受付番号#4771

(うけつけばんごうよんなななないち)
初演日:2019/4 作者:あかざとう
『受付番号#4771』(うけつけばんごうよんなななないち)
 
  登場人物:
  ・遠山椿(とおやまつばき)-受付番号#4769の魂。キャバ嬢。人当たりが良い姉御肌キャラ。
  店の厄介な客からストーカー被害を受け、最後は刺殺された。享年30。
  ・白木桜子(しらきさくらこ)-受付番号#4770の魂。女子高生。無気力なようでしたたかさを併せ持つ。
  エナドリの過剰摂取により急性カフェイン中毒を起こし死亡。享年18。
  ・西尾直紀(にしおなおき)-受付番号#4771の魂。チェーン店カフェの男性店員。真面目だが自己肯定感が低め。
  ゼリー状栄養食を喉に詰まらせ窒息死。享年25。
  ・粕谷啓(かすやけい)/Kay.K(けいけー)-受付番号#4772の魂。ソロアイドルの男性。勢いで生きるナルシスト。
  公演中の事故により、機材の下敷きになり死亡。享年25。
  ・職員1-冥界入場待合室の女性受付職員。職員2の先輩。
  ・職員2-冥界入場待合室の男性受付職員。職員1の後輩。
  ・PA-音響スタッフ。謎多き存在。実際のスタッフとの兼任可。
 
  *受付番号の読み方について
  ・例:「4770」
  →×「よんせんななひゃくななじゅう」
  →◯「よんななななぜろ」
 
  ◯冥界・入場待合室
 
     病院の待合室のような部屋。
     舞台中央前方に2人がけのベンチが2個並んでおり、そのうち1つ
     に遠山と白木が並んで座っている。
     2人の横には、それぞれのかばんが置いてある。
     (2人以外にも多くの魂がいる設定で、適宜雑談SEの挿入を推奨。)
     舞台上手後方に受付カウンターがあり、職員1が立っている。
     職員1はパソコンを使い、事務仕事をしている。
     舞台上手前方に「ようこそ冥界へ 入口こちら」と書かれたゲー
     トがある。
 
     明転。
 
  白木「関取。」
  遠山「リコッタパンケーキ。」
  白木「木苺。」
  遠山「ゴマスリ。」
  白木「リス。」
  遠山「んー、スマートフォン…あっ!」
  白木「また椿さんの負けですか。これでもう71回目ですよ。」
  遠山「桜子ちゃんが強すぎるんじゃない?」
  白木「椿さんが弱いのかもしれませんね。」
  遠山「なによー、生意気ね!」
  白木「すみません、ゆとり世代なもので。」
  遠山「なにそれ、自分若いですアピール?腹立つわー。」
  白木「ご自由にお受け取りください。」
  遠山「…あのさ、桜子ちゃん。」
  白木「どうされましたか。」
  遠山「しりとり、2人じゃつまんないわね。」
  白木「同感です。」
 
     西尾、ゲートと逆方向から入場。
 
  遠山「来たっ!」
  白木「興奮しすぎですよ、椿さん。」
 
  職員1「いらっしゃいませ、ようこそ冥界へ。こちら入場受付兼待合室になります。」
  西尾「へえ、待合室…あ、どうも。」
  職員1「お名前とご享年をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
  遠山「西尾直紀、25です。」
  職員1「かしこまりました。それでは受付番号が---#4771になります。順番にお呼びいたしますので、お並びになってお待ちください。」
  西尾「はーい。」
 
     職員1、西尾に整理券を渡す。
 
  職員1「なにかご不明な点等ございますか?」
  西尾「えーっと…すぐ冥界入れるわけじゃないんですね。」
  職員1「そうですね…各種事務手続き等ございますので、なかなか。」
  西尾「…どれくらいかかります?」
  職員1「今日は少々お魂様で混雑していらっしゃいますので、1、2時間ほどかかってしまうかと…申し訳ございません。」
  西尾「いえ。」
  職員1「他にお困りのことがございましたら、いつでもお申し付けくださいませ。」
  西尾「ありがとうございます。」
 
     職員1、事務仕事を始める。
     西尾、空いているベンチに座る。
 
  遠山「ねえねえ。」
  西尾「ん?」
  遠山「そうそう、あんた。」
  西尾「なにか?」
  遠山「ヒマ?」
  西尾「は、はあ。」
  白木「椿さん、振りが雑すぎますよ。すみません、ご迷惑おかけして。」
  西尾「いや、大丈夫だけど…。」
  白木「我々見ての通り順番を待っている魂なんですが、もしご都合がよろしければ---」
  遠山「桜子ちゃんこそ回りくどくない?」
  白木「そうでしょうか。」
  西尾「すいません、全然話が読めないです。」
  遠山「要するに、冥界入るまでちょっとおしゃべりでもして時間潰さない?ってこと。」
  白木「2人だと盛り上がらないんで、次の番号の方がいらしたら声をかけようと思ってたんですよ。」
  西尾「あ、なるほど。それならぜひ。」
  遠山「やった!じゃ、まずはアレね!アイスブレイク〜!順番にお名前と享年をどうぞ!」
  西尾「合コンみたいですね…?」
  遠山「じゃあまずあたしから!遠山椿、享年30でーす!」
  白木「えっ、椿さんわりといってますね。」
  遠山「だまらっしゃい!」
  白木「白木桜子と申します。享年18になります。」
  西尾「へえ、よろしく…あ、えーっと、西尾直紀。享年25です。」
  白木「意外とお若いんですね。」
  遠山「当てつけ?あたたしへの当てつけなのそれ?」
  白木「とんでもない。では、次に生前の職業でも---」
  遠山「待って!普通に言ったらつまんない!」
  白木「はあ。」
  遠山「当てっこしましょ!」
  西尾「ええ…俺そういうの苦手なんですけど。」
  遠山「だいじょぶだいじょぶ、適当にやってればなんとかなるから!」
  白木「でしたら、椿さんから始めてください。」
  遠山「はいはーい!どんっ!」
 
     遠山、立ち上がってポーズを取る。
     時折ポーズを変える。
 
  遠山「どう?なんに見える?」
  西尾「うーんと…女優さんですか?」
  遠山「やだー、お世辞やめてよー!」
  西尾「じゃあモデルさんとか。」
  遠山「そんな大したことないからー!」
  白木「あ、もしかしてキャバ嬢とかされてましたか。」
  遠山「キャー、見える?見える?正解だよこの生意気な小娘が!」
  西尾「ひえっ。」
  白木「おほめいただき光栄です。」
  遠山「ほめてない!」
  西尾「へー、そうなんですか。」
  遠山「なに?西尾くんもあたしのことバカにすんだ?」
  西尾「い、いえ。」
  遠山「ふーん…」
  西尾「あのー、接客業のプロって感じで、個人的にはめっちゃ尊敬してます。ほんと。」
  遠山「あ、そう?ありがと。」
  白木「ふう。ようやく落ち着いてくださいましたか。」
  西尾「きみさ、あんまり年上の人いじらない方がいいよ。」
 
  白木「では、次は私ですね。…といっても、ご覧の通りですが。」
  遠山、西尾「JK。」
  白木「JKでした。」
  遠山「見たまんまね。」
  白木「西尾さんどうぞ。」
  西尾「あ、じゃあ…はい。」
 
     西尾、立ち上がる。
 
  遠山「…え、わかんない。」
  白木「販売業…ですかね。」
  西尾「んー、惜しいな。」
  遠山「どっかで見たことある気がすんだけどなー、その制服…。」
  白木「ヒントください。」
  西尾「ヒント?えーっと…えーっと…。」
 
     西尾、カップにコーヒーを注いで差し出すジェスチャーをし、
     一礼。
 
  白木「薬剤師…?」
  西尾「離れたかも。」
  白木「では、マッドサイエンティストとか。」
  西尾「あー、そっち行っちゃうか。」
  遠山「…わかった!カフェの人!」
  西尾「正解です!」
  白木「お見事です。」
  遠山「えー、オシャレー!ちなみにお店は?」
  西尾「『Natural Leaves』っていう、チェーン店で働いてたんですけど。ご存知ですかね。」
  遠山「わー、よく仕事前飲んでた!その節はお世話になりましたー!」
  西尾「あ、どうも。えーっと、そんなところです。」
 
  白木「で、椿さん。自己紹介が終わりましたけど、どうしましょうか。」
  遠山「ん?特に決めてないけど、なんかやりたいことある?」
  白木「幹事投げないでくださいよ。」
  西尾「だ、大富豪でもします?…あれ、かばん…かばん…ない。」
  白木「現世に忘れものですか、ご愁傷様です。」
  西尾「はあ…。」
  遠山「よっし、じゃあキャバ嬢秘奥義!じゃじゃーん!」
 
     遠山、かばんからメモ帳を取り出す。
 
  白木「そちらは?」
  遠山「仕事用のマニュアル!題して『椿ちゃん流・客を帰さず追加注文させる会話術』!」
  西尾「わあ、頼もしい。」
  遠山「コレによると、初対面同士で話が弾まない時は…『共通の話題を探すべし!盛り上がって追加注文してくれること間違いなし!』」
  西尾「なるほど、共通の話題。というと…」
  白木「キャバ嬢と女子高生とカフェ店員の共通項って…」
  西尾「あるのか…?」
  遠山「ふふっ、あんたたちまだまだね。あたしはもう見つけたわよ、確実に全員語れるトピック。」
  西尾「そりゃ本職の方には負けますよ。」
  白木「で、そのトピックとは?」
  遠山「ズバリ!」
  白木「ずばり。」
  遠山「各々の死因!」
  西尾「し、死因…。」
  白木「わー、いきなり核心突きますねー。」
  遠山「よくよく考えなくても、あたしらみんな死人じゃん?共通テーマで盛り上がること間違いなし!」
  白木「確かに、話はありますね。」
  遠山「でしょ?あたしってば冴えてるわー…」
  西尾「死因…死因か…。」
  遠山「アレっ?西尾くん、大丈夫?」
  白木「ひょっとして…女子高生には刺激が強すぎる死因とかですか。大丈夫ですよ、そこまで清純でもないんで。」
  西尾「あっ、べべべ別にそういうわけじゃ!」
  白木「成人男性、いろいろありそうですよね。」
  西尾「だから、違うって!至って健全な死に方だから俺!」
  白木「はいはい、そういうことにしておきますよ。」
  西尾「つ、椿さん!お先どうぞ!」
  遠山「あらそう?じゃあ、まあ…ひとことで言えば、クソ客のせいね。あたしは。」
  西尾「ク、クソ客?」
  遠山「要するに、店からすれば厄介な客って意味よ。ホラ、嬢の彼氏気取りしてるやつとか。」
  白木「それは厄介ですね。では、椿さんもそのような被害に遭われたのですか?」
  遠山「まあね。金ケチってほとんど店来ないし、そのくせしょっちゅう外で会おうとするし、 たまに来たと思ったらベタベタ触ってくるし。マジ最悪だったわあいつ。」
  西尾「うわあ…」
  白木「キモイですね。」
  遠山「で、とうとう家までつけて来やがって!」
  西尾「こ、怖すぎないですかそれ…!」
  遠山「だから言ってやったのよ、今すぐ消えないと警察呼ぶぞって。」
  白木「で、どうなったんですか?」
  遠山「『うるせえ!お前が生意気なのが悪いんだ!』とかぬかしやがって、で…包丁隠し持ってたみたいで、まあグサーっと。」
  西尾「ひええええ…。」
  遠山「稼げるっちゃあ稼げるんだけどね、やっぱ客層がね…あー、なんか思い出したらムカついてきたわ。蹴り殺してやりたい。」
  西尾「は、早まらないでください椿さん!」
  白木「そうですよ、どうせなら相手が苦しみながら生き続けるよう呪いでもかけましょう。」
  遠山「あ、それナイスアイディア!」
  白木「お褒めいただき光栄です。」
  西尾「は、ははははは…さ、桜子ちゃんはどうなの?」
 
  白木「聞いていただけます?」
  西尾「もちろん。」
  白木「…私、いわゆる自称進学校ってやつに通ってたんですけど。」
  遠山「のっけから母校ディスるわねー。」
  白木「この時期、中間試験から2日でプレゼンとかいう超過密スケジュールで。」
  西尾「た、大変だね。」
  白木「エナドリさんのお力添えを受けて、試験明け特有のテンションで原稿書いてたんですよ。」
  遠山「あー、めっちゃわかる!テストの後って異様に元気出るよね!」
  白木「確か、夜中の3時ぐらい…でしたかね。さすがに仮眠取ろうと思ったら、ちょうど…おりてきちゃって。コレは寝たら忘れると思ったんで、エナドリさんをもう2、3本ほどいただいて。」
  西尾「ええ…力添え受けすぎじゃないかな。」
  白木「しばらくは良かったんですけど、次第に吐き気が止まらなくなりまして…少し横になったら動けなくなって、そうこうしているうちに意識も遠のいて…今に至ります。」
  遠山「えっ怖ー!」
  白木「そうですか?」
  遠山「表現が生々しいわ!」
  西尾「てか高校生がエナドリ漬けはダメでしょ桜子ちゃん!危機感とか抱かなかったの?」
  白木「いつかこうなるだろうとは。」
  遠山「自覚あんのに死ぬまで改善しようと思わないのヤバすぎでしょ…。」
  白木「人には死んでも書かなければいけない時があるんですよ、椿さん。」
  遠山「うーわ、無駄にカッコイイこと言うし。」
  白木「まあ、さすがに両親には申し訳ないですが。しょうもない死に方で、後始末もさせてしまってますし。」
  西尾「逆に後悔してるのそれだけなの?ロックすぎない?」
  白木「若気の至り、というやつですね。」
  遠山「えっ、ごめんドン引きなんだけど。」
 
  西尾「いやー…意外でした。」
  遠山「なにが?」
  西尾「お二人ともずいぶん落ち着かれてるから、死ぬことは覚悟してたのかと思ってたんですよ。こう、持病とか。そしたら、だいぶ…壮絶だったんで。」
  白木「まあ、先ほどお伝えしました通り、いちおう想定内ではありましたから。」
  遠山「あたしもある意味じゃそうかもねー。人に恨まれても文句言えない仕事だし。」
  西尾「た、達観してるなー…。」
  遠山「で、そういう西尾くんこそどうなのよ?」
  西尾「い、いいんですよ俺は。大したことないんで。」
  白木「1人だけ話さないの、不公平じゃありませんか?」
  遠山「そうだそうだー!」
  西尾「えー…あー、ほら、あるじゃないですか。ヴィダー。」
  遠山「inゼリー?」
  西尾「夕飯にあれ食ってたら…のどに詰まっちゃって。苦しいなーって思ってるうちにぼんやりしてきて…で、気がついたら。」
  遠山「…えー…」
  西尾「なにか?」
  遠山「…ダッセエ。」
  西尾「わ、すごい罵倒された。」
  遠山「だってさあ…20代の若者がゼリー詰まらせて死ぬかなあ普通?」
  西尾「いやー、さすがに俺もビックリしましたよ。」
  白木「ていうかお夕飯がヴィダーって、西尾さん全然私のことバカにできませんよね。」
  遠山「ブラック勤め?だいじょぶ?」
  西尾「ははは…ま、もう終わったことなんで。」
 
  粕谷(声)「だーかーらー!」
  西尾「ん?」
 

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