りんご病棟

(りんごびょうとう)
初演日:2018/3 作者:岡崎美加
『りんご病棟』
『世界観』…へんしんりんごが義務化された世界。

患者男:世界に違和感を感じ続けている
医者:刷りこもうとする
医者B:医者が変身した姿
患者女:違和感を感じるもう1人の人

【舞台にはただ一人患者男が立っている】
声1:ほら、りんごをお食べ
患者男:やだ、食べたくない
声2:りんごを食べるんだよ
患者男:やだ、食べない
声3:つべこべ言わず食え!!
患者男:やだ!!!
(大きな声と共に暗転)

【第1場:食べたくないりんご】
(明転すると舞台には患者男と医者。場所は病室。)
医者:まーた君は…りんごだけ残して…
患者男:だって、食べたくないんだ
医者:いいかい、君。昔からりんごは万病に効くとされているんだよ。「1日1個のりんごは医者知らず」と言われていてね、とても体に良いんだ
患者男:ただのリンゴなら、僕だって食べるさ。でも、このりんごは違う…。そうだろ?
医者:君の察する通り、これはへんしんリンゴさ。食べたらどんな外見にだってなれる。夢のようなりんごだろ?何で食べないんだい?
患者男:食べてしまったら、僕は僕でなくなってしまう気がする
医者:それはなぜだい?君のアイデンティティは全て、その容姿に依存しているというのかい?
患者男:そういう訳ではない…でも、容姿だって大切な僕の一つなんだ。
医者:うんうん、君の言うことはわからなくもない。一理ある。いやー、でも、困ったねぇ。今はりんご法が出来てへんしんりんごを食べて自分以外の姿でいることが国民の義務となってしまっているからねぇ…食べないじゃ済まされないんだよ
患者男:知ってるよ。だから、僕はここにいれられているんだろ?
医者:嫌な言い方をするねぇ、君。まぁ君からしたら不本意なんだろうけど…でも、皆が足並み揃えてやっていることを乱しちゃあ、いけないよ。
患者男:何で他の姿でいなくてはいけないのか、理解できない。
医者:平和の為だよ
患者男:何で自分の姿以外でいたら、それが平和につながるの?
医者:その昔、へんしんりんごができる前の時代は、容姿によるいじめや差別があったんだ。ひどい時代なんて黒人であるというだけで奴隷にされたり…ね。勿論時代が変わってそんな野蛮な風習はなくなったよ?でも、本質は変わらない。肌が白い人は黒い人を見下し、差別し続けた。…それが、どうだい。へんしんりんごのおかげで容姿に優劣がなくなったんだ。いつでも好きな肌の色や性別、顔になれるからね。これによって皆真の意味で平等になれた。すごいことだろう?
患者男:それは、すごいことだと思うよ。でも、それで何で全員が全員、へんしんりんごで別人になり変わらなくちゃいけないのか…それがわからないんだ。
医者:結局差別がなくならなかったからさ。最初は、変身リンゴも強制じゃなかった。でも、それだと結局、変身してない人間が変身している人間を見下し始めるんだ。変身リンゴで違う容姿になれても、変身リンゴを食べてない人がいる限り、平等にはならなかったんだよ。
患者男:それの理屈も…わかる…でも、僕は食べたくないんだ。
医者:(ため息をついて)君は、この皆で作り上げた平和で平等な世界を壊したいのかい?
患者男:そういう訳じゃない、でも、怖いんだ
医者:怖い?
患者男:だって、そうだろ?変身リンゴで別の容姿になって、本物の容姿ではない僕が本物の容姿ではない人と関係を築く。そこに本物はあるのかい?
医者:それは哲学的な話になってくるね。
患者男:先生だってそうだ。今の容姿は    だけど、本当は男なのか女なのか若いのかいい年なのか…本当の先生がわからない。
医者:本当の私の容姿で今、君の目の前にいたとしても、見た目だけから本当を知るというのは至極難しいことだと私は思うよ。女性らしい男性もいれば、男性らしい女性もいる。年の割に老けて見える人もいればすごく若く見えるのに実年齢を聞いたら良い年だったという人もいる。見た目からだけで、君は性別も年齢も的確にあてられるの?
患者男:できません
医者:そうだろう?そうなってくると男なのか女なのかとか年齢だとかは必要なことなのかい?君は、何をもって私を「本当の私」だと判断するんだい?
患者男:それは…
医者:ほーら、答えられやしない。変身りんごで違う容姿になったって人間の本質的な所は変わらないもんさ。昔からある言葉を借りるなら、人間は心が大事ってやつだ。
患者男:…理解はしてます。
医者:君も強情だな。私に論破されても決してそのりんごを食べてはくれないんだね。…参ったな…今日も院長にどやされちまう
患者男:ごめんなさい
医者:なーに、君の気持ちもわからなくはない。ゆっくりでいいから君を説得していくよ。明日は色仕掛けでもするかな
患者男:先生…
医者:冗談だよ。それじゃあ私は他にも仕事が残っているから一旦退席させてもらうよ。次会う君が変身リンゴを食べて今の容姿じゃなくなっていることを祈っている(はける)

【第2場:ハニートラップ】
(地明かり落ちて患者男にのみサスがあたる)
患者男:その昔、どんな姿にもなれるという夢のようなアイテム『変身りんご』が発売となった。変身りんごの登場により、容姿によるコンプレックスとは無縁になった。肌の色まで変えられるようになった変身りんごの登場で、世界からは人種差別すらなくなった。そして、そんな平和な世界を守る為、オリジナルの容姿の価値をなくすべく、変身りんごを食べることは国民の義務となった。皆喜んで受け入れた。皆が喜ぶそれを拒絶する者はどこかがおかしいと、変身りんごを拒む者は精神病棟へ強制入院させられ、外の世界と隔離された。皆が喜んで受け入れるものを食べられない僕は、やっぱりおかしいのだろうか…
(一瞬の暗転後、通常の舞台照明に戻る。舞台には患者男。シナノゴールドを持っている)
患者男:今日はシナノゴールド…か…昨日は紅玉(こうぎょく)だったしほんとに毎日毎日よく出すよ。
医者B:あら〜、まーた食べてないの?駄目な坊やね
患者男:え?あ…先生?
医者B:うふ♪ど〜う?今日はお色気たっぷりの女医さんよ〜?
患者男:昨日、色仕掛けは冗談だって
医者B:いや〜、君が期待してたら悪いなぁって思って女医さんできたのよ。…嬉しい?
患者男:き、期待なんてしてませんから!そ、それに、僕はそういう色気とかに屈するタイプじゃないんで
医者B:ふ〜ん?(ボタンを一つ外す。照れて目を逸らす患者男)ね〜え、君?先生のお願い、一つ聞いて欲しいな〜ぁ(患者男のほっぺたさすり誘惑する)
患者男:や、やめてください…

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