うちのお父さん

(うちのおとうさん)
初演日:0/0 作者:林ユウヤ

父     沢田家の父親。交通事故により五三歳で死去。

母     沢田家の母親。五十歳。大学卒業後、すぐに父と結婚。

一郎    沢田家の長男。二十六歳。銀行員。非常にまじめ。

桃子    沢田家の長女。二十二歳。作業療法士。おじいちゃんおばあちゃんに人気。

恵太    沢田家の次男。二十歳。大学生。父親との仲は良好。

サスケ   沢田家のペット。ポメラニアンのメス。命名は父によるもの。




舞台上は役者のシルエットが見えるのみ。センター付近には担架。

父  「行ってきます。」

歩き出してすぐに父が交通事故に遭う。父は担架に倒れる。
救急車のサイレンが流れてくると、ヒトがやってきて担架で父を運ぶ。
徐々に暗転。
サイレンの音がお経や木魚の音に変わる。人の泣き声も聞こえてくる。徐々に明転。

舞台上には葬儀用の祭壇とパイプ椅子が6脚(横に3、縦に2)並んでいる。
前列には母、一郎、桃子。後列に恵太がうつむいて座っている。

しばらくして白い服を着た父が入ってきて、恵太の横にしれっと座る。
父は恵太を凝視している。

冒頭(葬儀場)

恵太が隣の父に気づき、驚く。

恵太 「か、母さん…と、ととと、父さんがいる…!」
母  「そうね…。あんな事故に遭って、あんなところに入ることになるなんてね…。」
恵太 「いや、そうじゃなくて、ここに!」
母  「そうね…。あんなところに、」
恵太 「ここ!横!」

母、横を見る。視線の先には一郎。

母  「お父さん…?」(感動している様子)
一郎 「そんなわけないだろ。恵太、笑えないぞ。」
恵太 「俺の横!」
一郎 「静かにしないか。大の大人がみっともない。」
恵太 「本当にいるんだって!」

恵太が父を見る。父はまだ凝視している。

恵太 「なんかめっちゃ見られてる。」
母  「急なことで、受け入れられないのね…分かるわ。でもね、」
恵太 「そうじゃないんだって!姉さんは見えるよね?!」
桃子 「…。」
恵太 「姉さん!姉さん!」
一郎 「いい加減にしないか。」
恵太 「だって父さんが、」

恵太は父を見る。父は知らぬ顔。

恵太 「今さら無視?!なんで無関係装ってるの?!ねえ、父さん?!」
アナ 「悲しみのあまりご乱心なさったお姿に強い親子愛を感じ、ワタクシ涙が止まりません。」
恵太 「本当にいる、」
アナ 「しかし、別れの時間がやって参りました。まもなく出棺でございます。」

黒子が出てきて棺に黒布をかける。

アナ 「故沢田タケシ様の旅立ちを、どうぞ皆様でお見送りください。」

棺を出せるようにする。。

アナ 「出棺。」

長いクラクションが鳴り、棺がはける。棺がはけだすと父が号泣。
「Samba De Janeiro」に変化。
「Samba De Janeiro」が流れ始めると、父以外は舞台転換に取り掛かる。父は泣き続ける。

舞台が葬儀場から自宅へ変わると、音楽は消えていく。


1(自宅)

父と恵太が対面するように座っている。
父は未だにすすり上げている。

恵太 「いい加減、泣き止みなよ。」
父  「だって、だってさ…うぅ…。」
恵太 「あのさ、2時間も同じやり取りしてるといい加減飽きてきたんだけど。」
父  「え?ん、恵太が冷たくするぅ。」
恵太 「するぅ、じゃなくて、」
父  「父さんの味方はお前だけだよ、サスケ?」
サスケ「バウバウバウ!」
父  「サスケまで冷たい?、ふぇ?ん。」
恵太 「いい年したオッサンがふぇ?んとか言っても可愛くないから。」
父  「いいもん!お父さん、もう拗ねちゃうもんね!プンプン!」
恵太 「何?臭うの?キモッ。」
父  「恵太、人には言っていいことと悪いことが、」
恵太 「分かった分かった、ゴメンナサイ。それで、父さん?」
父  「なあに?ケーちゃん?」
恵太 「うわっ、死んで。」
父  「残念!もう死んでる。」
恵太 「じゃあ何でここに居るんだよ!」
父  「知らん!」
恵太 「…。」
父  「知らん!」
恵太 「知ってるよ!」
父  「知ってるの?!なんで?!エスパー?!」
恵太 「さっき聞いたからだよ!」
父  「えっ?お前、タイムリープしてね?」
恵太 「してねぇわ!」
父  「知ってる!」
恵太 「何なんだよ!」
父  「お父しゃんでちゅよ?」

父が恵太に絡む。

恵太 「知ってるよ!」

恵太が父を押し倒す。

父  「そんな急に…。父さん、心の準備が…」
恵太 「何のだよ?!」
父  「そんなこと言わせないでよ、ケーちゃんのエッチ?」
恵太 「そんな趣味無いからね?!」
父  「恵太、隠さなくたっていいんだ。人にはそれぞれの趣味があっていいんだ。それを否定することは誰にもできないんだからな?」
恵太 「ないって言ってるだろ!」
父  「え、…ないの?」
恵太 「なんで残念そうなの?えっ?」
父  「恵太…父さん、実はな…」

父が恵太に迫る。逃げる恵太。しかし追いつめられる。

父  「実はな、父さん…」
恵太 「うわぁ、嫌だ!聞きたくない!」
父  「幽霊なんだ。」
恵太 「…。」
父  「幽霊だよ、ユーレイ。ほら、ひゅ?どろどろ?とか、う?ら?め?し?や?とかの。」
恵太 「へぇ。」
父  「反応薄ッ!」
恵太 「ここまでの流れでね?大体察しはつくでしょ。」
父  「そ、そうか…。」
恵太 「あれだけ引っぱっといてユーレイですとか、おもんな。」
父  「あ、なに、そういうやつだったの?じゃあ、」
恵太 「もういいよ。面倒だから。」
父  「ハハ…面倒。」
恵太 「それで、なんでユーレイなんてしてんの?」
父  「時給が良くて、」
恵太 「うわ、おもんn、」
父  「気づいたらこうなってました!」
恵太 「最初から言えよ。」
父  「嬉しくてな、つい…。」
恵太 「なんで?死んでるんだよ?」
父  「いや、生きてるときはこんなに話せなかったからな。」
恵太 「何だよ、今さら。」
父  「そう、なんだけどな…。」
恵太 「どんなこと話したかったの?」
父  「ん?まあ、いろいろ、な。」
恵太 「そっか…。」
父  「もっと皆と話したかったなぁ…。」
恵太 「それじゃない?」
父  「え?」
恵太 「ほら、幽霊になる人ってこの世に未練があるって言うじゃん。」
父  「お、おう、そうだな。で?」
恵太 「いや、だからさ!父さんが幽霊になった理由!」
父  「あ!あ?!」
恵太 「父さんが成仏するには、」
父  「家族と話せば!」
恵太 「そうだよ!」

二人は大喜び。二人が喜んでいるところに桃子が帰宅する。

桃子 「ただいま?。」

桃子入る。

桃子 「…。」

はしゃいでいる二人を見るが、桃子には恵太しか見えていない。

恵太 「あ、姉さん!」
桃子 「お姉ちゃん、何も見てないから…。」
恵太 「え、姉さん?」
桃子 「それにお姉ちゃん、そういうの慣れてるから。」
恵太 「姉さん、話を、」
桃子 「気にしないから?!」

桃子がはける。

父  「最近の若者はよくわからんな…。」
恵太 「自分の娘だろ…。」
父  「いや、意外と分からないもんだぞ。」
恵太 「あ…うん、ごめん…。」
父  「…やっぱり、見えないんだな。」
恵太 「でも、俺には見えてるから!」
父  「ありがとうな。」

父が恵太の頭をなでる。

恵太 「え、怖ッ!なんで触れるの?キモッ!」
父  「この流れでその扱いは違くない?!」
恵太 「母さーん、塩ちょうだーい。」

恵太がはける。

父  「ねえ待って!父さん寂しい!寂しーいー。」

父が恵太を追いかけようとすると恵太が塩を持って戻って来る。

恵太 「ああもう!うるさいな!」(塩をまきながら。)
父  「塩は!塩はダメ!痛、痛いって!あ!目に入った!あ?目が!目がぁ!」
恵太 「似てない。」

さらに投げつける。

父  「止めなさい!人が嫌がることしちゃいけません!」
恵太 「父さんユーレイじゃん。」
父  「そういうことじゃない!成仏しちゃったらどうするの!」
恵太 「いいじゃん成仏できたら。」
父  「こんな成仏、もっと未練残るわ!」
恵太 「そんなのやってみなきゃ分かんないでしょ。」
父  「あーーー!止めて!」

父が逃げ出す。

恵太 「あ、待て!」

恵太が追う。

父  「溶けそう!なんか溶けそう!」
恵太 「ナメクジかよ。」
父  「いやーー!」

二人がもめている間に一郎が帰ってくる。

一郎 「…。」

一郎は塩まみれの部屋を見て唖然。

恵太 「ほら!これでどうだ!」
父  「お前!絶対楽しんでるな?!父さんで遊んでるな?!」
恵太 「こんな機会、滅多にないからね!」

恵太が追加で塩まき。

一郎 「恵太!」
恵太 「あ、兄さん。お帰り。」
一郎 「お帰りじゃない!何してる!」
恵太 「何って…親子の戯れ?」
父  「なんか思ってたのと違、」
一郎 「ふざけるな、こんなに散らかして!ちゃんと掃除しておけ!」
父  「や?い、怒られてやんの?」
恵太 「うるさ、」
一郎 「恵太、今すぐにだ!」

一郎がはけ始める。

恵太 「このくそ親父、」
一郎 「今すぐだ!分かったな!」

一郎がはける。

恵太 「はいはい…。」
父  「まあ、これだけ散らかせばな…。」
恵太 「分かってるよ…はあ。」

恵太が掃除道具を持ってくる。

父  「手伝うぞ。」
恵太 「ああ、ありがとう。」
父  「おう。」

二人は無言で掃除をする。
掃除が進む。

父  「…飽きたな。」
父  「恵太、飽きた。しりとりしよう?」
恵太 「いやだよ。」
父  「いいじゃないか。」
恵太 「いいから掃除してよ。」
父  「ぶーぶー。」
恵太 「…。」
父  「あーあ、つまんないなぁー。」
恵太 「…。」
父  「父さん、一人で遊んじゃうもんねー。」
恵太 「…。」
父  「なぁにしよっかなぁー。」
恵太 「…。」
父  「そうだ、しりとりしよう!しりとり。リンゴ。ゴリラ。ラッパ。パンダ。ダンプ。プリン。あ!ンって言っちゃった!」
恵太 「…。」
父  「もっかいしよ!しりとり。リンゴ。ゴリラ。ラッパ。パンダ。ダンプ。プリン。あ!またンって言っちゃった!」
恵太 「…。」
父  「よおし、今度こそ!しりとり。リンゴ。ゴリラ。ラッパ。パンダ。ダンプ、」
恵太 「うるさい!」
父  「だって、つまんないんだもん。」
恵太 「知るか。手伝わないなら向こう行っててくれ。」
父  「ケチ!まったく、最近の若者は心が狭くていけない。」
恵太 「…。」
父  「あ、いやでも、父さんが若いころにも『最近の若者は』とか言われたな。」
恵太 「…。」
父  「そうか、こんな気持ちだったのか…。年を取ったもんだ、ハハハ…。」

恵太が掃除を終えてはける。

父  「恵太にもいつか分かる日が来るんだぞ~。」
父  「そのころには、みんなどうしているのかなぁ。なあ、恵太?…いない。」
父  「はあ…。」

サスケが台車に乗って入ってくる。

父  「おお、サスケ!ほら、お父さんだよ。」
サスケ「バウバウバウ!」

サスケが急加速してハケる。

父  「こら、待ちなさい!」

サスケを追ってハケて、サスケを捕まえて戻ってくる。

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