夢で逢いましょう

(ゆめであいましょう)
初演日:0/0 作者:布来 言好
 開幕。夕暮れの公園。ベンチには一人でぼんやりと麻美が座り込んでいる。
 上手から幸恵が通りすがる。

幸恵 あれ、麻美じゃん。こんなとこで何してんの?
麻美 え?ああ、さっちゃんか。……ちょっとここでぼーっと。さっちゃんは?散歩?
幸恵 ううん、買い物。まさかこの年にもなってお使いだなんてね……。
麻美 大変だねえ。
幸恵 ま、お父さんが久々におっきい契約取れたーって大喜びしてたからね。夢の中でまで働いてる父君様を、たまにはねぎらってあげようかな、と。
麻美 へえ……楽しそう。じゃあ今夜はごちそう?
幸恵 ううん、主役たってのご希望でお母さん特製の肉じゃが。お肉の値段がいつもと比べてグラム当たり50円ほど高くなるけど。
麻美 いいねえ……。ささやかな幸せって感じ。かわいい。
幸恵 かわいいって……。40超えたおっさんだよ?毎年人間ドックで血圧と血糖値が基準値ギリギリですとか言われてくるような……。
麻美 そうかなあ……。いいと思うんだけど。
幸恵 何?麻美って意外とオヤジ趣味?
麻美 違うわよ。そういうんじゃないって……。
幸恵 へえ〜……。

幸恵、麻美の顔を覗き込みながら隣に座る。

麻美 ……な、何?
幸恵 何かあったでしょ。
麻美 え?
幸恵 やっぱりそうだ。で、何があった?
麻美 何って……。別に。大した事じゃないよ。
幸恵 あんたが大した事ないって言うのはいつものこと。じゃあそうですかー、なんてならないからね。何があったか話しなさい。話さないとうちのかわいいお父さんが肉じゃが食べたさにどんどんやせ細っていくわよ……。
麻美 さっちゃんとこのお父さんどんな体質なのさ……?
幸恵 なんでもいいから。さあ言いなさい。なんでも聞いたげるから。
麻美 ……別に。ちょっと寝不足なだけ。
幸恵 もう……つれないねえ。
麻美 だから本当に何もないんだって。
幸恵 あのねえ……。あんたとあたしと、もうどんだけの付き合いになると思ってるの?何もないとか言われたって嘘だってすぐわかるっての。
麻美 どんだけって……。この4月に会ってからだから……三か月でしょ?
幸恵 正解。三か月。もう三か月も経ってるんだよ!?そりゃ麻美の一人や二人、考えそうなことくらい分かるようになるって。
麻美 短い。短いから。三か月は短い。
幸恵 そんなことないって。そうねえ……例えば……そこに自販機があるでしょう?
二人 ……いやそれ看板だから。
麻美 え?
幸恵 ふふん。あんたならそういうと思ったのよー。ね、正解だったでしょ?
麻美 いや誰だっておんなじこと言うって……。
幸恵 それが麻美の言いそうなことだってこと。まあそんな感じだから、この幸恵ちゃんになーんでも相談しなさい?
麻美 もう……大丈夫だから。とりあえずお肉買いに行きなさいよ。晩御飯遅くなるよ。
幸恵 つれないねえ。……ああ、いつになったら麻美ちゃんは私に心を開いてくれるんでしょう。それでも、この小野田幸恵は、あなたを待ち続けるわ。
麻美 はいはい、ありがとねー。
幸恵 まったく、ほんとにつれないなあ。
……あ、じゃあ一緒にお肉買いに行こうよ。肉屋のおじいちゃん、若い子に弱いからコロッケくらいおまけしてくれるかもよ。
麻美 コロッケはいいよ……。晩御飯あるし。
幸恵 なーんだ。……まあ、コロッケはともかく、あたしも一人で行くより麻美と行ったほうが断然楽しいからさ。暇だったらどう?
麻美 しょうがないなあ……。どこのお肉屋さん?
幸恵 幼稚園の裏。ほら、坂上ったとこにある……。
麻美 ああ、あそこ……。
幸恵 そうそう、あそこ。あたしんち昔っからあそこに通っててさー……。

話しながら下手へはけていく二人。
暗転。

明転。薄暗く、幻想的に照らし出された公園。配置された遊具は全く同じであるにも関わらず、その様子は昼間とは大違いである。

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