イニシエーション

(いにしえーしょん)
初演日:0/0 作者:双六
イニシエーション
   
   登場人物
   ・高坊源司(たかぼうげんし)…中二病気味の大学二年生。滝山大学美術部所属。自分に絵の才能があると信じこんでいる。
   ・里垣紗枝(さとがきさえ)…高坊の幼馴染。大学二年生。滝山大学美術部所属。存在するはずのない兄との通話を繰り返す。
   ・三河結(みかわむすび)…高坊の後輩。大学一年生。滝山大学美術部所属。噂好き。
   ・本巣八重(もとすやえ)…高坊の先輩。大学四年生。滝山大学美術部部長。暴走気味の後輩たちに手を焼く。
   ・白山千夏(しろやまちか)…高坊の同級生。大学二年生。滝山大学美術部所属。ぼーっとしていることが多い。
   ・熊野郭吏(くまのかくり)…高坊お気に入りの画材屋の店主。丁寧な物腰だが胡散臭い。
   ・里垣凪斗(さとがきなぎと)…里垣の父。娘を溺愛している。
   ・出雲代美(いずもよみ)…里垣父行きつけのスナック出雲のママ。十数年にも渡って里垣父の育児相談に乗っている。
   ・織田信長(おだのぶなが)…織田信長本人。高坊が描いた絵に魂が宿り、話し出した。
   ・九十九(つくも)…熊野、里垣兄の正体。物に自身の能力を一部宿らせ、あらゆる時代で人間の人生を狂わすことを楽しみとしてきた一種の妖怪。
   
一、絵画
【場所】高坊の部屋
【状況】高坊が里垣をモデルに絵を描いている。

里垣「高坊〜もう動いていい?」
高坊「駄目だ。まだ途中だ…くそ!鼻筋が上手く描けない。きっとモデルのルックスが悪いんだ!」
里垣「なにそれ、ちょっと失礼じゃないの?部活動を休んでまで、こうしてあんたのお絵描きに付き合ってあげてるのに。というかあんたも部活行かなくていいの?」
高坊「お絵描き?君こそ失礼なやつじゃないか。僕は将来、世界に名を轟かせる大芸術家になる男だぞ?取り合えず大学の美術部に入ってはいるが、所詮あんなのは学生のお遊びにすぎない。」
里垣「はいはい。で、未来の大芸術家さんは何か実績でもあるの?」
高坊「あるともさ。あれは義務教育三年目を迎えた夏の出来事だった…」
里垣「小学校三年生ね。」
高坊「うるさい!芸術家は常に斬新な言葉遣いをするものなんだ!いちいち茶々を入れるんじゃあない!」
里垣「わかりましたよ。ほら、続けてくださいませ〜」
高坊「…不快なやつだ。まあ、その、とにかくあの夏、僕は偉大なる才能の片鱗を顕現させたのだ。」
里垣「偉大なる才能の片鱗を顕現…」
高坊「そう!帰宅の集いにて、担任が僕に渡してきたのだ。あの上質な紙をな!見ての通り、あの紙には特選と書いてある。これは我が才能を示す何よりの」
里垣「大体その『僕』って一人称やめてよ。あんた中学二年生の頃…ええと義務教育八年目に、『自分のことを俺と呼ぶやつは中二病だ!今後俺は僕って名乗るぞ!』って訳分からないこと言ったきりそれだけどね、ぶっちゃけダサいわよ。」
高坊「問題ない。今は僕がトレンドだ。」
里垣「顔赤いじゃない。というか特選どころか、入選すらそれっきりでしょ?よくそれで偉そうなこと言えるわね。」
高坊「それはな、僕も最初は審査員の見る目が無いのだとか、時代がどうも僕に追いついてくれないのだとか考えていたさ。しかし違った。」
里垣「?」
高坊「これだ。このあまりにも過激な僕の才能を封じ込める権能を持った絵筆。あの賞状と共に副賞として渡されたのだ。」
里垣「どんな言い訳よ。じゃあ新しい筆でも買ったら?どうせ変わらないだろうけど…」
高坊「それだ!よく思いついた里垣!これから新しい絵筆を買いに行くぞ!」
里垣「え?嘘でしょ?絶対無駄だって!」
高坊「絶対などというものは存在しなぁい!大天才の決断は絶対だ!ほら、支度をしろ!」
里垣「絶対なんてないんでしょ?そもそもどうして私まで行かなきゃいけないのよ!」

二、美術部
【場所】北滝大学美術部部室
【状況】部員たちの会話。高坊と里垣の話題。

三河「絶対そうですよ!高坊先輩と里垣先輩は付き合ってると思います!」
本巣「いやいや、あの高坊だよ?あいつに恋愛なんて無理無理。あんなのと恋愛できる聖人は、マザーテレサを最後に地上から消えたわ。」
三河「でも、いつも一緒に帰ってるじゃないですか!この間おそろいのシャーペン使ってるのも見ましたし!」
本巣「あの二人は小学校からの幼馴染なのよ。小中高大、おてて繋いで入場から帽子投げるまで一緒なの。家もお隣。そしてあのシャーペンは、高校卒業記念に当時の担任の先生から貰ったものらしいわ。」
三河「ええ!?幼馴染なんですか!?しかも家がお隣!?じゃあ余計に怪しいじゃないですか!きっとお互いの部屋の窓から会話したり、CDの貸し借りしたりしちゃってますよ!他にも、共有の勉強部屋があったり、甲子園に連れていく約束したり、遊園地で黒ずくめの男に一服盛られたり!」
本巣「はいはいはいはい、元ネタ分かりづらいの入れるのはやめなさい。伝わらないでしょ?」
三河「誰にですか?」
本巣「…それは禁則事項です。」
三河「それも分かりづらいですよ…」
(白山入場)
白山「お疲れ様でーす。」
三河・本巣「お疲れ様でーす。」
白山「何の話してたの?部室の外まで何か話してるのは聞こえてきたけど。」
三河「高坊先輩と里垣先輩のことです!白山先輩もあの二人は付き合ってると思いますよね?」
白山「んー、いやー?違うと思うよ?里垣ちゃん違うって言ってたし。多分気のせいだよ。」
三河「そんなあ…」
白山「あ、そういえば、その高坊ちゃんと里垣ちゃんが画材屋さんに入っていくのを見たよ。」
三河「本当ですか!?デートじゃないですか!私はまだあきらめてませんからね!皆で見に行きましょうよ!」
本巣「いやよ。私はここで待ってるわ。行くなら一人で行ってきなさい。」
三河「えー。本巣先輩冷たーい。まあ、行ってきますけど。」
白山「待って三河ちゃん、私も行くー」
三河「やった!それじゃあ本巣先輩、一人でお留守番、頑張ってくださいね!」
(三河・白山退場)
本巣「…はあ。」

三、画材屋
【場所】画材屋
【状況】高坊と里垣、画材屋で新しい絵筆を探す。
(高坊・里垣入場)
高坊「店長!僕だ!」
熊野「いらっしゃい。おやおや、稀代の天才高坊君ではありませんか。またこのような陳腐な画材屋へよく来てくださいました。今日は彼女さんと一緒ですか?」
里垣「か、彼女なんてそんな」
高坊「稀代の天才は正解だが、最後は違うな。これは我が覇道の礎…簡単に言えばアシストゥアントだ。」
店長「なるほど。これは失礼しました。それで、今日はどのようなご用で?」
里垣「私には失礼じゃないのね。」
高坊「今日はな、新しい絵筆を入手しに来た。今使ってる絵筆は、我が才能を封じ込める力があるようだからな。」
熊野「…ふふっ。いや、失礼いたしました。では、こちらなどいかがでしょう?」
高坊「普通の絵筆のようだが?むしろ何か安っぽくないか?」
熊野「それがですね、この絵筆は今朝、突然空から降ってきたものなんです。」
高坊「なんだその素敵エピソードは!?いくらだ?言い値で買おう!」
熊野「八千円いただきます。」
高坊「よし買ったぁ!!」
里垣「即決!?いやいや、絶対怪しいでしょ。どうせ鳥がどっかから持ってきて偶然落としたとか、在庫押し付けられてるとかそんなんよ?この店長見るからに怪しいじゃない!」
高坊「馬鹿野郎!この熊野画材店の熊野店長はな、誰よりも早く僕の才能を見抜き、義務教育五年目より我が覇道を支えるパートナーなのだ!怪しくなんかあるものか!」
里垣「その義務教育何年目って表現そろそろ飽きたし面倒だわ。普通に言いなさい。ていうか、あんたに才能があると思ってる時点で相当怪しいわよこいつ…」
高坊「それに関しては…善処しよう。しかし、熊野店長の目は確かだ。今に証明してやろう、この新しい絵筆でな!」
熊野「お嬢さん、私の目にくるいはありませんよ。高坊君ならきっと、ピカソやバッハより素晴らしい画家になるはずです。」
里垣「バッハは画家じゃないでしょ…やっぱり怪しい…」
高坊「とにかく、すぐに戻って絵の続きを描くぞ!」
里垣「はいはい…」
(高坊・里垣退場)
(三河・白山入場)
三河「高坊せんぱーい!里垣せんぱーい!あれ?いない…」
白山「三河ちゃ〜ん、転ばないように気を付けてねー」
熊野「いらっしゃいませ。高坊君のお知り合いのようですが、本日はどのようなご用で?」
三河「こんにちは!私は、滝山大学の美術部で、高坊先輩の後輩の三河です!」
白山「同じく美術部で、高坊君の同級生の白山でーす。」
三河「今日は独自のルートから、ここで高坊先輩と里垣先輩がデートしてるとの情報をゲットしたので来ました!」
白山「独自のルートの白山でーす。」
三河「あ!折角カッコよく言ったのに!白山先輩ひどーい!」
白山「ごめんね三河ちゃん。今度からは内緒にするね。」
三河「しょうがないですね。今回は許してあげます!」
白山「わーい!」
熊野「ええと、残念ながら高坊君とアシスタントさんはたった今お帰りになりましたよ。」
三河「ええ!?そんなぁ…」
白山「しょうがないね、本巣先輩も待ってるし、大学に戻ろうか。」
三河「えー…」
白山「シュークリーム買っていこ。」
三河「はーい!でもその前に、折角ここまで来たんだから私も何か買おうかな。」
白山「そうだね。私、消しゴムとか入れる小物入れがほしいなあ。」
熊野「それでしたらこちらに。」
白山「わー!可愛いー!」
(白山、小物入れを選び始める。)
三河「店長さん店長さん。」
熊野「はい?」
三河「レジの横に置いてあるあの小物入れは売り物じゃないんですか?」
熊野「はい。あれは私の宝物ですので、売り物ではありませんね。」
三河「へぇ〜。そんなに大切なものなの?」
熊野「はい。命と同じくらい…というか命そのもの?ですかね。」
三河「ふーん…」
(白山、どれを買うか決める。)
白山「これにきーめた!」
熊野「おやおや、白山さんはセンスが良いですねぇ。」
白山「えへへ。」

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