ビンロウの夜

(びんろうのよる)
初演日:0/0 作者:海浮 宙
ビンロウの夜  
   
 脚本:青春ヶ丘 ヒューイ
 
 (登場人物)
 A  カズキ・アイハラ
 B  三好
 C  横田先輩
 D  須貝さん
 E  エンドウ/アイハラのお祖母ちゃん
 X  ラーメン屋の店員/黒服
 Y  タモさん/黒服
 Z  ビンロウ売り
 
 男:3
 女:2
 性別自由な脇役:3
 
 その他登場人物は各団体で決めてください。
 
 ?【疲れをフットバス!】
 
 舞台は赤く照らされている
 踏切の音が響いている
 A、舞台中央に立っている。
 
 間
 
 踏切の音が一瞬止む
 
 A:…三好。
 
 電車が凄い勢いで通る音と踏切の音
 
 暗転
 
 のどかなBGM
 
 女:国立美浜大学の皆様おはようございます、美浜大学放送部の高橋楓です。ただ今明日の放送部の発表に向けてマイクテストを行わせて頂いてます。さてみなさん、いよいよ美浜大生が待ちに待った大学祭、通称『美浜祭』が明日開催されます。本日、美浜大生の皆様は明日に備え各団体で最終準備をしていると思われますが、気持ちばかり急がず元気に安全に楽しめる美浜祭を目指しましょう。毎年個性豊かな美浜大学の部活やサークル、その他有志による露店、劇等の発表が人気な美浜祭。今年はどのようなドラマが待っているのでしょうか。それでは皆様、楽しい美浜ライフを満喫してください。美浜大学放送部、高橋楓でした。
 
 鳥の鳴き声、道路を通る車や人の話し声がする
 
 都会の朝
 
 A、布団で寝ている(上手)
 
 A:…うぅーん。楽しい美浜ライフ…むにゃむにゃ。
 
 間
 
 A、起きる
 
 A:ふぁ〜ぁ…ポチッとな。
 
 A、テレビをつける
 
 TV 『お昼休みはウキウキウォッチングあちこちそちこちいいっとも〜お昼休みは〜ウキウキウォッチング〜…
 
 A:な…なにぃー!?
 
 A、布団の横の目覚まし時計を確認する
 
 A:な、なにぃー!?
 
 Y、マイクを持ってサングラスをかけて登場
 
 TV『…ジャッジャジャジャン(タモさんがお客さんの拍手をとめる例のやつ)
 タモさん 「はいみなさんこんにちは、今日も暑いですね」
 お客さん 「そーですね!」
 タモさん 「なんでも今日は“パフェの日”らしいですよ」
 お客さん 「そーですね!」
 タモさん 「今日の最高気温は三十二度くらいまで上がるそうです」
 お客さん 「そーですね!」
 タモさん 「六月の終わりでこんなに暑かったら一二月には八十度くらいになってるんじゃないですかね」
 お客さん 「そーですね!」
 タモさん 「んなこたぁない!」
 お客さん 「アッハハハ」
 タモさん 「アッハッハ」』
 
 A、テレビを消す
 
 タモさん、退場
 
 A:アッハッハじゃないよ…もう十二時、完全に遅刻だぁ!あ、待てよ?どうせ今から行ったってあの女、おっとっと横田先輩にぐちぐち文句言われて面倒くさい仕事を押し付けられるだけだろうな。
 
 間
 
 A よし、二度寝しよう。サークルの準備なんてしーらね!おや住友生命〜。
 
 A、二度寝
 
 「4時間後」と書かれた紙を広げた黒子が上手から登場しAを踏み下手へ退場
 
 ティロリロリン
 
 A:うぅ…あい、もじもじ。
 
 C、足湯サークルの伝統ある格好(お祭りはっぴのような格好で足をまくっている、頭にはハチマキ、背中には『足湯』の二文字。足湯に入る気マンマンな格好)で登場
 
 C:もーしもーし。
 A:あい、もじもじ。
 C:アイハラくーん、今どこでなにしてるのかな〜。
 A :その声は…横田先輩ですか?
 C:そうだよ。あんたいまどこ?そもそも大学来てる?今朝から姿が全く見えないんだけど、どういうことかなぁ?
 A:いま…いぇっ、あの…まだ家です。
 C:えっ?
 A:えっ?
 C:家?
 A:家。
 C:…ふざけんじゃないよ!あんた今日がなんの日か分かってんの、えぇ!?
 A:今日…今日…今日…パフェの日ぃ?
 C:はぁ?殺されたいの?
 A:あぁ嘘です、冗談ですよ!今日は今日は〜っとえーっと…なんの日だっけ…ほらあの…
 C:ははーん。そうやって覚えてないフリをして逃れようって魂胆ね。
 A :いや違いますよほら、あの…あぁ!
 C:あぁ?
 A:あのー、僕たちが付き合い始めて...ちょうど162日ですよね?
 C:…
 A:あぁよかった、合ってたみたいだ。
 C:…私、彼氏いない歴イコール年齢なんだけど。
 A:しまった、“怒られないアンド上手くいけば横田先輩と付き合える〜作戦”がバレてしまった!
 C:はぁ、あんたバカァ?今日は我らが美浜大学の学祭、美浜祭の前日!私たち足湯サークル『疲れをフットバス!』だって一生懸命準備してるってのに副リーダーのあんたは「今日…パフェの日ぃ?」じゃないよ!
 A:あぁそれそれそれですよね!やけに説明口調ですけど誰かにつたえてるんですか?
 C:は?
 A:あぁ、はいはいはい!もちろん美浜祭のことは覚えてますよ?
 C:覚えてるのは当たり前なんだよ。
 A:忘れるまで覚えときます!
 C:…はぁ、全くもう。相変わらずマイペースねぇ。
 A:先輩には負けませんよ。
 C:なんだって?
 A:あぁ、今すぐ準備します!待っててください!
 C:四十秒で支度しな!
 A:そんな、四十秒はきついっすよ!
 C:三分間待ってやる!
 A:大声出さないでください、頭に響きます。
 C:はっはっは。…頭に響く?さては貴様昨日も美浜の街を飲み歩いてたな?
 A:ぎく!ソンナワケナイジャナイデスカ!風邪ですよ!風邪!
 C:なーんか怪しいなぁ、どうせ可愛い女の子がいるお店で“焼肉”でもパクパク食べてたんでしょ?んでそのお店の可愛い女の子をお持ち帰りしてあわよくば自分の生肉を…
 A:っだーい!なに言ってるんですか!ほらそろそろ準備再開しなきゃ!横田先輩がこんなところで油売ってたらみんな動けないでしょ?はい、さよなら!お気をつけて!ばいならならばい!また後で!
 C:あぁ、待てこら!話はまだ終わってないって…
 
 ツーツー
 
 C:あいつ、本気できりやがった。
 
 舞台があらわになる。
 下手は布団がたくさん敷かれている。上手は大きな足湯桶と椅子が5個置かれており「足湯サークル『疲れをフットバス!』」の看板が立てられている。
 
 C、快眠サークルのパイプ椅子に座り足湯桶に足を入れる。
 
 C:はぁ、どうしよう
 
 E、足湯サークルの伝統的な衣装で登場。頭にはハチマキを巻いてメガネをかけタオルなどが入ったカゴを持っている。
 
 E:よこたせんぱーい、アイハラパイセンどうでした?まさかまだ家で寝てたりして。
 C 御名答、ほーんとダメなやつだよあいつは。
 E マジっすか、まぁアイハラパイセンらしいっちゃあらしいですけどね。
 C うーん、まぁね。
 E しっかしアイハラパイセンも運が良いなぁ。
 C 運が良い?
 E アイハラパイセン、今日の一限の講義出なかったら単位落として留年確定だったんですけど。なぜかその講義担当の教授がお母さんが倒れたとかで地元に帰ったらしくて…今朝の講義が無くなったんですよ。
 C ふーん、でも人が倒れてるんだから運が良いとか言っちゃダメだよ。
 E まぁそうですね、すみません。でも世界は少しだけアイハラパイセンを中心に回ってる!一年で三日くらい。
 C まぁそれはわかる。
 E ですよね〜、うんうん。ずるいなあ、アイハラパイセン!
 
 間
 
 C ...エンドウちゃん。
 E なんですか?
 C 聞き間違いだったらごめんね?
 E はい。なんでしょうか?
 C …パイセンってなに?
 E あぁ、パイセン...昨日の飲み会の罰ゲームなんですよこれ。賭け事をして、負けたほうが勝ったほうの言うことを一つ聞くってやつだったんですけど。んで私が負けたんで今日から一週間アイハラ先輩のことをアイハラパイセンって呼ばなきゃいけないんです。
 C へー、アイハラのやつ昨日はエンドウちゃんを連れまわして呑んでたんだ。
 E 連れまわすっていうか、私が頼んだんです。
 C え?
 E いや、私小さいころから夜の街で働いている大人のお姉さんのふくよかな胸と豊満な体が見たかったんです。
 C ふーん、変わってるなんてもんじゃないね。
 E そんなにですか?
 C かなりね。
 E うーん、でもなんでアイハラ先輩、アイハラパイセンって呼んでほしいんだろなぁ。まさか元カノがそう呼んでたとか?でもアイハラ先輩...アイハラパイセンが年下をオとせるわけないしな...
 C …あれ、エンドウちゃんって何歳だっけ?
 E え、十九歳です。
 C はいアウトー!
 E え?
 C え?じゃないよ、え?じゃ。未成年の飲酒は法律で禁止されてます。
 E あぁ、嫌だなぁ私は呑んでないですよ。ただアイハラパイセンがお酒に呑まれて口から吐き出した横田先輩への愚痴を優しく麦茶を飲みながら「うんうん」と聞いていただけです。
 C あー、じゃあセーフか!
 E セーフです!
 C E はっはっは〜
 
 間
 
 C 愚痴!?
 E あ、言っちゃった。
 C ちょっと愚痴ってどういうこと?
 E で、これどこに置いといたら良いですか?
 C あ、言っちゃいけない約束なんだ。
 E すみません横田先輩。アイハラパイセンが昨日の代金払ってくれたんで今日はアイハラパイセンの味方なんです。
 C この女怖いなぁ。
 E で、先輩この荷物どこに置いたらいいですか?
 C あぁちゃんと仕入れてきてくれた?
 E はい!言われた通り買ってきましたタオル!
 C うんうん。
 E あと石鹸と入浴剤とリンス!
 C あのね、ウチはスーパー銭湯じゃないの。
 E え?
 C これはね足湯なの、足をつけてあー気持ちいいってだけの世界なの。洗わないから石鹸は要らない入浴剤も必要なし。リンスなんかもってのほか!
 E すみません。
 C リンスってなに、使うとしたらすね毛がサラサラになるの?
 E すみません、片付けますね。
 C まぁいいよ、そのへん置いといて。このへんから…このあたりまでが私たち足湯サークル、『疲れをフットバス!』が発表に使っていい領域だから。
 
 C、舞台上手から中央の境界線あたりまでを指す。
 
 E 発表って、この足湯を使ってなにか出し物をするんですか?
 C はぁ?我らが足湯サークルは足湯を愛し足湯に愛され足湯に青春、つまりアオハルを捧げるサークル!学祭で足湯サークルが何をするかもわからないものが足湯サークルに参加していていいのか、足湯を好きになって良いのか!もちろん良いんだ!参加する権利も好きになる権利は誰にでもある!しかしそこから足湯をどれだけ愛していくかが鍵だ!
 E 横田先輩、怖い怖い!
 C 貴様に足湯とは何かという概念を今から小一時間少々かけて脳に刻み込んでやろう!感謝するが良い!
 E わ、私は一回生なんで学祭で何を出すかなんて知らないんです、許してください!なんでもしますから!
 C なに…?あぁ、エンドウちゃんは一回生だったか。そりゃ知るわけないよね、なら今回は許してやろう。
 E あぁ良かった。
 C でも変わってるよね、こんな変なサークルに入ろうだなんて。
 E はい、いや実はアイハラパイセンに誘われて無理やり入れさせられて。
 C 知り合いだったの?
 E 高校の部活の先輩なんです、昔からバカで周りが見えなくて…
 C ふーん、そんな風には見えないけどなぁ。私の中のアイハラはちょっとネジが外れてるけど真面目ってイメージだよ。
 E 私も大学で再会して驚きました、これがあのバカアホマヌケなアイハラパイセンかぁ!?って。
 C ふーん、昔はバカアホマヌケだったんだね。
 E はい。
 C そしてエンドウちゃんを無理やり足湯サークルに入れた、と。
 E 全く、今でもバカアホマヌケでしたよ。
 C うんうん、あいつもたまには良いことするなぁ。
 E え?
 C じゃあ今から足湯サークル『疲れをフットバス!』リーダーの私、足湯界のプリンセスこと美浜大学八回生横田愛美が君にマンツーマンでうちのサークルの出し物について手取り足取り優しく可愛く教えてあげよう。
 E えぇ〜、ありがとうこざいますでいいのかなぁ。
 C いいんだよ!ちなみにサークル名の『疲れをフットバス!』の由来ってなんだと思う?
 E えぇ?疲れを吹っ飛ばす、どっかに飛んでけって意味じゃないんですか?
 C もちろんその意味もあるよ、でももう一個意味があるんだ。わかるかな?
 E うーん、わからないです。
 C じゃあ足は英語で?
 E …フット?
 C お風呂は英語で?
 E …バス。
 C 足湯は英語で?
 E フットバス!
 C 大正解!二つの意味がかかってるの、オシャレでしょ?
 E ダジャレでしょ。
 C ちっちゃいことは気にするな!よし、じゃあ早速説明行こうか。足湯サークルの出し物はね、まずこのようにおっきい木造の風呂おけを用意するんだ。って言っても全身入るお風呂じゃないよ?見ての通り足首まで浸かる深さだよ。ついてこれてるかな?
 E はい!それでなにをするんですか?
 C そこに水をジャバーッと入れて、この湯沸かし器をスイッチオン!お水は瞬時に!……イヤ、ニジカンクライカカルケド…熱々になる!ついてこれてるかな?
 E はい!それで、熱々になるとどうなるんですか?
 C あーっと言う間に、足湯の完成さ!ちゃぽん!ふっー!気持ちいいー!
 
 間
 
 E …
 C …
 E 足湯。
 C そう、足湯。
 
 間
 
 E …足湯。
 C イェス、足湯。
 
 間
 
 E えぇー!?ほんっとうにただの足湯じゃないですか!ひねりもなにもない!センスのかけらも感じられない!下の上!良くも悪くもない!決してつまらないわけじゃないけどそこまで面白くもない!おじいちゃんおばあちゃんからは大好評かもしれない!
 C な、そんなに言わなくてもいいだろ!現におじいちゃんおばあちゃんからは大好評だけど。
 E 他のことも事実ですよ!
 C 事実でも言っちゃいけないことはあるんだよ!
 D 君たちー!うるさいぞー!静かにしないかー!
 C この声は…
 E …誰ですか?
 D とぅっ!
 
 D、下手より寝巻き姿で走って登場。頭には寝る時の帽子をかぶってる
 
 勢い余って前に転ぶ。この時に手帳を落とし横田が拾い上げる
 
 D おおっとっと、やぁみんな、ごきげんよう!(キラーン)
 C あぁ、やっぱり。
 E あなたは…ってほんとうに誰ですか?
 D ずこーっ。
 C あぁ、あいつはねぇ…
 D ナイスガイのぉ!須貝です!(キラーン)
 E へぇ…すごーい(パチパチ拍手)
 C 須貝準規、美浜大学一年生。ハワイ生まれの帰国子女であり須貝財閥の御曹司。身長一八十センチ、体重七十五キロ、数々の運動経験で引き締まった体、そこそこ整ったな顔、などなどから女子からはそれなりにモテている。
 D ははっ!(キラーン)

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