彼と別れるのに協力してください

「彼と別れるのに協力してください」

全4人(女1:男2:その他1)
川崎充(かわさきみつる)45歳 オッサンレンタルに登録している男。
太田ちさと(おおたちさと)18歳 女子高生
西山光太郎(にしやまこうたろう)18歳 高校生
店員


川崎充、季節のあいさつを交えながら観客に話し始める。

川崎「どうも皆さん、初めまして。今日はお集まりくださって、ありがとうございます。えー、毎日毎日、仕事に勉強にめまぐるしいお時間を過ごされているかと思います。人生80年と言ったものの、私は中年も深まり、その折り返し地点もずいぶん前に過ぎたところ。……まだまだ先は長いですねぇ。この間の健康診断では私、尿検査でひっかかりましてね。プリン体。多すぎると痛風になるってやつです。亡くなった父が悩んでいました。それから私の晩酌はビールに焼き鳥より、プリン体カットの発泡酒と枝豆に。……まあ別に、こんなことどうってことないんですけど……気付けば、何もかもを……好きにできない年齢になっていることに気付いたんです。ええ、いや、自分でも若さへの諦めが悪いように思います。こうみえて若い頃は…………。やめておきましょう、そろそろ依頼人がくる時間です。あぁ、副業をしているんです、私。ご存知ですか?『オッサンレンタル』」

川崎の携帯が鳴り、出る。
太田ちさと、上手から登場。

ちさと「ああっもしもし」
川崎「もしもーし」
ちさと「今、喫茶店につきました」
川崎「はい、すでに入ってますよ」
ちさと「あ」
川崎「どうも」

双方、ケータイを耳にあてたまま。

ちさと「オオオ、オッサンレンタルのオッサンさんですか(緊張している)」
川崎「はい、オッサンレンタルのオッサンです」
ちさと「おおお、オッサンさんは私のオッサンさんで間違いないですか(緊張している)」
川崎「はい、おそらくあなたのオッサンさんで間違いないかと思いますが(つられて緊張する)」
ちさと「(遮って)そうですかオッサンさんよろしくお願いします」
川崎「とりあえず、座りましょうか!? 座って、話をしましょう?」
ちさと「あぁ、はい……!」

双方、電話を切る。

川崎「私、川崎充と申します、45歳です」
ちさと「あ、太田ちさとです、18歳になります」
川崎「ああどうもご丁寧にありがとうございます」

店員が水を運んで置いていく。

店員「いらっしゃいませ〜」
川崎「重ね重ねではありますが、本日はご依頼ありがとうございます。えー、内容は、人生相談に乗ってほしい、とお聞きしていますが、」
ちさと「ウソなんです」
川崎「え?」
ちさと「ごめんなさい、ウソついて依頼しました」
川崎「……ウソ?」
ちさと「今日一日だけ、カレシのふりをしてください」
川崎「え、え。ごめんなさい、どちらの?どちらのカレシ?」
ちさと「……私しかいないじゃないですか」

間。

川崎「……(同時に)お父さんじゃなくて?」
ちさと「……(同時に)カレシです」
川崎「いや、いやいやいやどうみても三十は離れてるでしょうよ。無理があるんじゃないかな?」
ちさと「なんか、お金持ってるオジサンって設定で」
川崎「援助交際じゃないんだから」
ちさと「ほんとに、お金ならちゃんと払いますんで」
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