私と人生の幸福屋と初恋のあの人と

(わたしとじんせいのこうふくやとあのひとと)
初演日:0/0 作者:平山賢司
『私と人生の幸福屋と初恋のあの人と』


斉藤輝美(38)…主婦。 うだつの上がらない夫と生意気な息子と娘たちとの生活に嫌気が指している。

斉藤智和(35)…万年ヒラのサラリーマン。家庭の事は妻の輝美に任せきり。浮気相手がいて、給料を彼女に注ぎ込んでいる。

斉藤勇一(15)…高校1年生。輝美の息子で、極度のマザコン。

斉藤瑠奈(18)…フリーター。輝美の娘で、お笑い芸人を目指してる。

風間伸介(20)…輝美が女子高生時代のバイト先の先輩で、初めての恋人。現在は音信不通。彼との別れが彼女の人生の大きな悔いとなっている。

スーパーのおばちゃん(50)…輝美のパート先のスーパーに勤める先輩。しょっちゅう彼女に嫌味を言う。


カップル男(20)…カップル女の彼氏。


カップル女(19)…カップル男の彼女。

謎の少女(推定年齢10歳前後)…“人生の幸福屋”を自称する少女。輝美の前に突然現れるが……。

未来(1)…女の赤ん坊




●シーン1 プロローグ
謎の少女がリスナーに語りかける。
少女  「ねえ、ねえ。今このラジオを聴いてるお兄さん、お姉さん、おじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃん達の中で“全く後悔の無い人生”を過ごせてる人はいる?……誰もいないでしょ?もしも、悔いのない人生を送る事が出来るとしたら、アナタはどうする?あっ、自己紹介遅れてごめんね!私は不幸な人生を過ごしてる人に幸福な人生を与えてあげる“人生の幸福屋”よ!今から皆に聴いてもらうのは、私と、幸福な人生に憧れて日々を生きている1人の女の物語……」

●シーン2 斉藤家
早朝、斉藤輝美がキッチンで家族の朝食を準備している。
【SE】鍋の煮える音
輝美  「もう7時30分だっていうのに、誰も起きてこないなんて、皆んな寝坊助ばかりなんだからー!」
斉藤勇一が、食堂に入ってくる。
勇一  「あー!ママァ!何で起こしてくれないの?もう遅刻だよー!ねえ、遅刻すると校門で生活指導の熊田先生に怒られるんだ。怖いから、ママ学校まで送ってくれる?」
輝美 「もう!ママ忙しいんだから、朝っぱらから抱きつかないでよ!それに勇一、あんたも男の子なんだから、学校の先生にビビってんじゃないわよ!」
勇一 「ママは、先生の怖さが分からないから、そんな事が言えるんだ!僕が怒られてもいいの?ママは、僕の事が好きじゃないの?もう愛してくれないの?」
輝美 「そんな訳無いでしょ!馬鹿な事ばっかり言ってないで、早く朝ご飯食べてよ!」
勇一 「じゃあ、学校まで送っててくれるんだね?」
輝美  「勇一!あんたは、もう高校生でしょ?ママに甘えるのもいい加減にしなさいよ!怒られても良いから、学校くらい1人で行きなさい!」
勇一  「ママのバカ!もういいよ!」
輝美 「ち、ちょっと、どこ行くのよ?ご飯食べないの?」
勇一  「もう、今日は学校休むの!だから、もう一度寝る!」
勇一、食堂から出ていく。
輝美  「ち、ちょっと勇一!待ちなさい!」
斉藤智和が、食堂に入ってくる。
智和  「ふぁーあ!朝っぱらから騒々しいなぁ。朝飯は?」
輝美  「あ、アナタからも怒ってよ!勇一、遅刻して学校の先生に怒られるから、学校休むなんて言ってるのよ!」
智和  「学校なんて、1日くらい休んだって、大したことないんだから、今日くらい休ませてやれば?」
輝美 「何よ!自分は子供達の面倒なんか全くしないからって、無責任な事ばかり言って!これで、サボりグセが付いて退学になったら、どうすんのよ!?」
智和  「うるせーな!子供の世話をするのは女房の役目だろ?あっ、もう遅れそうだ!朝飯はいらないから、もう会社に行くよ」
輝美  「あっ!アナタちょっと待ってよ!」
智和  「何だよ!俺、急いでんだけど!?」
輝美  「今月の給料明細を見たんだけど、昨日通帳記入したら、随分とたくさんのお金が下ろされてたみたいだけど、一体“何に”いや“誰に”使ったのかしら?」
智和 「そ、そんなの何かの間違いだろ?もう行仕事行くから!」
智和、食卓から出て行く。
輝美  「ちょっと待ちなさいよ!……もう!いつもこうなんだから!」
斉藤瑠奈が食堂に入ってくる。
瑠奈  「あっ、オカンただいまー!」
輝美  「ただいまじゃないわよ!昨日は、家にも帰らずに、どこをほっつき歩いてたのよ!?」
瑠奈 「あー、昨日連絡せえへんかったっけ?めんご!めんご!昨日は先輩芸人のライブの裏方の手伝いよって、その後打ち上げで朝までコースやったんや!」
輝美  「はー。あんたもいい加減お笑い芸人なんてバカな事を辞めて、さっさと就職でもしなさいよね!高校卒業してから何ヶ月経ったと思ってるの!」
瑠奈  「もう、オカンは相変わらず心配症やな。大丈夫や!先輩のエジソンけんじさんなんか、もう40過ぎで売れてないのに、バイトと芸人の両立で何とか暮らしてるんやから、まだ18歳のウチは全然セーフやんか!」
輝美  「……あんた、前々から思ってたんだけど、お笑い芸人だからって、関西弁喋るの止めたら?無理して使ってるのが見え見えで、こっちまで恥ずかしいのよ!」
瑠奈  「な、何を言うとるんやオカン!芸人は、関西弁がデフォやんか!そやから、ウチが売れっ子になって、オカンがテレビに出る時は、ウチは関西生まれって、話を合わせて欲しいんや!」
輝美 「そういう心配は売れっ子になってから、考えなさいよ!そういえば、アンタのネタ見た事なかったっけ?ママが、売れっ子になれるか判定してあげるから、1番ウケると思うネタをやってみなさいよ!」
瑠奈  「えっ?急にそんなん言われてもウチ……」
輝美 「自信ないの?言っとくけど、ママ1人も笑わせるネタが、すぐに出来ないようなら、売れっ子芸人になんか絶対になれないわよ!」
瑠奈  「……分かったわ!やったろうやんか!ウチのとっておきのネタを披露したるさかい!オカン笑い過ぎて顎が外れてもウチを恨まんとき!」
ネタを始める瑠奈。
瑠奈  「ウチは、日本初めての女行司や!ウチにセクハラしよるムカつく力士の行司する時には、こう言ってやるんや!「はっきょーい!怒った!怒った!それ、怒った!怒った!」どうや!日本、いや世界初のセクハラ力士に怒りを訴える社会派女行司や!はーい!お後がよろしいようで!」
輝美  「……」
瑠奈  「な、なんやオカン?そんなしかめっ面して?オモロかったら我慢しなくてもええんやで?」
輝美  「あんた馬鹿じゃない!?本当にそんなネタがウケると思ったの?少なくとも芸人としてのセンスがゼロだって事が分かったわ!」
瑠奈  「う、う!オカンみたいな枯れ果てたオバはんに、ウチのトレンディな笑いのセンスが分かるわけないやんか!先輩達は、爆笑してくれはったのに!オカンのバカー!」
瑠奈、食堂から出ていく。

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