そして少女に別れを告げる

(そしてしょうじょにわかれをつげる)
初演日:2018/9 作者:亀山真一
そして少女に別れを告げる

登場人物
ユキオ 溺愛していた妹の死因を探っている。
レナ ユキオの妹、急性心不全で亡くなる。
タカフミ ユキオの親友でレナを可愛がっていた。
マユミ レナの友達、ユキオに惚れている。
リサ レナの友達、少々こじらせている。
悪魔 男役も可、その場合は口調と(絵面が嫌だったら)契約の合図を変える。


一場

何もない舞台にユキオが呆然と立ち尽くしている。

レナ(声) 助けて……お兄ちゃん、助けて
ユキオ レナ?

辺りを見回すも誰もいない。「何か」に気付いてユキオは力なく崩れ落ちる。

ユキオ 許せない……絶対に許さない
悪魔 誰を、許せないの?

ふらりと悪魔が現れる。

悪魔 あなたは誰を許せないのかしら?

少しずつ近づいてくる悪魔とじっと魅入られているユキオ。

悪魔 あなたの復讐、あたしが手伝ってあげる

悪魔が口付けでもするかのようにユキオの顎を持ち上げて、暗転。

二場

とある高校の資料室、立っている男子二人(ユキオとタカフミ)と座っている女子二人(マユミとリサ)という構図で生徒が四人。

ユキオ なあ、教えてくれないか。レナを殺したのはどっちだ?

沈黙、ようやくマユミが震える声で口を開く。

マユミ 意味が、まったく
ユキオ 何で答えられないかな。こんな簡単な質問に

ユキオが女子二人を睨みつける。二人は「何が起こっているのか分からないことへの恐怖」に震えている。そこへタカフミが割って入る。

タカフミ まあまあ。まだ殺しと決まったわけじゃないんだから
ユキオ は? そもそもはタカフミが
タカフミ うん。僕はね、そうだと思ってるよ。この状況には悪意を感じる
ユキオ だったら
タカフミ でも、ユキオのやり方もだいぶタチが悪くないかい?

タカフミが女子二人の方に視線を移し、そこそこ笑顔を交えて話し出す。

タカフミ こいつのことは責めないでおくれよ。大事な妹を殺されたとあっちゃ、取り調べが多少強引になっても仕方ないだろう?

マユミとリサがお互い顔を見合わせる。

マユミ 殺されたってどういうことですか?
リサ だってレナは……発作を起こしたんですよね? 急性心不全とかなんとか
タカフミ 死因はね、この際問題じゃないんだよ

タカフミがグルッと部屋を一周しながら(抽象の舞台の場合、ユキオとタカフミは部屋の状況が分かる動きを積極的に取り入れて下さい。特に出入口が引き戸だということは分からせておきたいので)。

タカフミ ここ、息苦しいと思わない? 資料室なのに資料が収まりきらないって話だよ
ユキオ 唯一の窓は小さな換気用。たとえ手が届いたとしてここからの脱出は不可能
タカフミ つまり、現場は完全に密室だったわけだ
リサ 密室なら
タカフミ 殺人は不可能だね、一般的には。そもそもこの密室は内側から出入りができないのであって、外からは簡単に開くんだ。そしてレナちゃんは――
ユキオ レナは閉所恐怖症だった
マユミ え?
ユキオ この息苦しい密室そのものが、レナにとっては凶器に成り得たんだ
タカフミ レナちゃんがパニック障害を起こしたことが死因に直接関わっていたかどうかは分からない。でも閉所恐怖症の彼女をこんな部屋で一人にするなんて、その時点でかなり悪質だ。僕らはこれを、いわゆる「未必の故意」の殺人と捉えている。ここまでいいかい?
ユキオ さあ、レナを殺したのはどっちだ?
マユミ でも閉所恐怖症なんて……そんなの全然知りませんでした
タカフミ ってことは、君が彼女を閉じ込めたのかな?

ユキオの視線を感じて彼に訴えるように。

マユミ 違います! 私じゃありません。私はただ――

マユミの回想(明場転、なんなら照明変化だけでレナが入ってくればいいかと)。

レナ ええ! マユミ、お兄ちゃんのことが好きなの?
マユミ ちょっと、そんな声を大にしなくても
レナ あ、ごめん
マユミ それにまだ好きとかそう言うんじゃ
レナ はいはい、照れない
マユミ レナ!
レナ そっか、お兄ちゃんかぁ
マユミ で?
レナ ああ、お兄ちゃんに彼女? いないよ
マユミ ホントに?
レナ あの人、思ったことがそのまま表に出るからね。妹に隠し事とかムリムリ
マユミ 良かった
レナ やっぱりお兄ちゃんに彼女がいたら困るわけ?
マユミ え……もう、意地悪
レナ どうする? ウチの兄も結構性格悪いかもよ
マユミ それはどうかな。だってレナは、先輩に甘やかされて育った結果こうなったんでしょう?
レナ うーん、確かに過保護ではあるけど、甘やかされてはないと思うよ。去年とか「俺と同じ高校に入れ」って相当勉強させられたし
マユミ へえ
レナ そこは女子校じゃないんだってちょっと思ったけど、まあ女同士の方が怖いときゃ怖いしね
マユミ ……ねえ、先輩私のことどう思ってるのかな?
レナ ええ? 知らないよそんなこと
マユミ ウソ、さっき思ったことが表に出るって言ってたじゃない
レナ うっ……でもホントに知らないよ? 別にお兄ちゃんの一挙手一投足を見てるわけじゃないんだから
マユミ じゃあ、ね、ちょっと探ってみてくれない? そしたら私もタカフミ先輩にそれとなく聞いてみてあげる
レナ ええ?
マユミ 先輩がレナのことどう思ってるか
レナ ちょっとやめてよぉ
マユミ レナもお兄さんに負けず劣らず素直よね
レナ タカフミくんはいいの。分かった、お兄ちゃんに関しては協力するから余計なことしないでよね

レナが捌けて――回想終了。

マユミ 私はただ、レナに相談があって。秘密の話だったからひと気のない場所でって
ユキオ で、閉じ込めたの?
マユミ そんなわけないじゃないですか! そうだ、ユキオ先輩あの日の放課後、レナから呼び出されたりしませんでした?
ユキオ は、俺?
マユミ ……なかったんですか
ユキオ ないよ。何で俺が
マユミ そんな

突然、リサが嘲笑的に吹き出す。視線を集めてしまい、

リサ ごめんなさい。ちょっと……馬鹿みたいだったから
ユキオ はあ?
リサ いや、レナのことじゃなくて。マユミがこの期に及んでお兄さんのこと気にしてるから。あんたが直接先輩を呼び出して、さっさと告白して振られていればこんなことにはならなかったんじゃないの?
マユミ 振られて……
リサ そこ? これじゃ「馬鹿みたい」じゃなくて本当に馬鹿ね
タカフミ 待って。こんなことにはならなかったって、どういう意味?
リサ 相談とか秘密の話とか、意味は分かりますよね? わざわざお兄さんをこんなところまで呼び出したんだから、マユミと二人きりにしてあげるつもりだったんでしょう
タカフミ でもユキオは聞いてないんでしょ?
ユキオ ああ
マユミ 私も。私も聞いてないよ
リサ だから、そこで行き違いが起こったんじゃないの? 知らないけど
タカフミ ……知ってるね

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