名を与えたもう

(なをあたえたもう)
初演日:0/0 作者:夢猫 遊子
 シキ(死期) : 20代前半。童顔で、ぱっと見少年にも見える。いつもフードを被っている。
 自分は死を呼び寄せると思っており、生きる意味を見いだせずにいる。
 
 
 八神 晃介(やがみ こうすけ) : 30代前半。シキが住んでいるスラム街から少し離れた街を牛耳るマフィアのボス。
 気位は高いが信念をしっかり持っており、筋はきちんと通す一本気な男。
 
 
 
 ※貧民・部下 : 晃介と兼役
 
 
 
 比率
 ♂1
 ♀1
 
 
 
 
 
 ☆*☆*☆*☆*☆*
 
 
 シキ「朝、か…。…相変わらず暑い…。
 …ん…?これは…」
 
 
 
 -手紙-
 
 貧民「『お前のせいで皆んな死んでいく…。
 明け方にまた一人逝ったよ。全部…、全部お前のせいだ!!
 …自分でも解ってるんだろ…?お前に生きる価値なんてねぇって…。
 そんなお前を生かしてやってんだ、やるべきことは解るよな?せめて俺達の飯代くらい稼いでこい!』」
 
 
 シキ「…そっか…。また…死んだのか…。
 ……ごめん…、ごめんな…」
 
 
 貧民「『飯代くらい稼いでこい!』」
 
 
 シキ「はっ!…は、はは…、そうだよな…。稼がないと…。
 泣いてたってどうにもならないんだ。皆んなが腹を空かしてる。早くしないと…」
 
 
 
 スラム街から少し離れた街にて
 
 シキ「ここでなら、目当ての奴見つかるよな。
 前に教えてもらった通りにやれば、俺にもできるはず…あ、あいつなんてどうかな。
 立派な服着てるし、うん…、良さそうだ。…よし……」
 
 
 晃介「親父、これくれ。…あぁ、悪ぃなっと…」
 
 
 
 話してる途中でシキとぶつかる
 
 シキ「…あ、悪い…」
 
 
 晃介「待て…」
 
 
 シキ「え…?」
 
 
 晃介「出せ」
 
 
 シキ「は…?な、何をだよ」
 
 
 晃介「今俺から盗ったもんをだ」
 
 
 シキ「なっ!お、俺は何も盗ってなんか…」
 
 
 晃介「ハッ!そんな慣れねぇ手付きで本気でバレねぇと思ってたのか?
 …餓鬼が相手だろうと、俺は甘くねぇぞ」
 
 
 シキ「っ…!!」
 
 
 
 逃げようとするシキ
 
 晃介「逃がすかよっ!」
 
 
 
 腕を掴まれ、腹に蹴りを入れられる
 
 シキ「ぐぅっ!!」
 
 
 晃介「…ふぅ、これでもう逃げられねぇだろ?
 ったく、手を焼かせやがって。男なら逃げんじゃなくて、歯向かってくるぐらいの気概を見せろ」
 
 
 シキ「はぁ…はぁ…、う、うるさい…!」
 
 
 晃介「何だ、まだ観念しねぇつもりか?ほんと往生際が悪ぃな…。
 …おい、聞いてんのか……あ…?お前…、女か…?」
 
 
 
 晃介に掴まれた拍子にフードが脱げる
 
 シキ「っ、だったら何だってんだよ」
 
 
 晃介「いや…、何でもねぇ」
 
 
 シキ「…俺は、こんなところで捕まるわけにはいかないんだよ…。
 これを、皆んなに届けないと…」
 
 
 晃介「皆んな…?…何だ、仲間がいんのか」
 
 
 シキ「ち、違う!仲間ってわけじゃ…」
 
 
 晃介「はぁ、はっきりしねぇなぁ…。
 …ほら、立て」
 
 
 シキ「…え…?」
 
 
 晃介「ずっとそのまま地べたに座り込んでる気か?
 周りを見ろ。行き交う奴らに見られてるぞ」
 
 
 シキ「っ…!」
 
 
 晃介「早くしろ」
 
 
 シキ「あ、あぁ…」
 
 
 晃介「じゃあ、行くぞ」
 
 
 シキ「は…?どこにだよ」
 
 
 晃介「黙ってついて来い」
 
 
 シキ「…わ、解った…」
 
 
 
 晃介の住まいにて
 
 シキ「…ここは…」
 
 
 晃介「俺の家だ」
 
 
 シキ「え、あんたの…?」
 
 
 晃介「驚きすぎだろ。とりあえず人の目を気にしねぇで話せる場所に来ただけだ。
 …で?そんなことより、なぜあんなことをした…?」
 
 
 シキ「そ、それは…」
 
 
 晃介「ちっ、煮え切らねぇなぁ。
 俺はお前をいつでも突き出せるんだぞ?冷てぇ牢にぶち込まれたくねぇなら、今すぐ吐け」
 
 
 シキ「っ…!
 ……腹、空かしてんだよ…」
 
 
 晃介「あぁ?」
 
 
 シキ「…っ、…金がないんだ…。
 だから、俺が盗んだ金を持って帰るのを皆んな待ってる…。スリはいけないことだってのは解ってるさ!でも!それでも…、それしかできないから…」
 
 
 晃介「………。
 盗んだ理由は一旦置いておくとしてだ。
 お前…着てるもんから見て、ここの奴じゃねぇだろ?
 それなのに皆んなとやらはなぜ一緒に来ねぇ?スリをやるにしても、人が多い方が何かとやりやすいんじゃねぇのか…?」
 
 
 シキ「それは…!……全部、俺のせい…だから…」
 
 
 晃介「どういう意味だ?」
 
 
 シキ「…俺は…、死を呼び寄せるんだよ…。
 俺と関わった奴は…皆んな、皆んな死んでいく…。あんただって危ないかもしれない!!
 …っ…、だから、少しでも皆んなに償いがしたいんだ…。金を稼いでこいと言われれば、スリでも何でもやる…!だから今日も…」
 
 
 晃介「くくく…、はははははっ!!
 なに馬鹿げたこと抜かしてやがる…!死を呼ぶだぁ?そんなのただの体のいいつまはじきだろ!
 そんなこと信じてんじゃねぇよ」
 
 
 シキ「だけどほんとに…!!」
 
 
 晃介「(少し被せて)だとしたら、そんな風に思う出来事があったんだろう…?」
 
 
 シキ「……あぁ…」
 
 
 晃介「はぁ…。まぁいい。
 でだ…、お前は俺にどんな"償い”をする気だ…?」
 
 
 シキ「っ…」
 
 
 晃介「ふっ、言い方が悪かったな。端から答えを聞く気はねぇ。
 お前にはこの街に留まってもらう。もう、皆んなとやらに会う日は来ねぇ」
 
 
 シキ「なっ!どういことだよ、それ!?」
 
 
 晃介「あ…?お前に逆らう権利があると思ってんのか…?」
 
 
 シキ「くっ…」
 
 
 晃介「今日からお前はここで、下働きをしろ。
 そして俺には絶対に逆らうな。解ったな…?」
 
 
 シキ「………」
 
 
 晃介「おい、返事はどうした?」
 
 
 シキ「…解った…。
 けど…、俺は死を呼び寄せる。あんたやあんたの周りの奴らがどうなるか…」
 
 
 晃介「あぁ、それは解ってる。
 いい機会じゃねぇか。それが思い込みだってことを証明してやるよ」
 

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