春隣-はるとなり-

(はるとなり)
初演日:0/0 作者:U.
「春隣 -はるとなり-」

・ハル(はる・女)
・新藤薫(しんどう かおる・男)
・駒木つぐみ(こまき つぐみ・女)
・篠原純一(しのはら じゅんいち・男)
・野中滋(のなか しげる・男)
・公原海(きみはら うみ・女)
・野嶋晃一(のじま こういち・男)
・神崎(かんざき・男(女でも可))
(・男(→薫と兼役))

<補足>
 舞台中央の奥の方にこたつ。居間のような空間。
 照明の範囲とかで屋外のシーンも表現できれば、っていう感じです

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜1〜

 つぐみ、純一、滋、海の4人がこたつを取り囲んでストップモーション。
 舞台手前のほうで、スマホを耳に当てているハル。
 上手と下手に野嶋と神崎が立ち、それぞれファイルを開き、そこに目を落としている。
 野嶋、神崎にスポットライトが当たる。

野嶋:一、ロボットは人間に危害を加えてはならない。
神崎:一、ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。
野嶋:一、ロボットは自己を守らなければならない。

 野嶋、神崎、同時にファイルを閉じる。

神崎:人の心を持つ
野嶋:「アンドロイド」、か・・・
神崎:我々はとんでもない欠陥品を作り出してしまったようだ。
野嶋:我々はとんでもなく悲しいものを生み出してしまったなぁ。

 野嶋、神崎、はける。二人の照明消える。
 雨の音。ハルにスポットライトが当たる。

ハル:ごめんなさい。・・・私もう決めたんです。帰れないんです。
ハル:このままでは、近いうちにノジマに回収されて、スクラップにされるんでしょう?
ハル:やっぱり、庇ってくれる気は無い・・・ですよね。分かってましたよ、私、所詮アンドロイドですし。本物の家族でも、ないですし。・・・でも実を言うと、ちょっとだけ期待しちゃったんです。10年間一緒に過ごして来て、もしかしたら、って。
ハル:ダメですね、私。人間であるあなたに逆らって、逃げ出して、挙句の果てに「もっと人から愛されたかった」なんて考えてしまっている。アンドロイド失格です。
ハル:これが最初で最後ですから・・・一度だけ、今回だけ、私の身勝手を許してください。
ハル:・・・・・さようなら。

 ハル、スマホを切って地面に置き、思い切り踏みつける。(SE:スマホが壊れる音)
 大きく深呼吸。

ハル:よ、よーし!これで私は、晴れて自由の身。そう、私は生まれ変わったんだ!いくら無一文で寝る場所も無いからって、私はそう簡単にめげたり・・・・・はぁーーー・・・

 深いため息をつく。

ハル:これからどうしよっかなー・・・

 薫が近づいてきて、自分が差していた傘にハルを入れる。
 ハル、驚いて薫の方を見る。

ハル:え?
薫:あ、すいません、いきなり。でも、こんな雨の中にずっと居たら風邪引きますよ?
ハル:そ、それはお気遣いどうも。
薫:何だか一人でブツブツ言ってるみたいだったし、このまま放っといたらヤバいかなって。
ハル:はい?!なんですかそれ。
薫:あはは、冗談ですよ。
ハル:大丈夫です。私こう見えて丈夫なほうですし、全然寒くないですし!
薫:大丈夫じゃないですよ。よかったらこれ、使ってください。俺の家すぐそこなんで、走って帰れば・・・

 薫、傘を渡そうとする。

ハル:そんな、悪いですよ!返せるかどうかも分からないのに。
薫:気にしないでください。どうせ安物ですから。
ハル:でもほら、私もうすでにびしょ濡れだし、今更っていうか
薫:そういう問題じゃなくて・・・ん?

 薫、壊れたスマホを拾う。

ハル:あ。
薫:うわ、見事に壊れてますね・・・
ハル:ちょ、ちょっと手が滑って落としちゃって。はははは。
薫:そうでしたか。もしかして、家に連絡できなくて困ってたとか?俺の携帯でよければ貸しますけど
ハル:いえ、あの、本当にいいんです。連絡も何も、そもそも私今夜は帰る所が無いので。
薫:はい?
ハル:ま、まあ、家出ってとこですかねー。ちょっと色々あって、こっちも我慢の限界だったっていうかー。

 ハル、誤魔化すようにへらへら笑う。

薫:ぶっ、家族と喧嘩して家出って。小学生じゃあるまいし。
ハル:別に家族っていう訳じゃないんですけど。ていうか、そんな馬鹿にしないでくださいよ。
薫:はは、すいません。でもほんとに、帰らなくて大丈夫なんですか?
ハル:いいんです。あなたが思ってるみたいな衝動的な家出とは違うんで!これはガチなやつなんで!!
薫:そーですかー。
ハル:信じてないですよね。
薫:あ、うち来ます?
ハル:へ?
薫:行く所無いんですよね?だったら、新しい部屋が見つかるまでうちに来ません?
ハル:・・・やだ、何企んでるんですか。
薫:は?
ハル:若い女性を家に招き入れるなんて・・・
薫:誤解です!第一、他の住人も居ますし。
ハル:あ、なんだ。すみません、てっきり一人暮らしなのかと。
薫:まあ、下宿っていうか、ルームシェアっていうか。一応女の子も居るんで、そこは安心してください。
ハル:でも、だったら尚更、いきなり押しかけたりしてご迷惑なんじゃ・・・
薫:全然。そんなの気にするような連中じゃないんで。ちょっと騒がしいですけど。
ハル:そう、ですか。では・・・お言葉に甘えて。
薫:行きましょう。本当に風邪引きますよ。
ハル:あの
薫:はい?
ハル:名前を教えてください。
薫:あ、そうでしたね。薫って言います。新藤薫。あなたは?
ハル:私、ハルって言います。えぇっと・・・名字は、無いんですけど。今のところ。
薫:名字が無い?あー・・・そうっすよね。家出したんですもんね。名乗りたくないっすよね、はははっ
ハル:な、なんで笑うんですか。
薫:いーえ。「ガキだなー」なんて、別に思ったりしてませんよ?
ハル:ひどいです・・・!大体、名乗りたくないとかじゃなくて、私本当に
薫:はいはい、行きますよー。
ハル:人の話聞いてます?ねえ!

 薫とハル、はける。

〜2〜

 地明かりつく。後ろの4人ストップモーション解除。

つぐみ:はー美味しかったー。海の手料理、久々だったー。
滋:海さんって、本当に料理上手ですよね。
海:えへへ、それほどでもー。
純一:ほんとほんと。つぐみとは大違いだよな。
つぐみ:なんでそこで私の名前が出てくるわけ?
純一:そういや、薫は?
つぐみ:ちょ、誤魔化すな!
滋:薫くんなら、ちょっと研究室に残るから遅くなるって言ってましたよ。
海:ほへー。熱心だよねえ、かおるんは。
純一:物好きだよなー。薫のいる研究室ってさ、機械工学科とかいう訳わかんねーとこだろ?
滋:物好きって・・・
つぐみ:薫もあんたにとやかく言われたくないと思うけどね。
海:かおるん、傘持ってるかな。雨けっこう強くなってきたけど。
つぐみ:うわ土砂降りじゃん。夕方から降るって言ってたもんね。
純一:あーもう7時か。滋、リモコン取って。
滋:あ、これですか?はい・・・
海:えいっ

 海、滋からテレビのリモコンを奪う。

滋:う、海さん?
純一:何が「えいっ」だよ!リモコン返せ。
海:駄ぁ目。あたし7時から「魔女っ子もえたん」見るんだもん!
純一:はぁ?いい歳こいてお前なあ
海:夢見る少女に歳なんて関係ないのだ!
滋:うーんと、大学生を少女と言い張るのはちょっと・・・
海:なぁに?しげちゃん。
滋:な、何でも。
つぐみ:あっははは。いいねぇ、夢見る少女か!私もそれ名乗っちゃおうかな。
純一:へっ、若作りしてんじゃねえよババア。
つぐみ:誰がババアだってぇ?
純一:っと、ついつい本音が
つぐみ:殺す
純一:おー、やるかぁ?クソババア。
つぐみ:ブッ殺す!
海:ジュンちゃん、つぐみん、落ち着いてー。
滋:そ、そうですよ!この前みたいに壁でも壊したら、また大家さんに怒られますし・・・
海:あ!もえたん始まっちゃう。

 海、テレビをつける。

純一:コラ海!てめえ何どさくさに紛れてチャンネル権独り占めしてんだよ!男は黙って野球中継だろーが。

 純一、リモコンを奪ってチャンネルを変える。

海:あたし女だもーん。

 海、リモコンを奪ってチャンネルを変える。

つぐみ:あ、ちょっと!私歌番組見たい。

 つぐみも加わり、3人でリモコンを奪い合う。

つぐみ:あ、コラ待て純一!
純一:あっぶね!目は反則だろ目は!!
海:くらえ!もえもえビーーーーム!!
滋:ちょっとみなさん、落ち着いてくださいよぅ・・・

 薫がハルを連れて帰ってくる。

ハル:おじゃまします。
薫:ただいまー・・・って、何やってんだお前ら。
滋:か、薫くん、いい所に!なんとかしてくださいよこれ。
薫:は?んな事言われても・・・
ハル:とうっ!!
つぐみ:え?
純一:あ?
海:ほよ?

 ハル、飛び入ってリモコンを軽々と奪い、3人に向き直る。

ハル:みなさん、喧嘩はいけません!

 間。

一同:おおーーーー!

 拍手が沸き起こる。

海:すごーい、かっこいー!
つぐみ:・・・油断した。
純一:くっそ、やるなぁお前。
滋:あぁ良かった、家が壊れるかと・・・
ハル:えっへへへ・・・

 ハル、照れ笑い。

海:うーんと、ところでかおるん。
薫:ん?
海:この人だあれ?
一同:・・・あ。

〜3〜

 照明変化。
 音楽とか、オープニングっぽいワンクッションあるといいかも。

海:ハルちゃんっていうんだ!
ハル:はい、とある家の・・・まあ、使用人みたいな感じだったんですけど、ちょっと事情があって飛び出してきちゃいました。
海:メイドさんだぁ!萌えー
純一:おめーはちょっと黙ってろ。
海:しゅん・・・
薫:なるほど、そういう事だったんですか。
滋:「だったんですか」って・・・薫くん、知らずに連れてきたんですね・・・
薫:いやだって、なんか困ってるっぽかったし。こんな雨の中傘もささずに突っ立ってたからさすがに心配になって
純一:ナンパしたのか。このやろ、この俺様を差し置いて。
薫:は?!人聞きの悪いこと言うなよ。
つぐみ:そうそう。薫は純一みたいなチャラ男とは違うんだから。
純一:何だよチャラ男って。
つぐみ:やだ、つい本音がー
純一:あぁ?!
滋:もう、すぐそうやって喧嘩する・・・
ハル:あはは。賑やかなところですね。
薫:賑やかすぎて困るぐらいですけどねー。あ、よかったらこれ使ってください。

 薫、ハルにタオルを渡す。

ハル:ありがとうございます。
滋:そういえば、こっちの自己紹介がまだでしたね。はじめまして。野中滋です。
海:公原海でーす。
つぐみ:駒木つぐみ。
純一:篠原純一だ。
薫:待て待て、そんないっぺんに自己紹介しても
ハル:滋さん、海さん、つぐみさん、純一さん、それに薫さんですね。
海:おー、パーフェクト。
ハル:みなさん、学生さんなんですか?
海:うん。みんな別々の大学だけど。
滋:生活費とかの節約のために一緒に暮らしてるんです。
つぐみ:なんつーか、もう兄弟みたいな感じだよね。
ハル:すみません、そんなところにいきなり押しかけたりして。
純一:んな細かい事気にするなよ。
海:そうだよぉ。困った時はお互い様だし、賑やかな方が楽しいし、好きなだけ居れば良いんだからぁ。

 海、ハルに抱きつく。

ハル:わっ?!え、えっと、あの・・・
薫:こら海、ハルさん困ってるだろ。
つぐみ:ごめんね、この子いつもこんな感じだから。
海:へへへー。
滋:とりあえず、大家さんに話つけに行かないとですね。
薫:そうだな。
ハル:あの、みなさん!!
純一:ん、どした?

 ハル、深々と頭を下げる。

ハル:ありがとうございます。お世話になります・・・!あの、私、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、ちゃんと働いて生活費も入れますし、家事とかも、極力お役に立てるように頑張りますので、何卒・・・!
純一:お、おう、待て待て待て。
つぐみ:やめてよ堅苦しいなあ。
滋:そうです。頭を上げてください。
海:ねーねー、ハルっち。
ハル:ハルっち??
薫:気にしないほうが良いっすよ。こいつすぐ人に変なあだ名つけたがるんで。
海:変じゃないもん!てか、かおるんもだけどさ、その敬語で喋るのやめようよ。
純一:そうそう。見た感じ歳近いじゃん俺ら。
薫:あー、うん、それもそうか。・・・じゃあ改めて、(ハルに向かって)よろしく、ハル。
ハル:え、っと・・・でも・・・


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