星は天を廻るので。


〔キャスト〕
 男×1人
 女×1人

 霜田薫生(しもだ かおる)
  大学四年生。就職を機に遠方へ越すことになったので、ある人に想いを告げようと
  決心する。

 畑中実里(はたなか みのり)
 OL。気になる男性をいい感じのデートスポットに誘った。





 *場所、星見(ほしみ)広場。中央よりやや上手側にベンチ。
  舞台下手側、薫生板付き。観客側の上のほうを見つめている。
  
  ▽明転

薫生  ……来て、くれるかな。正真正銘の最後だから、ちゃんと伝えたい。

  *上手から実里がやってくる。薫生、それに気づくも振り返らず。

実里  あぁー、場所、ここで合ってるのかなあ? 暗くてよくわからないよ。
    あ、アレかな?

薫生  (背を向けたまま)やっと! 来てくれたんですね。

実里  ええっ? ごめん、そんなに待った? でも、まだ待ち合わせ十分前だよね……?

薫生  いや、時間なんてどうでもいいんです。僕は、今この場にあなたが来ているという、
    その事実がたまらなくうれしくてしょうがない!

実里  え? え? あ、あの、何か勘違い……、

薫生  あなたを好きになったのは、忘れもしない六年前……。
    そう、僕たちがまだ高校二年生の時です。覚えていますか?

実里  (しばし考えこむ)……いや、まったく。

薫生  ふふ、そっか……だって、華やかだったあなたに比べれば、僕なんて道端に生えて
    いるコケのようなもの。印象がないのも当然、ですよね。たとえ部活が一緒でも。
    でも、僕はちゃんと覚えています。あの日のことを。

実里  なんか語りだした……。

  *実里、あちこちを歩き回り他の人影を探す。薫生、その間も話し続ける。

薫生  部活中、一人でモソモソと研究結果をまとめていた僕の後頭部を、あなたは先生のコレクションであった、バカでかい石灰岩で思い切り殴りつけてくれましたね。

実里  なにそれ!

薫生  いやあ、あれは衝撃的だったなあ……。

実里  よく死ななかったね……。

薫生  でも、確かあれはわざとじゃなく、事故だったんですよね。
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