恐怖の味噌汁

Dear My Diary

(きょうふのみそしる)
初演日:0/0 作者:吉野瞬
 
「恐怖のみそしる」〜Dear My Diary〜

登場人物
 ・少年
 ・ヨウ
 ・ユウ
 ・少女
 ・エキストラ(京女、魔女、子供、メイド、空手の先生)

*白いパネルと文字について
 1案:パーテーションに白い不織布などを張っておき、字を書いた紙の裏にマジックテープなどをつけておき、
それを貼ったりはがしたりする。
 2案:ホワイトボードを用意し、字の裏にハサミで切れる薄い板状のマグネットを貼っておく。

全体照明
少年、中央 
後ろには白いパネルが並んでいる

少年 「ここはどこ?」

少年あたりを見回す。動きながら手に持っている黒い短剣に気がつく

少年 「何だこれ? こんなのいつから持ってたんだ」

少年、黒い短剣をベルトなどに挟む
ヨウ、ユウ、登場。少年に走り寄る

ヨウ 「ああ、やっと来ましたか、さあさあこちらに」
ユウ 「勇者様、あなたをお待ちしておりました」
ヨウ 「まあまあ、お疲れでしょう、まずはこちらへ」

ヨウ、椅子を持ってきて座らせる。

少年 「だれだ、あんたたちは、ここはどこだよ」
ユウ 「では、私が御説明いたします。ここは文字の中でございます」
少年 「文字の中?」
ヨウ 「ああ、ここで説明してもわからないでしょう。今降りてきますのでお待ちください」

ヨウ、ユウ、中央に立ち、両手を上に広げて見上げる。
少年、立ちあがり二人の視線を辿るように上を見る。
3人しばらくそのまま動かない

少年 「あのー、上から何か降ってくるんでしょうか」 
ユウ 「主様の文字です」 
少年 「あるじ? さま?」
ヨウ 「そうです。この世界は主様の日記の世界です」

ヨウ、ステッキを振る
音(魔法の効果音、ページがめくれる音)
黒子が出てきてパネルを返すと文字が並べられている

ユウ 「ほらこれ、これは主様が小学生の頃に書かれた日記の一つです」

パネルには文字が『10月16日 がっこうできょうとうふのみそしるをつくった』と並べられている。

少年 「全部ひらがなで読みづらいなあ」
ヨウ 「学校で、今日、豆腐の味噌汁をつくった。と書かれています」
ユウ 「おそらく主様は家庭科の調理実習でお味噌汁を担当されたのでしょう」
少年 「じゃあ、オカズは何だったんだよ」
ヨウ 「それは書かれていません」
少年 「え? これでおわり?」
ユウ 「主様は字を書くのがお嫌いのようです。日記の文章はいつも一行くらいなのです」
ヨウ 「なので、いまだに一冊目が終わりません。それでも日記を書くことだけは続けておられます」
ユウ 「ええ、それだけは続いています」
少年 「へえ、それにしても句読点くらい打たないと意味がわからないよ、これなんかさあ、こうしたら」

少年、文字の『ふ』と『う』を入れ替える。

少年 「ほら、今日、豆腐の味噌汁作った、が、京都風の味噌汁作ったになっちゃった」

音(和風の音楽)
着物を引きずった京女登場お椀を持っている

京女 「へえ、これが京都風のお味噌汁どす、お一ついかがどすえ?」
少年 「え? なに、どうしたの?」
ヨウ 「ああ、豆腐の味噌汁を京都風の味噌汁に変えてしまうなんて」
少年 「え? いけなかった? ごめん、すぐになおすよ」

音終了
京女退場
少年、文字を張りかえようとして『と』『う』を落としてしまう。
パネルの文字『きょうふのみそしる』となる

少年 「いけね、落とした」
ユウ 「大変、今度は、恐怖の味噌汁になってしまったあ」

音(ハロウィン系の曲)
黒マントに大きなつばの黒い帽子の魔女登場
お玉と鍋をもっている

魔女 「ひっひっひ、恐怖の味噌汁じゃあ、一口食べたらどうなるかわからん恐怖の味噌汁じゃあ」
少年 「なんなんだよこれ」
ヨウ 「この世界は文字で成り立っています。ですから文字の影響を強く受けてしまうのです」
魔女 「ひっひっひ、(会場に向かう)ほうれほうれ」
ユウ 「(魔女をおさえながら)大変です。恐怖の味噌汁を会場の観客にまこうとしています」
少年 「え? 会場? 観客? どこに?」
ヨウ 「そこは大人の事情ということで。それよりも早く文字を元に戻してください」
少年 「わかったよ」

少年、文字を元通りに貼る。
魔女退場

ヨウ、ユウ 「助かったあ」
少年 「なんだか知らないけど、ごめん」
ヨウ 「いいえ、これこそが勇者のあかしです」
ユウ 「そうです。こんなにも簡単に主の書きしるした文字を入れ替えてしまえるなんて、
まさしく勇者様です」
少年 「そ、そうなの?」
ヨウ 「はい、だって、こんなこと、私たちにはできないことなんです」
ユウ 「主様の書いた文字は決して動かせません。それが出来るのは勇者様だけです」
少年 「勇者って呼ぶのはやめてよ、恥ずかしいよ」
ヨウ 「仕方ありません、主様は日記の中であなた様を勇者と呼んでいたのですから。ほら、これです」

ヨウ、ステッキを振る。
音(ノートのめくれる音)
パネルが回転し、字が並んでいる。

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