桜咲き初めし頃〜タイムカプセル狂想曲〜
「桜咲き初めし頃〜タイムカプセル狂想曲(ラプソディー)〜」

登場人物・・・12人+エキストラ

○高3の生徒たち
浩子・・・5人のまとめ役。勢いだけで生きている。
沙良・・・おっとりしている。ストーリーテラー。
聡子・・・まじめ。一般受験の後期日程まで粘り大阪の大学を目指す。
香織・・・女の子らしい普通の子。
里香・・・運動部。脳みそ筋肉系女子。
エキストラのクラスメイト数名。
○大人たちなど
加藤先生・・・担任。30代後半の恐そうな女性の先生。
伊地川ルイ・・・車校の先生。30代くらいの女性。
写真屋さん・・・OPでクラスに写真を撮りに来る。
巫女さん・・・お守りを売る神社の巫女。
後輩・・・里香の後輩。
聡子の母・・・聡子に合格通知の手紙を持ってくる。
イケメン・・・浩子の妄想の相手。

舞台装置は箱やパネルを使い抽象的なもので。箱やパネルの位置、照明の変化、背景のエフェクト等で場転。











1場 3月1日
音響「マイスタージンガー」で緞帳が開く。開ききると音響フェードアウト。
生徒達が、胸にコサージュを付け、手には卒業証書を持って教室に入ってくる。
   生徒達はそれぞれの座席に座って、一斉に姿勢を崩す。

里香   (椅子に座り、卒業証書で顔をバサバサ扇ぐ)あ〜、やっと終わった! 緊張で手汗やば。
浩子   ちょっと、私たち卒業したんだよ、卒業。もっと感動に浸りなさい よ。
里香   だって私まだ部活で学校来るし。
浩子   そりゃそうだけどさ、やっぱり卒業式って特別でしょ。ね、聡子。

    浩子は聡子の机の方を向く。

浩子   あれ、何やってるの?
聡子   単語の勉強。私もうすぐ受験だから。
浩子   もう!卒業気分でないじゃん!香織ー!

    香織、鏡を取り出し前髪を整え始める。

浩子   ちょっと、香織も!
香織   もうすぐ写真撮るでしょ。前髪直さなきゃ。
浩子   あーあ、せっかく卒業式なのに、これじゃいつもの教室じゃん。ねえ、沙良もなんか言ってやってよ!
沙良   え?ああ、うん。そうだね。

    沙良が舞台の中央に立ち単サスが当たる。他の生徒達はストップモーション。

沙良   あ、皆さん初めまして。私たち、山百合女学園高校の3年生です。今日は3月1日。ついに、本当に卒業しちゃいました。なのに、私たちはいつもの教室にいるのと同じようなことばっかり。実は、あんまり卒業した気がしないんです。多分、卒業証書を受け取って、卒業おめでとうって言われても、すぐに心から卒業できるわけじゃないんです。もしかすると、卒業っていうのは、卒業式から始まって、3月いっぱい続く、ゆっくりとした変化なのかもしれません。これは、卒業式から3月の終わりまでの1ヶ月、私たちが少しずつ高校を卒業していく、高校生でも大学生でも社会人でもない、子どもでも大人でもない、不思議な時間のお話しです。
   
    照明が元に戻り皆が動き始める。
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