マッカーサーと天皇


主要登場人物

マッカーサー
天皇
フォービアン・バワーズ
アメリカ兵

その他、幽霊たち




暗闇の中で、日本人の作った戦争のプロパガンダ映像がスクリーンに映し出される。

「天皇陛下、ばんざーい」という国民たち。
敬礼をする隊員たち。
アメリカ艦隊へ単騎突入する特攻機。

そして、スクリーンにはこんなことがうっすらと記される。
バックには、天皇ヒロヒトの玉音放送が流れている。

「一九四五年八月十五日、日本はおよそ3年半に及ぶアメリカとの戦争に負けた。
 アメリカ軍は、次から次へと戦争犯罪者たちを逮捕し、牢獄へ入れた。
 それは軍人だけでなく、武士道を教えた教員やプロパガンダ映画を作った映画人、そして歌舞伎役者たちにまで及んでいった。
 なぜそんな民間人をも捕まえたのか。理由は他でもない。
日本人の文化は軍国主義を助長させたと、アメリカ軍に判断されたからである。」

溶明。
舞台は、アメリカGHQ連合本部の応接室。
(フロアは、チェスの盤を想起させるような、白と黒の四角いタイルがいい。テーブルはこげ茶色の木製のもの。椅子は、上手に黒の椅子が一個、下手に白の椅子が一個あるのが望ましい。)
マッカーサー、一人でチェスの駒を動かしながら考え事をしている。

マッカーサー「・・・いよいよこの戦いもチェックメイトだ。ようやく、この長い戦いに終わりが告げられる。本当に、人類の存亡をかけた戦いだったと言っても、大げさな話じゃなかっただろう。さて、局面は感想戦に突入だ。・・・・この戦争の原因は一体何だったのか。そもそもなぜ、あんなばかばかしい戦争が起きたのか。理由は定かではないが、彼らはみな、一人の男のことを口にした。その男の名は、ヒロヒト。日本人は彼の事を『天皇陛下』と呼び、彼らは天皇を主とした新しい秩序をつくろうとした。何故、彼らはあの男を神と奉るのか。なぜ彼らはあの男を恐れ敬うのか。そこは、聖書の価値観を重んじる私たちアメリカ人には到底理解できない。到底、私には分からない。どうしても・・・分からない。」
アメリカ兵の声「マッカーサー総督、来ました!」
マッカーサー「分かった。中に入れろ。」
アメリカ兵の声「Yes,sir!(はい、総督!)」

ただ盤面ばかりを見つめているマッカーサー、駒を動かして一人で局面の反省をして
いる。

マッカーサー「・・・ついに来たか。天皇ヒロヒト。彼のために死んだ若者や民間人は多い。何故人々を救う事ができなかったのか。もちろん、彼一人が悪い訳ではないだろう。彼を取り巻く文化こそが、こんな悲劇を生んだともいえるのかもしれない。もしそうだとすれば、今こそ、この国に民主主義を根付かさなければ、この国は・・・いや、この世界は・・・」
アメリカ兵「総督!総督!」
マッカーサー「・・・Don’t worry!I’m OK. Come on,TENNOU HIROHITO!!(心配するな!俺は大丈夫だ。来い、天皇ヒロヒト!!)」

音楽。
天皇、ゆっくりと登場。
どこからか、さまざまな声が聴こえてくる。

「うらめしや」
「アメリカ人め」
「人殺し!」
「鬼!」
「鬼畜米英!」
「返せ!」
「俺らのすべてを返せ!」
「返せ!」
「返せ!」
「俺らの幸せを返せ!」
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