金沢君

(かなざわくん)
初演日:2010/7 作者:仲原時雨丸
金沢君
    仲原時雨丸

金沢君   主人公。今は自営業をしている実家に戻っている。演劇をしており、演劇をやっ  ていた頃が懐かしい。
主宰   主人公が所属していた劇団の主宰。亡くなったと言われていたがた・・・。
父親   主人公の父親。演劇をすることを反対している。
母親   主人公の母親。演劇をする事に否定的ではないが、肯定的でもない。
団女   元からいた団員。口うるさい女。
団男   元からいた団員。どっかボケている。
団女1   新たな団員。天真爛漫な女。
団男2   勢いだけの男。野望とスケールは大きいが様々なものがチッポケな男。
団女2   新人団員。
少女   謎の存在。

    何も無い空間。
    あるとすれば、数個のダンボールだけで後は不要だ。
    必要なものは持ち込めばいい。
    何も無い事が重要であり、何かあるとは、彼にとって大切なものが存在していることになる。
それが無いことが問題であり、それがあればここに存在する意義も無い。
    やがて金沢君が現れる。
    突如鳴る携帯。携帯を取る金沢君。
   
金沢君   もしもし。はい。お久しぶりです。ええ。僕は。そちらは。えっ・・・死んだ。・・・本当ですか。そんな・・・事故ですか。え、餅を喉に詰まらせて・・・。正月じゃないでしょ。え、お金が無くて餅食ってて・・・。

    金沢君何となくありそうだと納得してしまう。

金沢君   まぁ分かりましたよ。え、葬式・・・。それはちょっと。ええ、また 時間があれば。ええ。はい。それでは。

    金沢君電話を切る。

金沢君   死んだ・・・。あの人が・・・。まぁ、そうなんだよな。芝居をやってるって。そんなもんだろ。

    父親登場する。

父親   誰か死んだのか。
金沢君   いや。別に。
父親   隠すことじゃないだろ。どうせ前の芝居の誰かなんだろ。
金沢君   え。
父親   聞こえてた。
金沢君   何が。もしかして。

    金沢君ダンボールを防衛する。

父親   違う。そこに何かあるのか。
金沢君   い、いや別に・・・。

    父親、ダンボールをあけようと近づく。
   
金沢君   いや、な、何も無いって。
父親   そういうことをいうやつが一番怪しい。

金沢君   いや、何も無いって。
父親   その言葉があやしい。

    もみ合いになる父親と金沢君。
    やがて父親が勝利し、ダンボールの中身を見ようとする。

金沢君   やめて下さいー!
父親   止めろといわれると見たくなるだろ。

    父親悪意ある笑い声を上げながらダンボールをあけようとする。
    母親登場する。
    それまでは父親と息子は悪乗り位がちょうどいいでしょう。

母親   あの、何をしてるんです。
父親   もうすぐだぞふふふ。

金沢君、必死で抵抗するが、父親その抵抗を振り切ってダンボールを開けようとする。
    金沢君、母親の存在に気がつき手が止まる。

金沢君   あの。
父親   止めたって無駄だぞ。ほうら。
母親   何してるんですか。
父親   いいじゃないか。母さんにも内緒にしといてやるから。

    金沢君少しあたふたする。
    母親、父親を静かに見ている。

父親   観念したか。
母親   何をしてるんですか。
父親   わかってるだろ・・・か、母さん!いやちょっとあいつがな。俺は別に。そんなやましい事は一切。
母親   何も言ってませんよ
父親   いや、そういやそうだな。

    沈黙。

父親   そ、そんなことより母さんは何しに来たんだ。
母親   そりゃ、お客さんが呼んでるから。
父親   こいつ。

    金沢君立ち上がる。

母親   そんな訳無いのはわかってるでしょう。

    金沢君少しショックを受ける。

父親   こいつに任せとけよ。俺は大事な。
母親   これをあける事がですか。
父親   無論。息子の隠し事を暴くのは父親の仕事だからな。
母親   いえ、父親の仕事だけじゃないでしょ。それにそれだけが仕事じゃないでしょ。
父親   そりゃそうだけど、こいつにだってそろそろそういうことも。
母親   この前それでやらせてほしいっていったら、まだお前には早いって怒ったのはだれですか。
父親   そんな事いったっけ。
母親   いいました。それでも任せるというのなら私は止めませんけど。

    父親、金沢君を見て、ダンボールをみて少し迷った後。

父親   わかった。(ダンボールを見て)いい加減処分しろよ。

    父親、その場を後にする。
    金沢君、背を向けたたずんでいる。

母親   行ったわよ。
金沢君   うん。
母親   そんなに不満なの。
金沢君   いやそんな事は。
母親   でも、何かあったんでしょう。
金沢君   いや、別に。
母親   私はあなたの親よ。何かあったんでしょう。
金沢君   それは。
母親   言いたくなければいいのよ。じゃあ早く戻ってきなさいよ。

    母親そのまま立ち去ろうとする。
   
金沢君   主宰が・・・亡くなったって。

    立ち止まる母親。

母親   そう。やっぱりそんなものね。所詮は遊びだものね。先に辞めてよかった    じゃない。

    金沢君何かを言おうとするが言葉にできない。

母親   早く戻ってきてらっしゃい。仕事なんだから。

    母親そのままその場を後にする。

金沢君   そうじゃない・・・そうじゃない。

    そのままダンボールの元に駆けつけ、衣装を持つ。

金沢君   そうじゃない・・・。本当にそうじゃない・・・。

    崩れ落ちる金沢君。

金沢君   本当に・・・そうなのかな。

    衣装をぼんやり見つめる金沢君。

金沢君   懐かしいよな。この衣装。この時は僕は・・・。

    世界が変わる。
    どこからとも無く団男現れる。

金沢君   団男さん!
団男   その衣装いいかんじだねぇ。
金沢君   そうですかね。どうも僕は。
団男   いやいや、自分の趣味とかじゃないからね。ははははは。

    奇怪なポーズをとる団男。

金沢君   な、何してるんですか。
団男   いやぁ舞台が近くなるとねぇ。こうして(ポーズをとる)な。
金沢君   絶対おかしいですよ。それ。
団男   そうかなぁ。

    団女登場。

団女   何してるの。
団男   いや、別に。

    といいつつポーズをとる団男。

団女   いや、この人はほっといて。
団男   えーっ!
金沢君   ほ、ほっといていいんですか。
団女   それより君でしょ。君。
金沢君   え、僕。
団女   あたりまえでしょ!折角衣装貰ったのに、何ボーっとしてんのよ。衣装合    わせとかコーディネートとかいろいろあるでしょ。
金沢君   でも。
団女   折角、主宰が見つけてきてくれたのに。あの人だって暇じゃないのよ。
金沢君   僕だって。
団女   じゃあ聞くけど、君は何をしたの。何をしているの。何か出来るの。

    金沢君黙りこくる。

団女   返事も出来ないの。
団男   まぁまぁ。
団女   団男は黙っていてください。
団男   はい。

金沢君   ああ。

    団男頑張れのゼスチャー。
    金沢君ピンチ。

団女   聞いてるの。
金沢君   は、はい。
団女   返事はひとつ。
金沢君   はい。
団女   で、どうなの。

    団男フォーローのサインを送る。
    団女は気づかない。
    必死でサインを読み取ろうとする金沢君。
    団女おかしな様子に気がつき団男を見る。
    逆に変なポーズで意思疎通を取ろうとする金沢君。
    団女、それに気がつき、二人のよく見える位置に移動する。
    二人完全に沈黙する。

団女   で、どうなの。返事は。
金沢君   サイズはぴったりです。
団女   そうそれはそれは。

    団男、金沢君喜ぶが、それは長くは続かない。

団女   で、質問の返事は。

    団男、金沢君悩みだす。

団女   質問の返事は。え、おい!
金沢君   そ、それは。
団女   君はいつもそんななの。
金沢君   そ、それは。

    団男、頑張れと応援する。

金沢君   無理です。
団女   返事になってないでしょ!
金沢君   あわわわ・・・。

    金沢君、助けを求めるが、団男ご愁傷様のゼスチャーをする。

金沢君   そんなぁ。
団女   そんなこんなもないでしょ。
団男   ああ、そういえば主宰を迎えに行ってこなくちゃ。

    団男、そのまま逃げるように退場。

団女   あ、私も行く。
   
    団女そのまま退場。
    金沢君少し安心する。
    団女顔だけ出す。

団女   ちゃんと返事考えておきなさいよ。

    金沢君びっくりする。

団女   返事は。
金沢君   は、はい。
団女   返事は一つ。
金沢君   はい。

    団女文句を言いながらそのまま退場する。
    ふっと世界が元に戻る。

金沢君   ろくな思い出が無いな・・・。

    衣装をなおす金沢君。

金沢君   そう、死んだ。それが全てだよな。そうさ、続けてたってろくな死に方な    んかしないんだ。だから僕は。僕は・・・。

    主宰現れる。

主宰   じゃあ、何でそんなもの持ってるんだろうな。
金沢君   戒めですよ。僕自身のね。
主宰   じゃあ、その戒めは何の為にしてる。
金沢君   僕が本来あるべき場所に戻って、ちゃんとすごしていけるように。そして    過去を忘れないために決まってるだろ。だから僕は。そんなつもりは無い    んだよ。

    金沢君、振り返る。

金沢君   わかったか。

    金沢君、主宰を見て驚愕する。

主宰   十分に分かったよ。
金沢君   な、何でここに、え、嘘。そんな。冗談だろ。もしかして。

    金沢君自分の顔をつねる。

金沢君   痛い。
主宰   なんだ自虐プレイか。手伝ってやるよ。

    主宰、金沢君を痛めつける。

金沢君   や、やめろ。やめてくれー!!

    金沢君そのままうずくまる。
    主宰、ゆっくりと姿を消す。
    その間に父親と母親現れる。

父親   なにやってるんだ。
金沢君   やめてくれ。
父親   どうしたっていうんだ。
金沢君   やめろ!!

    父親に掴みかかり、殴ろうとする。

母親   やめなさい!!
金沢君   うるさい!!

    金沢君、殴ろうとした瞬間に気がつく。
    金沢君手を離し、うなだれる。

父親   ど、どうしたんだ。
母親   疲れているのよ。いろいろあったみたいだから、ね。
父親   そ、そうだな。いろいろと聞いたよ。かあさんに。俺も悪かったな。急に。   もっと時間が必要だったんだよ。本当は。あれも処分しろって・・・。
金沢君   いいよ。処分しても。いや、処分すべきだよ。あんなもの。
母親   あんなものって。
金沢君   いいんだよ。あんな何の役にも立たないものなんて。処分すべきなんだよ    。この際、きれいさっぱりね。
父親   そ、そうかその方がいいな。
金沢君   全て処分するよ。この際。もう僕には必要の無いものだからね。
父親   そうだ。そしてな。
金沢君   また仕事が終わったら持って来るよ。
母親   それでいいの。
金沢君   うん。その方がさっぱりするよ。

    金沢君そういいながら退場する。

父親   そうかこれで。あいつも。
母親   本当にそれで。
父親   いいに決まってるだろ。その方がさ。

    母親、荷物を見ている。
    主宰現れる。

主宰   果たしてそううまく物事は運ぶのか。

    笑う主宰。父親、母親は主宰に気づかずそのまま退場する。
    主宰は客席に向かう。

主宰   誰しも、望むべくして生きている訳ではなく、かといって、望まざる生き    方をしている訳ではない。されども、人は偽る。何の為にと言われれば、    至極答えは簡単だ。しかし、その答えを本当に知ることは無いのかもしれ    ない。それを用意に知ることができないのが人なのだから。

    金沢君現れる。手にはダンボールを抱えている。
    主宰、金沢君の目に触れない場所に行って遊ぶ。
    そうこうしているうちに金沢君はどんどんとダンボールの箱を積み上げる。

主宰   まるでバベルの塔だな。

    金沢君意にかえさずダンボールを積み上げる。

主宰   と言っても何人の人間がわかるんだろうな。

    金沢君ダンボールを持ってくるのを止める。

金沢君   まるでバベルの塔だな。
主宰   同じ発想かよ。
金沢君   と言っても何人の人間がわかるんだろう。
主宰   ここまで一緒かよ。ま、しょうがねぇわ。
金沢君   なんかうるさいな。

    振り返ると主宰がいる。

金沢君   な、ま、また。勘弁して下さい。餅をのどに詰まらせたなんて死に方をしたからって、僕に怨んで出る事ないでしょう。
主宰   怨んで出てると思ってるんだ。ま、確かにお前のせいで随分と苦しくなったからね。
金沢君   そ、そんな。
主宰   ま、そんな冗談はさておき、処分するのか。
金沢君   冗談って。
主宰   本当は冗談じゃなくて・・・。お前のことを・・・。
金沢君   や、やめて下さいよ。
主宰   ほらほら・・・お前を呪い殺してやる!!
金沢君   うわぁあああああああ!

    金沢君びっくりして腰を抜かす。
    父親驚いて現れる。

父親   な、何かあったのか。
金沢君   あ、あれ。

    金沢君主宰を指さす。
    が父親には見えていない。

父親   どうしたっていうんだ一体。
金沢君   ほらほら、そこそこ。

    主宰適当に遊ぶ。

父親   何があるって言うんだ。
金沢君   見えないの。
主宰   見えてないな。
金沢君   うるさい。
父親   いい加減にしろ!
主宰   おこられてやんの。
金沢君   あんたのせいだろ。

    父親金沢君の腕をつかむ。

父親   大丈夫か。
金沢君   大丈夫だよ。それより。

    主宰適当にこの空間を見て回る。

主宰   見えてないぞ。
金沢君   わかってる。
父親   何が。
金沢君   いや。
父親   わかってる。お前の気持ちはな。
金沢君   へ、どういうこと。
父親   だから今日は寝なさい。
主宰   そのほうがいいかもね。
金沢君   いちいちうるさい!
父親   何だと、お前は!

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