下手な芝居

(へたなしばい)
初演日:2019/2 作者:上杉政徳







      下手な芝居 作・演出 上杉政徳

  登場人物

    松原……(33)……男。課長代理。
    高村……(33)……男。松原とは同期。
    有紀……(30)……女。2人より3年後輩。


  舞台

    2018年、秋。月曜日の20時過ぎ。
    男女の恋愛をサポートする中小企業《ビッグラブ》営業2課のオフィス。


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    高村、有紀、掛け時計と脚立を持ってやってくる。すでに掛かっている時計と、持ってきた時
    計を取り替え、去っていく。暗転。

    2018年、秋。月曜日の20時過ぎ。
    男女の恋愛をサポートする中小企業《ビッグラブ》営業2課のオフィス。
    新しい企画の会議中。


松原  だからお前、またパクりじゃねぇか。
高村  いや待ってよ。
有紀  それってあれですよね、口説き方教室みたいな。
高村  違うんだって。
松原  最後に婚活パーティーに参加みたいな。
有紀  そうそう。
高村  そうじゃなくてこう、恋愛を、勉強するっていうか。
松原  だから口説き方教室だろ?
有紀  うわ、もう8時過ぎてる。
松原  今日、予定あるの?
有紀  なんにもないよ。
高村  だったらほら、仕事して。ほら案出して。
有紀  《 舌打ち 》
高村  えー。
松原  よし、トランプしようぜ。
高村  お前はちゃんとしろよ。
松原  いいじゃん、どうせいつも期限守ってねぇし。
高村  今日から課長代理でしょ?
松原  今日からじゃなくて今日だけな。
有紀  え?そうなの?
高村  違う違う、課長になりたくないんだよこいつ。
有紀  なんで?
松原  俺は楽して生きたいの。お前の方が向いてんじゃね?真面目だし。
高村  僕はいいんだよ。でもありがとう。
松原  褒めてねぇよ。つまんねぇって言ってんの。
有紀  ねぇ代理って?課長どうしたんですか?昨日もいなかったし。
松原  ああ、クビになった。
高村  そうなの!?
有紀  えー!?
高村  なんで!
松原  不倫がバレて。
有紀  うわぁ。
高村  いつ!誰と!
松原  昨日付けで。相手は経理の茜ちゃんね。
有紀  マジで。
高村  なにやってんだよ。恋愛はウチの商品だろう。
松原  よし、トランプしようぜ。
高村  やらないよ。
有紀  ねぇ、茜はどうなったの?
松原  茜ちゃんもクビ。
有紀  マジかー。
高村  とりあえずさ、部長も待ってるから、なんか案出してよ。
松原  つーかさ、なんであいつ帰らないの?
高村  だから案を待ってるんでしょ。
松原  いやいや、いつもすぐ帰るじゃん。
高村  課長がいないから、一応部長として残ってないとまずいんじゃないの?っていうか課長がいないの出張だと思ってたんだけど。
有紀  本当だ。茜からお世話になりましたって来てた。ほら。
松原  俺らが頑張らなくても1課の奴らがなんかアイデア出すだろ。
高村  1課は1課。2課は2課。もう期限まで時間ないんだから。
松原  もうお前が課長代理やれよ。
高村  無理だよ。人をまとめるなんて僕にはできない。
松原  またそういうこと言う。
高村  とにかく、僕には向いてないから。
松原  《 ため息 》
有紀  期限っていつなんですか?
高村  今日の9時。
有紀  え?
松原  今日の9時。
有紀  無理でしょう。
松原  だよね。
高村  まだあと40分くらいあるから。なんか考えようよ。
有紀  いやさすがにもう無理ですよ。
松原  だからさ、もう部長が帰るまでトランプしよう。
高村  もうそれしまっとけよ。
松原  お前だってさっきからアイデア出してるフリしてパクリばっかりじゃん。
高村  トランプよりはマシだろう。
有紀  ケンカしないで下さい。じゃあアイデアが出るかは置いといて、お話しましょうよ。
高村  お。いいじゃん。前向きじゃん。
松原  わかったよ。9時までな。9時になったら部長に適当なこと言って帰るぞ。
高村  はいはい。それじゃあ早速、今度の企画のコンセプトだけど……。
有紀  ごめんなさい。そういう話じゃなくて、恋愛の話。
高村  ちょっとくらい真面目にやろうよ。
松原  いいじゃん。男女の恋愛をサポートする会社だもんな。
有紀  仕事の話だよね。
松原  いいと思うよ。
高村  わかったよ。じゃあ適当に話して。メモしとくから、何か思い付いたら言ってね。
有紀  はーい。

   しばしの沈黙。

有紀  適当にって言われると話しにくいですね。
松原  うん。メモするとか言うしね。
高村  じゃあテーマとか決める?例えば……。
有紀  恋愛の失敗、とかどうです?
高村  嫌だよ。なんで失敗なの。
松原  仕事に対して嫌とか言うなよ。
高村  それお前が言うなよ。
有紀  失敗じゃなくてもいいんですけど、過去の恋愛。理想の恋愛じゃなくて実際にあった話。
松原  学生の頃とか?
有紀  んー、社会に出てからかな。学生の頃の恋愛も楽しかったけど、ウチのユーザーは社会人ですからね。
高村  ちゃんと仕事のこと考えてるんだね。
有紀  当たり前じゃないですか。
松原  社会に出てからってさ、そんな、話できるくらい恋愛してる?
有紀  してないの?
松原  してないことはないけどさ、そもそも新しい出会いがないじゃん。
有紀  学生の頃よりはね。でもまったく無いわけじゃないし。
高村  でも仕事によっては異性とまったく関わらない仕事もあるからね。だからウチみたいな会社がやっていけるんだけどさ。
松原  酒が飲めるやつが言うなよ。
高村  は?
松原  酒だよ酒。酒が飲めないと出会いの場はもっと減るからな。
有紀  そんなことないでしょ。
高村  そんなことないよ。
松原  いやマジで。酒が飲めるやつはそうやって言うんだよ。例えばキャバクラで……。
有紀  松原さん、キャバクラとか行くの?
松原  行けないんだよ。酒飲めないやつはキャバクラにも相席居酒屋にも行けないの。
高村  別にお酒飲めなくても行けるって。
松原  そりゃシステム的にはな。でも酒が飲めないやつが行くにはハードルが超高いの。わかる?
有紀  わかんない。
松原  なんでだよ。バーとか合コンとか飲み会とか、酒が飲めるやつはそれだけで飲めないやつの3倍は出会いが作れるね。
高村  でもお酒の場で出会っても、それが発展するとは限らないし。
松原  そんなもん、友達になりゃいいんだよ。
有紀  あ、わかるー。とりあえず友達になって、そこからまた出会いを広げれるもんね。
高村  でもお前彼女いるじゃん。
有紀  え、高村さんに彼女の話してるの?
松原  してないよ。
高村  偶然ね。まさかあれから、お前らがそんな仲になってるなんて思わなかったけど。ねぇ。
松原  今は過去の話だろ。
高村  あーごめん。有紀ちゃんはどんな思い出があるの?
有紀  私は、今の彼氏が初めての彼氏なんでわかりませーん。
高村  そうなの?おめでとう。
有紀  ありがとうございますー。
高村  じゃあなんで過去の恋愛の話しようって言ったの。
有紀  そりゃあ、聞きたいなーと思って。
高村  超自分勝手じゃん。

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