ジュブナイル

()
初演日:2018/10 作者:小箱
ジュブナイル

登場人物(4-6人)
・僕(I)
・旅人(TL)
・車掌(C)
・芸術家(A)
・祈る人(P)
・盗人(TH)

一場

I、教室に入り席に着く。PS(白)当てる。
SE)チャイム、ざわめき
I、ノートを広げ、板書を始める。周りから物を投げられる。
I,次第に板書をやめ、うつぶせ気味にノートに小説を書き始める。
いつの間にか物が投げ込まれるのもやみ、眠ってしまう。
フェードアウト
SE)チャイム
PS(橙)フェードイン
I,机をけられて目覚め、いそいそと帰りの支度を済ませはける。

暗転

SE)電車ドア

C  「ドアが閉まります。ご注意ください。」

PS(白)
SE)電車
I,駆け込んでくるが、電車を逃す。その場で怒りを表すが、空しくなりとぼとぼ椅子に座りため息。そのまま眠る。

暗転



二場

SE)電車

C  「当列車をご利用頂きありがとうございます。本路線は環状線となっております。乗車、降車のお間違えないようご注意ください。」

明転
I、起き、辺りを見渡す。
C、PSの位置から客席を回りながら「乗車券のご提示お願いします。」といい、Iのもとに行く。

C  「乗車券のご提示お願いします。」
I  「え、その…。」
C  「いかがなされました?」

I,電車の定期を取り出し、恐る恐る渡す。

I  「…これですか?」
C  「なんですかこれは?乗車券のご提示お願いします。」
I  「えっと、その…。」
C  「おやおや、もしかしてお客様、無賃乗車でございますか?これはいけませんね。石炭袋にでも置いていってしまいましょうか?」
I  「石炭袋?」
C  「底知れぬほど深い空の穴でございます。」
I  「そんな、僕気づいたらここにいて、何がなんだかよくわからないのです。」
C  「うーん、しかし、乗車券をお持ちでないのならどうすることもできません。」
TL 「俺が払おう。」

TL,入る。

I  「あなたは?」
C  「では、乗車券のご提示お願いします。」

TL,紙切れを渡す。

C  「むむむ、しかしこれは一人分の乗車券ですね。これではちょっと。」
TL 「んー、ほかに何か券の代わりになるものがあればいいのだが。」
C  「(TLのドッグタグを指しながら)おや?これはまさか…やや、これはこれは失礼いたしました。まさか天上までの乗車券をお持ちでしたとは。しかし先ほどご提示いただいた乗車券は都市の砂漠までですね。」
TL 「どっちのが上等なんだ?」
C  「それはもちろん、天上行きでございます。」
TL 「なら、そっちを彼にやってくれ。」
C  「やや、よろしいんで?このドッグタグ、お客様の存在を示す大切なものであるとお察ししますが。」
TL 「構わんよ。首輪のようなものさ。」
C  「では、そのように。当列車のご利用誠にありがとうございます。」

C,一礼してIにドッグタグを渡し、PSの位置に戻る。

I  「あの、本当にいいの?大切なものって。」
TL 「ああ、構わないさ。使う予定もなかったし、持っておいたところでしょうがないものだ。」
I  「そう…あの、あ、ありがとう。」
TL 「いいって、いいって、これも何かの縁さ。」
I  「ねぇ、ここはなんで、どこにむかっているの?僕、気づいたらここにいて。何がなんだかよくわからないんだ。」
TL 「俺もこの列車に乗ったのはこれが初めてでね、何が何だかさっぱりなんだ。なぁに、悪いことにはならないさ。行けるとこまで行けばいい。」
I  「元いたところには戻れないのかな?」
TL 「断言はできないが、たぶん大丈夫だろ。ほら、最初に言っていただろう?『本路線は環状線です』って。」
I  「…そうだといいんだけど。」
TL 「少しすれば元いた駅に戻るだろう。」
I  「はぁ…、そういえば、あなたはなぜここにいるの?」
TL 「俺はある場所を探して旅をしているんだ。」
I  「旅?」
TL 「あぁ、一年位前からかな。急に何か忘れてしまったような感覚に襲われて、どこかに行かなきゃならないような気がしてさ。まぁでも、その場所がどんな場所でどこにあるのかもわかっちゃいないんだがね。」
I  「どこかに行きたい?」
TL 「ああ、今のままではいけないっていうある種の強迫観念に近かったかな。だから旅に出た。何か変わるかなって思って。実際、旅をして分かったことは旅に出たって何かが変わることはないってこと、それだけだ。」
I  「どこかに行けるってだけで僕にはうらやましいな。僕にはしがらみが多すぎてどこにも行ける気がしないよ。学校も家もとても窮屈に感じるんだ。」
TL 「そんなものさ、俺が君みたいにちいさかったころには、そりゃもうたくさんの悩みがあったもんだ。門限に課題、気になるあの子のこととかな。」
I  「そういうんじゃないやい。なんだってそういう風に、」
TL 「生きている意味だとか、何かを成さねばならぬとかそういうのか?大丈夫だ、そんなものも時間がどうにかしてくれる。」
I  「…でも僕は、そんなに簡単に割り切ることはできないよ。」
TL 「それも時間が解決してくれるさ。」
I  「堂々巡りだ。僕はそういった風に何でもかんでも分かったようにしているけれど、実際何も考えないで既存の枠組みに押し込めるだけの人は違うと思うんだ。そんなんじゃ、だれもが誰かの真似を押し付けられてるみたいじゃないか。」
TL 「賢いな、君は。」
I  「子ども扱いしないでほしい。」
TL  「すまん、すまん。いやしかし、確かに的を射ているな、それ。君にやったタグは俺とその他を区別するためのものだ。前いたとこじゃ、偉い人が押し付けた枠組みで、みんなが同じように規格化されて誰が誰だかわからなくなった。『おまえは誰だ、俺は兵士だ。』『俺も兵士だ、なんだ、お前も俺か。』いや違うだろ。なんでお前が俺なんだよ、鏡見ろ。けど、誰もそれをおかしいと思うことができなくなってた。」

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。


ホーム