夏祭りパニック

(なつまつりぱにっく)
初演日:2009/9 作者:亀山真一
夏祭りパニック

登場人物
篠崎悠花 幽霊の女の子
死神 脱力系魂の運び屋
きつね 神仕兼巫女さん兼ナレーション
宇多倉正汰 高校一年生、馬鹿に素直
穂純梓 同、しっかり者
香賀谷洸一 同、現実主義者


 きつねが一礼して、上演案内を始める。
(劇団の事情に合わせて下さい)

きつね 本日は演劇部夏公演「夏祭りパニック」にお越しいただきましてまことに――
死神 ありがとうございまーす。

 と、言いながら死神が割って入る。

きつね え? 何で出てきて……。
死神 開演に先立ちましていくつかお願い事がございます。ほら言えって。
きつね はい。一つ目、携帯電話やポケベルなど音の出るものはあらかじめ音の出ないようにしておいてください。二つ目、フラッシュ撮影は役者が驚いてしまいますのでお控えください。三つ目、劇中知っている人が出てきても大声で名前を呼んだりしないでください。
死神 四つ目、先ほどから音を出すなと言っておりますが面白いと思ったら思いっきり笑っちゃってください。
きつね よろしくお願いいたします。
死神 さて、お話の内容ですが……昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが
きつね 何言ってるんですか? これはつい最近の出来事です。舞台は私がお仕えしていますこの神社、ここで毎年行われる夏祭りでのこと。突然三人の高校生の前に現れた少女。彼女のはなった言葉とは? 三人は彼女の願いをかなえるため動き出します。
死神 そんな話だったっけか?
きつね では、最後までごゆっくりお楽しみください。

 二人が一礼して捌ける。暗転。


  一場

 待ち合わせ中の宇多倉正汰。しびれを切らして、

正汰 遅い、遅い、遅い! いつも遅刻常習犯だって言われるからめっちゃ早く来てやったのに。

 焦った様子の穂純梓が入ってくる。

梓 ごっめーん、遅くなった。
正汰 遅い! ……って穂純か。穂純なら遅れても仕方ないな。
梓 うわ、正汰に言われたくない。
正汰 どういう意味だよ。
梓 別に。
正汰 せっかく俺が早くきてやったのに誰も来ないんだよ。来れないって奴からは連絡来てるけど
梓 誰が来ないの?

 二人で携帯の画面をのぞき込んでいるところへ、洸一が入ってきて固まる。

洸一 何で、正汰と穂純……?
正汰 香賀谷、今日お前来ないって……
洸一 来ちゃ悪いか?
梓 悪かないけど。
洸一 そうだ、なぜか俺に連絡来てるけど。
正汰 誰から?
洸一 ほれ。(メール見せるとか)
正汰 知らなかった。待てよ、てことは……
梓 あたしたち三人だけにならない?
三人 ……はあ?
梓 じゃあ、何? 一年に一回の楽しい夏祭りをこんな馬鹿二人と過ごさなきゃいけないの?
正汰 馬鹿って何だよ。穂純も俺と成績大して変わんなかっただろ。
洸一 幹事誰だ? 人のこと呼びつけといて出席状況も把握できない馬鹿は?
正汰 ……それは俺だ。
洸一 お前か!
梓 やっぱり馬鹿じゃないの。
正汰 だって高校バラバラになった奴らなんてこんな機会なきゃ会えねえだろ?
洸一 会えてねえし。

 いつの間にか登場していた篠崎悠花が三人の存在に気付く。

梓 あたし帰ろう。
洸一 同感だな。俺も帰る。
正汰 えー、せっかく来たんだから一緒に回ろうよー。
洸一 このメンバーで?
正汰 当たり前――
悠花 (三人の衣装の特徴並べあげる)黄色のシャツと赤チェック、なんか白黒のむっつり眼鏡に、紺の浴衣に赤い帯……間違いない!
三人 ……?
悠花 いきなりごめんなさい。私、悠花といいます。
正汰 こんな奴クラスにいたっけ?
洸一 元同級生は名乗らないだろ。
悠花 驚くかもしれないんですけど、
梓 けど、何?
悠花 (意気込んでいる)
正汰 どうした?
悠花 私、幽霊なんです。
正汰 幽霊なの!? すげえ。
悠花 そうなんです。それで――
洸一 いや、幽霊って何だよ。
悠花 だから、信じてもらえないかもって言ったけど、その……
正汰 幽霊なんだってさ!
洸一 何信じてんだよ。

 去っていこうとする洸一を引き留め、

正汰 ちょお、どこ行くんだよ。
洸一 俺は帰るって言ったぞ。
梓 まあまあ、話くらい聞いてあげなよ。それで?
悠花 話は一年前に遡ります。私が死んだのは一年前の春でした。

 明場転して悠花の回想。(中央にピンスポットのイメージ)

きつね 長い長い闘病生活。彼女はずっと病院の中。
悠花 いつか元気になって、やりたいことたくさんやるんだって。できるんだって信じてた。それなのに――
きつね とうとう病気が治ることはなかった。彼女は病院から外へ出ることなく十五年という短い生涯を終えた。でも、死んでも死に切れない。彼女の魂はこの世を彷徨い続けた。
悠花 いやだ、まだ死にたくないよ。
きつね そのうち死神がやってきた。

 できるだけしれっと死神が登場している。

死神 いつまでも地上にいたって未練が解決するケースは少ないぞ。早くあきらめたほうが楽。
悠花 確かにそう思ったけど、どうしてもあきらめられなかった。
きつね またしばらく地上を彷徨っていると楽しそうな光を見つけた。それがこの夏祭りだった。
悠花 ここだ、私の未練はここにあるんだ。
きつね 初めての夏祭り、彼女には輝いて見えた。死んでから初めて前向きになった。でも、やっぱり成仏はできなかった。
悠花 来年ここに来てみれば今度こそ答えが分かる。きっと見つかる。
きつね でも、見ているだけではだめかもしれない。身をもって感じたい。一日、その時間だけでもいいから
悠花 死神さんお願いします。
死神 えー。
悠花 お願いします。
死神 確かに霊魂を導いてやるは俺の仕事だけどさ、
悠花 お願いします。
死神 それで成仏できるわけ?
悠花 きっと
死神 きっとって

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