Restructuning

(リストラクチャリング)
初演日:0/0 作者:仲原時雨丸
Restructuning

    仲原時雨丸

    係長   人事部係長。
    元部長   係長の上司。
    男達   上層部のやり方に反発し退職した者達。
    専務   経営の傾いた会社を立て直すべくリストラを指揮する。
    部長   人事課長から、昇進したリストラ専門部長
主任   社内の情報通、現部長の肝入りで呼ばれた。
    男1   会社から他者に出向されられた社員。
    男2   閉職の中年管理職の一人。
    副委員   労働組合の副委員長。

    会社のオフィス。
暗がりの中、係長を含め元部長と部下である男達佇んでいる。
やがて男達が一人、また一人と荷物をまとめて去ってゆく。
    机を叩くもの、椅子をけるもの、消える前に中指を立てるもの。
    彼らは、会社の意思決定に反発し、怒りをあらわにしている。
    そうして、ついに元部長も去ろうとする。
係長、元部長に従い、机から封筒を取り出し、同じく去ろうとする。
が、元部長に引き止められ、しぶしぶ了承する。
そうして一人取り残された係長は呆然と立ち尽くす。
やがて静かに、力なく席に座り、封筒を机の中にしまう。
    その行為と同時に暗がりから、オフィス本来の明かりへと変化する。
    専務と部長登場。

係長   専務おはようございます。課長も。
専務   いや、部長だよ。昨日会議で決まった。
係長   はぁ。
部長   そういうことだ。
専務   あの男は、有能だったのに裏切るとは。
部長   組織の何たるかを知らぬ奴でしたな。
専務   有能では有ったが。忠実ではなかったと言う事だ。
部長   おっしゃるとおりで。組織の何たるかかをわかっておりませんで。
専務   そのへんで。ま、よろしく頼むよ部長。
部長   はい!それはもう。誠心誠意平身低頭であたらしてもらいます。
専務   よろしい。
部長   で、お約束のほうは。
専務   そうだ。

    主任入ってくる。

主任   どうも。私の話が、いつになるかと待ちわびてましたよ。本当に。ねぇ。おはようございます。

    主任、係長に挨拶する。
    係長、不機嫌そうな、いやな顔をする。

係長   おはよう。
専務   部長の退職にともなって、幾名かも退職になったので、その補充として主任君をね。
主任   よろしくお願いします課長。
係長   係長だ。
部長   そう彼はそのままだ。意外だな。情報通というところ期待しているんだが。
主任   いえ、そこは期待していただいて大丈夫です。部長!
専務   というわけで、よろしく頼むよ。
部長   はい。それとお約束、忘れないように。
専務   君の頑張り次第だよ。では頼んだよ。
部長   は、おまかせ下さい。必ずやご期待にお答えいたします。

    部長、会釈する。
    専務退場する。
    部長、だるそうに座る。
    主任はマイペースに座る。
    突如、係長に光が集約する。
    立ち上がる係長。

係長   ここは、?梶宦~商事、人事部のオフィス。ここでは会社の為に、適切な人員を選考し配属する部署。賞賛と非難の同居する、難解な職務。我々はこの重責に耐えながら遂行してきた。人を見る、知るということは難しい。でも、我々は誇りを持って行ってきた。だが、今は。その逆を、人を切る。人員の整理と言う名目の解雇、死刑執行人という立場になった。確かに、弊社の業績は思わしくない。そして競合他社の勢力拡大で、劣勢に立たされるばかり。だから、でも、しかし。

    部長に光が当たる。

係長   部長は強きに従い、弱き強い。前部長がいた時は部長に従い、今は専務におべっかを使って取り入っている。今度の昇進だって、部長は、その見返りを期待している。さっきだって。何故こんな男が部長に。仕事は部下に丸投げ。手柄は横取り。なのに会社は。こんな男を部長に。

    主任に光が当たる。

係長   主任は、社内のつまはじき者だ。仕事は真面目にやらない。だが、彼を恐れるものは多い。何故なら、彼の情報網は社内の社員に留まらず、バイト、パート、取引先にも及ぶ。だが、それを仕事に活かそうとはしない。あくまで、気まぐれとも思えるほどに情報を提供する。まるで、砂漠で飲み水が無く苦しむ人に、もったいぶるように、感謝を強要するように、その価値を高め、多くを与えず、ほんの少しだけ、与える。自分の価値を高め、楽しんでいるような、屑だ。ダニだ。

    突如、オフィスの明かりに戻る。

主任   どうしました係長。
部長   何かあったのか。ん?
係長   ああ、いえ。なんでもありません。

    係長、机の書類を見る。

係長   それより、この書類の、当社が統括する工場を閉鎖するって言うのは。あの工場は、前社長が当時最先の設備を。
部長   当時だろ。何年前の話してんだよ。今どうだ?人件費だけ多くて、赤字じゃねえか。
係長   今は赤字でも、今後はわからないじゃないですか。それにあそこには有能な人材が。
主任   係長。

    主任、係長に書類を渡す。

係長   え、引き抜き。まさか。
部長   そう言う事だ。たとえ有能な人材がいたとしても、引き抜かれたら、先行き不安だよな。
係長   ですが、あの工場は、当社にとって。
部長   前社長の思い入れ、歴史?そんなものが金になるのか?利益を生むのか?違うだろ。ようく考えてみろ、今の時代、海外で作らせた方が、人件費も浮く、結果、コストははるかに低い。そうすれば、値段も下げられ、消費者も喜ぶ。しかし、国内での生産だとどうだ。人件費はかさむ。それは当然、コストにも影響する。そうなると、値段はどうなる。そう。高くなる。そうなるとどうなるか。誰でもわかる常識だと思うけどな。
係長   だとしても、社長は納得されているのですが?
部長   まだだ。しかし専務にはご了承頂いている。会社としては認めたと言う事だよ。それに個人の感傷より、組織という事だ。会社あっての。だろ。
係長   わかりました。では工場の185名を解雇という事で。
部長   大事なとこ抜けてんだろ。言い方間違えんなよ。あくまで工場閉鎖の為。それに工場は転売する。
係長   それじゃあ。
部長   その後の従業員はどうなるかは知らんよ。その辺の交渉は転売先に好きにしてもらうさ。ウチは閉鎖という方針は変わらんし。以上。

    椅子に座る係長。

主任   時代が変わったんですよ。
部長   そうそう。良い事言うね。

    笑う、部長と主任。
    やがて時は過ぎて部長と主任は帰宅する。

係長   時代が変わって、会社は、じゃあ人は。

    拳を振り上げ、机に叩きつける係長。
    その後、係長も帰宅する。
    次の日。
    係長、部長、主任の順で現れる。
    主任、書類を部長に渡す。
    そして係長にも渡す。
    係長、その書類を見て主任を見る。
    主任は知らん振りをする。

主任   じゃあ、ちょいと出てきます。書類の件もありますんで。
部長   うむ。

    係長、主任を見ている。

部長   係長。
係長   はい。
部長   この件はともかく(書類を床の上に置く)出向社員の件だが、出向先に引き取ってもらうのはどうだ。そうすれば、かなりの人員を削減できるぞ。それに解雇というわけではないし、一石二鳥だ。
係長   お言葉ですが、彼らはわが社の為に他社で働き、ゆくゆくは会社に戻れる事を夢見て、今まで働いてきたのです。それを。
部長   夢なんてさ、かなわんもんだろ。ましては社内にいない人間達だぞ。
係長   でも、それでも我が社の社員です。
部長   しかし、社内にはいない。それに考えてみろ、社内で不要だから、他社に出してんだろ?出向させてんだろ?だったらこの際、そのまま向こうに入れちゃえよ。こっちはこまらねぇ。それだけの事じゃん。それとも文句あるの。
係長   それが、あなたの、いや、会社の方針ですか。
部長   うん。間違いなく。
係長   だったら。

    係長、主任の渡した資料を見る。

係長   従います。
部長   よろしい。じゃあ、俺打ち合わせあるから。よろしくたのむよ。な。

    部長、そのまま消える。
    係長、静かに、机の中から封筒を取り出し、主任の資料と見比べる。
    やがて封筒を机の中にしまい、主任の資料をグシャグシャにしてゴミ箱に投げ捨てる。
    係長そのまま家に帰る。
    翌日。
    主任、現れ、係長のゴミ箱を覗く。
    ゴミになった資料を見て苦笑する。
    部長入ってくる。
    主任、ゴミになった資料をシュレッダーにかける。

部長   どうした。
主任   あ、おはようございます。いや、係長がね。昨日の資料をそのままぽいっとしちゃってたんで、シュレッダーしてるんすよ。

    しゃべりながら座る部長。

部長   そうかぁ。こまったもんだなアイツも。本当に。やめてくれりゃあよかったんだ。アイツもさ。
主任   係長ですか。そういえば。今日は休みですか。真面目だけが取り得みたいな人なのにね。
部長   昨日頼んだ件で、直行だってさ。休みじゃないよ。でも、うまい事言うね。君。
主任   なるほど。係長がねぇ。ふうん。
部長   そういえば君さ。実は事情知ってんじゃないの。何せ情報通だしさ。君。それくらいは。
主任   あいにくと。それは。
部長   そっか。
主任   ただ、約束らしいですよ。
部長   約束?何の?誰と?
主任   部長、あ、元部長か。なんでも、係長は元部長に残るようにってお願いしたらしいっすよ。ただ元部長が逆に係長に、君は残って頑張れって言ったらしいっすよ。だからですかね。
部長   余計なこと言いやがってアイツ。そういうやつなんだよ。アイツは。
主任   元部長、やり手でしたもんね。その上人望もあって、さらに。
部長   さらに?何だ。
主任   いえ、ほめ言葉じゃないので、言わないほうがいいかなと。陰口っぽいっしょ。何か。欠点というかそういうの言うの。
部長   いや、是非とも聞きたいね。俺はさ。
主任   強引な人でしたよね。押しが強いって言うか。豪腕というか。なんか、ねぇ。
部長   (呟くように)陰口じゃねえし。
主任   何か言いました?
部長   別に。あ、そういえば、俺の情報とかないよね。その、君の情報の中で。
主任   え?

    手帳を取り出し確認する主任。
    部長、ドキドキしながら見ている。

主任   ないっすね。ない。ございません。
部長   そうか。よかったー。ま、俺、品行方正だし、後ろめたい事とかないんだけどさ。

    笑う部長。
    笑う主任。
    しかし二人の笑いの温度は違う。

主任   じゃあ、外回りいってきますね。
部長   ちゃんと仕事しろよ。この野郎。
主任   バレちゃってます?かなわないなぁもう。

    部長、主任笑う。
    温度が違う笑い。

主任   じゃあ、行ってきまーす。

    主任消える。
    部長、主任が消えると同時に、不機嫌そうな顔つきに変わる。
    部長、不快そうに仕事をしている。
    ファックスが届く。

部長   係長。あ。

    部長、ファックスを取りに行く。何々、人材派遣、紹介。くだらん。

    部長捨てようとするが思いとどまる。
    専務登場。

専務   失礼するよ。
部長   専務。
専務   順調のようだね。
部長   はい。出向社員整理も係長が。
専務   そうか。そうなると、100名前後は整理できると言う事だな。
部長   はい。ズバッと切ります。
専務   君、言い方はもう少しソフトに頼むよ。
部長   申し訳ありません。
専務   でも1000人越えは厳しいな。
部長   いえ。それは私が身命に変えましても実現いたします。ですから、その暁には。その。
専務   わかっておる。取締役はおろか、常務への昇進も検討しておるよ。但し、それだけの実績と実務はこなしてもらわんとな。
部長   はい。それはもう。つきましては。

    ファックスを専務に渡す部長。

専務   これが、あ、成程。早速、社長に進言して重役会議で。流石だ。
部長   いえいえ。よろしくおねがいします。

    専務笑いながら出てゆく。
    上機嫌で席に戻る部長が立ち止まる。
    突如、部長の席に明かりが集約される。

部長   こうだよ。こうすんだよ。仕事ってのはよ。わかったか。何が有能だ、何が豪腕だ!上にたてついてんじゃねえよ!会社は絶対なんだよ。上役にはな、従うもんなんだよ。それを逆らいやがって。義がないだと!ふざけんな!クソが!会社はな。利益を上げてこその会社なんだよ。組織なんだよ。社員はな、奴隷なんだよ。会社の、組織の。奴隷にな、権利何ざねぇ。もし、権利が欲しけりゃ、出世しろ。俺のようにな。上役にこびへつらい、従順に従え。それも、上だよ。お前なんかより上がいたら、そいつに従えばいいんだよ。その上がいたらその上に。それが会社だ社会だ。くだらねぇ正義感とか、正論何ざいらねぇんだよ。

    係長の席にも光が集約する。

部長   そうだ。お前だよ。安っぽい情に流されやがって、逆らってんじゃねえよ。つっかかってんじゃねえよ。ホントはお前なんか、お前なんか。いや、それより、こいつ何か俺に隠してねえか?

    主任の席にも光が集約する。

部長   主任の野郎の話も気になるし。よし。

係長の机を調べる。が、全て鍵がかかっている。

部長   くそっ!全部かぎ掛けてやがる。こういうところもムカつくんだよ!堅物が!

    部長、主任の席を見る。

部長   こいつはどうだ。

    机をあさるがエロ雑誌とか仕事に関係しないもの以外、何もない。

部長   コイツ。仕事する気あんのか。それより、バレてないみたいでよかったな。アレの件。ま、慎重にやってるからわかりゃーしねえか。それにざとなれば。でも、先に。

    係長の席を見る。

部長   ま、利用するだけは利用させてもらうけどな。こいつらは。

    笑いながら席に戻り、帰り支度をする部長。
    同時にオフィスの明かりに戻る。
    財布を確認する。

部長   心もとねえけど、たまにははめを外すか。用心しねえとまずいやつはどっちもいねえし。羽伸ばすぜ。

    部長、上機嫌で帰る。
    次の日。
    係長登場し、机に座る。

主任   おはようございます。

主任登場、

係長   おはよう。

    机の中身を見て、主任、係長を横目で見て笑う。
部長登場。

主任   おはようございます。
係長   おはようございます。

    部長無言で椅子に座る。

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