モノクロイド(女性バージョン)
『モノクロイド(女性バージョン)』
【役者】9人(男0 女3 不問6)

1.ケ イ :女。22歳。人間。貧しいけれども優しい娘。
2.メイド :女性型。ハウスキーパー。メイド服。明るくて騒がしい。よく笑う。
3.ドクター:男女不問(この本では女性型)白衣。けだるそうな雰囲気。
4.ガード :男女不問(この本では女性型)ぶっきらぼうで乱暴な口調。
5.母   :女。人間。ケイの母親。
6.博 士 :男女不問(この本では女性)。人間。テンションが高くてうさんくさい。
7.郵便屋 :男女不問。無表情。足をひきずり声にノイズが走る。頭に帽子。
8.音楽家 :男女不問。無表情。楽器を携帯。
9.軍 人 :男女不問。無表情。銃を携帯。

【あらすじ】
西暦2616年。
人類は200年も昔に滅亡し、数台のアンドロイドのみが機動しつづけていた。
人間のために造られながら、人間の役に立つことができない彼らは、
家族のように寄り添いながら、楽しく、そしてむなしく、百年以上過ごしていた。

そんなある日、冷凍ケースから一人の人間が目覚める。
彼女は多額の報酬につられ、コールドスリープの実験体として名乗りを上げたのだ。
六か月間で終了するはずだった実験だが、途中で戦争が始まり、実験担当者は逃亡。
彼女が目覚めたのは、二百年後の、自分以外の人間が滅亡した世界だった。

絶望する人間の女。
初めて人間に出会い、希望に胸を膨らませるアンドロイド。
時を超えた出会いは、荒廃した世界に何をもたらすのか。

「役に立ちたいんです。それが、私の生まれてきた意味だから……」

【本編】

■ケイの家、食卓

(朝食を準備する母。そこにケイが入ってくる)

ケ イ「お母さん、おはよー」
母  「おはよう、ケイ。朝ごはんできてるよ。はい」
ケ イ「うん、ありがとう。いただきます」
母  「いただきます」
ケ イ「うん、おいしい!」
母  「ありがとう。今日のお仕事はどこ? 近く?」
ケ イ「いや。今日は遠いの。D地区の南のほう」
母  「え……大丈夫なの? あっちは治安が悪いって……」
ケ イ「平気平気。心配しすぎだって」(リモコンつける)
   
アナウンサー(録音音声)
 「おはようございます。朝のニュースをお届けします。最初のニュースです。
  D地区でまた強盗事件が発生しました。被害者は全治六か月の重傷です」

母  「ねえ……」
ケ イ「だ、大丈夫だよ。強盗だって私みたいな貧乏人狙わないって」
母  「でも……」
ケ イ「それに治安が悪い分給料も良かったの。
    1日で7500ジュエル! これで今月は楽になるよ」
母  「うん……あ! じゃあ、これ! お守り持っていって」(首にさげる小さな袋)
ケ イ「これ、お母さんが大切にしてるやつでしょ? いいよ、悪いよ」
母  「いいから!」
ケ イ「わかったよ……ありがとう」(首にさげる)
   
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