死人遊戯
死人遊戯

薫・・・・家出をしている少女
正次郎・・薫と共に行動する男
良子・・・部屋の中の住人(?)
雅文・・・薫の父、歴史学者
金田・・・人買いに来た金持ち


正太郎(雅文が代役する)と正次郎は兄弟であり、自決を迫られていた。

太「敗北を喫した武士としての、最後の誇りなのだ。そう臆病になるな」
次「そうは言っても兄さん、怖いよ」
太「大丈夫、すぐに済むさ」
次「必ず兄さんも共に」
太「ああ、分かっておる」

震える手に手を重ね、二人は自身の腹に刃を突き立てた。
正太郎の手から短刀がこぼれ落ちる(刺していない)。そうしてすっくと立ちあがり、鞘から刀を抜き構える。

太「すまぬ正次郎。兄を許せ」

正次郎の首めがけて刃を振り下ろす・・・。

舞台は変わる。
黒ずくめの服、白い手袋を身につけた薫(かおる)がぶつぶつ言いながら、部屋の中を物色している。
反対側のハケ口からは部屋のもの(ビデオテープ)を使ってドミノを並べている正次郎が現れる。
二人は互いの存在に気づかず、舞台中央で背中合わせでぶつかる。

薫「おわあっ!」
正「な、何じゃ!?」

衝撃によりドミノが倒れてしまう。
正次郎は必死に止めに行く。

薫「おい、正次郎。なにやってるんだよ」

しばらくすると、先ほどと同じようにドミノを並べ直している正次郎がやってくるので、薫は途中で止める。

薫「なあ、頼むから私の話を聞いてくれ」
正「む、ああ。すまぬ、ちょっと集中していたのでな」
薫「集中するのはいいんだよ。私が気を張って外の様子は窺っているからね。ただ、二人の間で目的がずれているような気がして、そこを確認したい」
正「何を言っとるか。食い扶持を繋ぐために空き巣に入ったのではないか」
薫「良かった。そこは大前提だから、そこですれ違いがあったなら私は帰るところだったんだ」
正「して、食料は見つかったのか?何か成果は?」
薫「いや、残念ながら食料どころか金目のものも見当たらない」
正「なるほど。無駄足だったのかもしれぬな」
薫「そっちはどうだった?」
正「こちらは順調だ」
薫「何がどう順調なの?」
正「もうすぐ世界記録に手が届く」
薫「空き巣の?」
正「まさか、ドミノ倒しだよ」
薫「ああ、なんだなんだ。ドミノ倒しか」

そうして、薫は努力の結晶に手をかける。ドミノ倒しが始まった!

正「な、何をする無礼者!」
薫「無礼は空き巣に入ったところがピークだ。むしろ、空き巣に入った部屋でドミノ倒しをするお前は無礼を通り越して、通り越して、何と言っていいのかすら言葉も出ない」
正「たとえ一時的にとは言え、人様のものを拝借するのだ。せめて、家主にとって足しになることをせねば割りに合わぬだろう」
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