その鬼の火は朧げに

(そのおにのひはおぼろげに)
初演日:0/0 作者:MaRu
その鬼の火は朧げに

【登場人物】
●辻風香(ツジフウカ)♀ 主人公。女子高生。
●辻颯天(ツジハヤテ)♂ 風香の兄。病院に通う引きこもり。
●吉備太一郎(キビタイチロウ)♂ 風香のファン。「アヤカシ同好会」の会長。
●浦部葵(ウラベアオイ)♀ 風香の親友であり、良き理解者。
●狛井亮太(コマイリョウタ)♂ 葵の彼氏。とても男らしくない。
●坂田公彦(サカタキミヒコ)♂ 風香のクラスメイト。「鬼討ち」に所属する狩人。
●坂田桃花(サカタモモカ)♀ 公彦の姉。盲目。
●上野先生(ウエノ先生)♀ 風香の担任の先生。
●時雨(シグレ)♀ 気違い娘。

【第1章】

舞台上に照らしだされる辻風香と浦部葵。

葵   昔々、とある山奥に、お爺さんとお婆さんが住んでおりました
風香  いえ、町内の一軒家に住んでいます。兄との2人暮らしです
葵   お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯しに行きました
風香  いえ、父さんは単身赴任中です。母さんも仕事で海外にいます。兄はニートです
葵   お婆さんが川で洗濯をしていると、川上から大きな大きな桃が…
風香  いえ、桃はキライです
葵   桃を割ってみると、中から元気な男の子が…
風香  だから、桃キライなんです。歯に詰まるのがちょっと…
葵   ノリ悪いなー風香は!
風香  だって、何一つ合ってないし…あのさぁ他己紹介の意味わかってる?
葵   わかってるって!言ったじゃん。私に任せてって
風香  任せた結果、なんで「昔々」になるかな
葵   普通にやったってつまんないじゃん!
風香  普通でお願いしたいんだけど
葵   だって風香普通じゃないもん!!
風香  …確かにね
葵   ちょっと…そこツッコんでほしかったんだけど
風香  いや、やっぱいいよ葵。私自分でやるわ
葵   えぇ〜
風香  えぇ〜じゃないから。ありがと

 葵、照明から外れる。

風香  えっと…辻(つじ)風香(ふうか)といいます。「辻」に「風」が「香る」と書いて辻風香です。よく辻風(つじかぜ)香(かおり)と間違われます。
ここは艮(ウシトラ)島です。いわゆるド田舎の孤島です。日本地図で言うと…あ〜…とにかく端っこの島です。人口は…2、3千人くらい…だったかな。かろうじて村ではなく町です。つい最近、ハンバーガー屋さんができました。「ハンバーガー・ドナルド」っていう個人経営の店です。もちろんマクドナルドとは何も関係ありません。つい最近までスターバックスは架空の店だと思っていました。
    学校は、意外と普通です。生徒数は少ないですが、普通の学校です。友達もちゃんといます
葵   (再び出てきて)私でーす!!浦部葵と申しまーす!!
風香  あいつは馬鹿です。気にしなくていいです。えっと…彼氏はいません
葵   私はいまーす!!
風香  馬鹿は気にしなくていいです
葵   紹介しまーす!私の彼、狛井亮太君です!!ほら、亮太!

 葵は狛井亮太を照明に引っ張り込む。

亮太  こ、狛井です…どうも…
葵   ちょっと何緊張してんの?
亮太  だ、だってあの…
葵   彼すごいんです!勉強は何でもできるんです!勉強以外何もできません!
亮太  葵…
葵   でもそこが好き!
亮太  あ、ありがと
風香  馬鹿二人はおいといて、話を戻します。担任は上野先生で、現代文を教えています。優しくていい先生です
葵   ウッソー課題忘れたら超きびしいよね?
亮太  葵怒られてたもんね
葵   しかも2週連続(笑)
風香  うっさいお前ら!帰れいい加減!
葵   えぇ〜
風香  帰れ早く!
葵   じゃあ何かあったら呼んでね〜ガンバ

 退場する葵と亮太。
 それと同時に登場する辻颯天。

颯天  風香
風香  あ…私の兄です
颯天  おかえり
風香  ただいま。病院には行った?
颯天  ちゃんと行ったよ
風香  そう…ご飯、準備するね
颯天  ありがとう
風香  何か言ってた?
颯天  何?
風香  だから先生。お医者さん
颯天  特に何も
風香  …そう
颯天  風香
風香  何?
颯天  学校は…楽しい?
風香  …まぁ、普通かな
颯天  そうか
風香  隠し事に隠し事を重ねて生きる。本当を本当のまま伝えることなく、偽りながら生きる。相手が何なのか、自分が何なのかを見つめることを避け、何事もなく振る舞う…だって、この世界は…この世界には…

 場面が切り替わる。
 学校、風香の教室では坂田公彦が表彰されている。

上野  表彰状、坂田公彦殿。あなたは鬼討伐団体「鬼討ち」での活動により、町の治安維持に貢献いたしました。その功績を讃えここに表彰致します。本当によく頑張りました!
公彦  いえ、人として当然のことをしたまでです
上野  皆さん知ってのとおり、坂田君は鬼討ちに所属して、鬼から皆さんを守ってくれています。なかなかできることではありません。拍手を送りましょう!

 パチパチパチ…と、情けない拍手。

上野  では皆さん、終業式も終わりました。明日から待ちに待った高校最後の夏休みに入ります。羽目を外したいところですが、あくまで高校生であるということを忘れることの無いように!特に、進路報告書を提出していない者は夏休み中面談が控えているので、忘れることの無いように。いいですか辻さん?
風香  …はい

 そこに、サイレンが鳴り響く。
上野先生は廊下へ顔をだし、他の教員から話を聞く。

上野  え〜皆さんよく聞いてください。「鬼警報」が出されました。これから一斉下校となります

 キャアキャアとざわつく教室。

上野  はいはい騒がない!「鬼警報」の意味分かってますか?危険なので絶対家から出ないこと!調子に乗って外に出て、鬼に襲われるなんてことのないように!
公彦  先生、俺、お先に失礼します
上野  あぁ、坂田君、頑張って!みんなは下校の準備を!それから、良い夏を!

 退場する公彦と上野先生。

葵   はぁ〜あ、やっと夏休みになったと思ったら鬼警報…ダルッ!
風香  まぁ早く帰れるんだからいいんじゃない?
葵   家出れないんじゃ意味ないじゃん!鬼とか何なんだし!
風香  …
葵   亮太ーどうする?
亮太  え?
葵   ドナルド行く予定だったじゃん
亮太  あ〜…どうしよっか
葵   はぁ、これだもんな
亮太  あ、ご、ゴメン…
葵   男はすぐに謝らない!
亮太  あぁ、ゴメン!あっ…
葵   これだもんな…

 再び照らし出される風香。
そこに見慣れぬ男・吉備太一郎も紛れ込む。

風香  そう、この世界には、「鬼」が当たり前のように存在しています。昔話でよく聞くような、頭に大きな角があって、赤鬼とか青鬼とかがいて…ってわけではありません
太一郎 そうそう!(シャッターを切る)
風香  人間とほとんど変わらない、同じような姿をしています。違うところは眼の色と、力の強さだけ
太一郎 興味深い!(シャッターを切る)
風香  この前、鬼討ちに仕留められた鬼を見ました。正直…人だと言われてもわからなかったと思う…。これを鬼だからといって、平気で討ち取ってしまう人間…何が違うんだろう…鬼と人…人と鬼…
太一郎 ファンタスティック!(シャッターを切る)
風香  あの何なのさっきから!?
太一郎 ぼ、僕?
風香  あんた以外いないでしょ!?何カメラなんか持って…返してよ!
太一郎 返してって、僕のだよ!
風香  私の写真撮ってたでしょ!何なのあんた、ストーカー!?
太一郎 ち、違う!僕は…あの…ファンだよ!
風香  …ファン?
太一郎 そう!
風香  誰の?
太一郎 君の!
風香  誰の?
太一郎 だから君の!
風香  私の!?
太一郎 さっきからそう言ってんじゃん!
風香  …あの…え、何?ファンて、何それ?
太一郎 ファンはファンだよ!
風香  …私のことが好きってこと?
太一郎 好きって言うか、ファン!
風香  ゴメン、全然意味わかんないんだけど
太一郎 あっ、申し遅れたね!僕、「アヤカシ同好会」会長の吉備太一郎って言います!
風香  何て?
太一郎 吉備太一郎!変な名前だってよく言われるよ
風香  いや、そっちじゃなくて…「アヤカシ同好会」?
太一郎 そう!!興味ある感じ!?
風香  いや、全然
太一郎 アヤカシ同好会っていうのは、この世の森羅万象にかかわっているアヤカシ、つまり、妖怪たちの存在について探求する会なんだ!
風香  妖怪たち…?
太一郎 はいコレ!
風香  何コレ?
太一郎 会員規約と入会届!
風香  いやいや、私入るなんて…
太一郎 特に僕が気になってるのは、「鬼」!!
風香  ぜんぜん聞いてないし
太一郎 鬼っていうのはすごい力を持ってるんだ!鬼は太古の昔から日本人とともに生きてきたけど、その恐ろしい姿から人間から敵対視されてしまうんだ。でも本当は誰よりも純粋な気持ちを持ってるって、僕にはわかってる!だから君に興味がるんだ!
風香  どういうこと?
太一郎 君の名前…辻風(つじかぜ)香(かおり)、だよね?
風香  違う
太一郎 あれ?
風香  区切るとこが違う。辻風(つじかぜ)香(かおり)じゃなくて、辻(つじ)風香(ふうか)だから
太一郎 そう!その眼!実は、学校で君と眼が合った時、なんかこう…ゾクッとしたんだ!人に睨まれただけじゃああはならない!女の子とは思えない、まるで肉食獣にでも出くわしたかのようなあの威圧感!まさに現代に生きる鬼だと僕は踏んだわけだ!
風香  あの…自分ですごく失礼なこと言ってるってわかってる?
太一郎 え?
風香  つまり私は目つきが悪くて女らしくもない、化け物じみた女だってこと?
太一郎 ん〜…悪く言えばそうなっちゃうかな…
風香  私帰る
太一郎 ちょ、ちょっと待ってよ!!
風香  (睨む)
太一郎 うぉ〜それ!ゾクゾクするよ!!
風香  あんたおかしいんじゃない?
太一郎 よく言われるよ!

 去ろうとする風香。ついていく太一郎。

風香  ごめん、なんでついて来るの?
太一郎 ついてっちゃダメ?
風香  いいわけないじゃん
太一郎 一ファンとして気になるからさ!どこに住んでるのか!
風香  警察呼ぶよ?
太一郎 ケータイ持ってないのに?知ってるよ!ケータイ持ってないの
風香  ぶん投げるよ?
太一郎 ぶん投げる?…何を?
風香  あんたを
太一郎 誰が?
風香  私が
太一郎 まさか!そんなことできるわけ…

 風香は太一郎をぶん投げる。

太一郎 ああぁぁ!!!
風香  ついてこないで

 風香退場。暗転。


【第2章】

 帰り道。風香の家のすぐ前。
 謎の少女・時雨が毬つきして遊んでいる。

時雨  おかえり!
風香  …
時雨  ねぇ、おかえり!
風香  …

 風香の後をつけてくる太一郎。

太一郎 君の妹?
風香  うわぁ!?ちょっと、何でいんの!?
太一郎 ついて来たから
風香  マジなんなの!?私鬼でもないしナントカ同好会にも興味ないしファンとか困るから関わらないで!!
太一郎 大丈夫!家の場所がわかったらすぐ帰るから!
風香  だからそれストーカーだっつーの!!
太一郎 あっ!ここが君の家!?なるほど!昔ながらの古風な家!ますます鬼っぽい!(シャッターを切りまくる)
風香  人の家パシャパシャ写真撮らないでよ!あんたマナーとかモラルとかないの?
太一郎 えぇ〜、人のことぶん投げるような子にマナーとかモラルとか言われたくないんですけど!
風香  蹴っ飛ばすよ?
太一郎 え?
風香  本気で
太一郎 ちょっと待って。わかった僕が悪かった。冷静に…あ痛ぁぁぁッ!!!

 痛がる太一郎に時雨が近づく。

時雨  ねぇ、オニギリ持ってる?
太一郎 え?
風香  あぁ…気にしなくていいから

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