盲いた恋
女性、客席に背を向けて立っている。料理を作っている様子。
「私ね。あなたの顔が見られなくて、好かったって、思っているのよ。」
返ってきた言葉に反応して振り返る女性、そして笑い出す。
「違う、違う。あなたの顔が目も当てられないようなものってことじゃないわ。怒らないでよ。」
料理の手を止める女性。しっかり相手に向き直る。
「私が言いたいのは、目が見えている人たちって、真実を見えるか見えないかで判断してしまうでしょう? 見えない真実を信じられない人って多いじゃない? 」
相手の手を取る女性。
「あなたに触れて伝わるものは、温度や手の感触だけじゃないの。」
相手を抱きしめる女性。
「胸に耳を当てて聴こえるのは、鼓動だけじゃない。」
相手の顔に触れる女性。
「見えなくてもわかる。あなたはとてもいい顔をしているわ。」
微笑み、また料理を作り始める。
「私ね。あなたとなら地獄へ墜ちたとしても幸せよ。」

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