幽霊部員その二
 金森翼 新入部員
 アイ 天使、男でも女でも可


   一場

 スポットライトがアイを照らす。キメ顔で、

アイ 皆さん、恋愛してますか?

 間。沈黙に耐え切れず素に戻ったような感じで、

アイ 寒い、寒すぎる! 絶対この脚本家頭おかしいわー。(気を取り直して)申し遅れました。私、アイと言います。実は天使という設定でして、中でも色恋沙汰が担当で、この舞台の登場人物の恋心にチャチャを入れるという役どころを仰せつかっておりまず。……え、見えない? 重々承知しています。予算が足りないんだか何だか知りませんが、いかにも天使って感じの「白い服を着て、頭に輪っかを乗せて、羽が生えてる」みたいな衣装が却下されまして……。あ! そんなことより、これからとある高校の美術部にお邪魔するところなんですよ

 というわけで、明るくなった舞台は美術室。アイは適当に様子を窺っている。黒木明良がスケッチブックに向かって絵を描いているところに、杉本美咲が登場。

美咲 黒木くん

 明良は黙々と絵を描いている。美咲は少し声量を上げ、

美咲 聞いてるの、黒木くん?

 明良は黙々と絵を描いている。美咲は明良の耳元に近づき大声で、

美咲 黒木くんったら!
明良 (ようやく顔を上げて)何だよ杉本、うるさいな
美咲 じゃあ一度で返事してください
明良 どうせ大した話じゃないんだろ
美咲 ……まあいいや。黒木くん、部活しましょう
明良 は?
美咲 部活よ。ぶ、か、つ
明良 してるじゃん。俺たちゃ美術部員だぜ? 絵を描く以外に何をしろって言うんだよ?
美咲 そりゃそうなんだけどさ。君が勝手に一人で黙々と描いていると私の立場がなくなるのだよ
明良 知るか
美咲 知ろうよ。これでも私、部長なんだよ
明良 部長らしいことしたいなら他の部員でも連れてくれば?
美咲 へ?
明良 何人かいただろう? 幽霊部員が
美咲 ハッ、なるほど
明良 ……え、納得した?
美咲 いやでも、きっと幽霊部員はもう帰っちゃってる時間だよ
明良 それこそ知るか
美咲 それに、幽霊部員が誰だか分かってて言ってるの?
明良 だから知らないって
美咲 白井さんと秋吉さん。あんなキラキラチャラチャラした女子に私が話しかけられるわけがないでしょう
明良 ……そんなキラキラチャラチャラした女子なのか
美咲 うん。よく知らないけど
明良 知らないのかよ
美咲 だって話したことないもん

 明良、やや唖然としつつも気を取り直して、

明良 でも入部届を出したってことは興味がないわけじゃないんだろう? 聞くだけ聞いてみればいいじゃん
美咲 ……

 明良、スケッチブックを閉じて立ち上がる。

明良 分かった
美咲 へ?
明良 お前が部活する気ないなら俺もやめる。そもそも絵を描くのは美術部でなくたってできるんだ
美咲 ま、待って
明良 杉本のピーチクパーチクがない方がよっぽど――
美咲 黒木くん

 出ていこうとする明良をがっちり捕まえて、

美咲 そんなこと言わずに部活しようよ
明良 ……杉本、どうしてこの力業を俺にしか発揮できないんだ?
美咲 (聞いてない)置いてかないでよ、黒木くーん

 わんわん言いながら美咲は明良の引き留めることに成功し、元居た椅子に座らせる。

美咲 あ、それでね、私やりたいことがあったんだ
明良 はあ?

 美咲は机の上にリンゴとボトルとグラス(他にもそれっぽいものがあれば)を用意する。

明良 これって……
美咲 静止画の練習と言ったらコレでしょう
明良 パス
美咲 そう言わずに、ね?

 明良が使っていたスケッチブックを手に取り新しいページをめくろうとして、

美咲 あ、これ描いてたの?
明良 まあ
美咲 ペガサスか……毎度毎度、乙女チックなものを描くよねえ
明良 悪いか?
美咲 全然! でも、黒木くんって常に脳内ファンタジー垂れ流してるから、たまにはこういう基礎の基礎って感じのもの描かせてみたくて
明良 描かせてどうするんだよ?
美咲 へこむ
明良 ……は?
美咲 やっぱり黒木くんは基礎ができてるから好き勝手描けるんだと思い知って、私は一度がっつりへこもうと思う
明良 何だそりゃ?

 言いながらも、二人はなんとなくデッサンを始める。

美咲 そう言えば黒木くんってさ、何でいつも鉛筆とスケッチブックなの?
明良 悪いか?
美咲 だから悪くはない……いや、正直なところ部費が余って困ってる。下手な私が使い込むのも抵抗あるし、あんまり使わないでいると予算が出なくなる
明良 使わないなら予算なんて要らないだろう
美咲 そりゃ今はね。でも、これから後輩が入って新たに絵の具とかキャンバスが欲しくなった時に、全額自腹切らせるのは酷じゃない?
明良 なるほど、さすが部長
美咲 それほどでも
明良 ならとりあえず、鉛筆とスケッチブックでも買ってくれ

 間。

美咲 別にいいけどさ、ホントにそれしか使わないの?
明良 ああ。……ところで、アップルパイって四角いイメージ? 丸いイメージ?
美咲 え?
明良 どっち?
美咲 うーん、丸?
明良 六等分? 八等分?
美咲 そうだな……切り分けやすいし八等分?
明良 ふうん

 聞いたまま黙々と描き続ける明良。

美咲 え、何の話?
明良 パイにはコーヒー? 紅茶?
美咲 はい?
明良 コーヒー、オア、ティーだよ
美咲 えっと、紅茶かなあ……
明良 なるほどなるほど

 やはり黙々と描く明良。

美咲 だからねえ、何の話?
明良 杉本の話だろう? お前に聞いたんだ
美咲 それはどういう――
明良 オシ! ざっとこんなもん
美咲 え、もう出来たの?

 美咲がスケッチブックを覗き込んで絶叫。

美咲 はあ?
明良 うるさい。耳元で大声を出すな
美咲 何描いてくれてんの?
明良 リンゴとグラスとボトルと、その前に座る杉本美咲――

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