失恋
【登場人物】
A 20歳女性
B 25歳男性
C 23歳女性


   明転。
   舞台に3人がいる。

A 「失恋って、もっときれいな感情だと思ってた。このこみ上げる感情は何だろう。サクラは私のこと応援するって言ったのに。きっと心の中では私のことあざ笑ってたんだろうな。ショウタと付き合うって私に言ったとき、彼女はどんな気分だっただろう。私の気持ちを知ってて、踏みにじって、どんな気分だっただろう。」
B 「失恋って、もっと単純な感情だと思ってた。このこみ上げる気持ちは何だろう。ユウナは俺のことを愛してるって言ったのに。きっと他の男にも同じようなこと言ってたんだろうな。あなたのことなんて愛してるわけないって俺に言ったとき、彼女はどんな気分だっただろう。本気になってる俺を笑って、突き放して、どんな気分だっただろう。」
C 「失恋って、もっと清々しい感情だと思ってた。このこみ上げる感情は何だろう。マサキは病気がよくなったら結婚しようって言ったのに。きっと初めからよくなんてならないこと知ってたんだろうな。もう少しだけ待っててくれって私に言ったとき、彼はどんな気分だっただろう。叶うはずのない希望を抱かせて、裏切って、どんな気分だっただろう。」
A 「失恋って」
B 「もっと」
C 「清々しい」
A 「きれいな」
B 「単純な」
C 「感情だと」

  暗転。
  明転。
  公園。ベンチにはBが横たわっている。
  Aが入ってくる。片手には缶のココアを持っている。ベンチのところまで行くが、座
るスペースがないのを確認すると少し離れたところでココアを開けて飲み始める。
B、Aに気づき、起き上がって端に座る。

B 「あ、座りますか。」
A 「あ、いえ、大丈夫です。」

  沈黙。
  A、徐にベンチに座る。Bとは人一人分くらい間を空けている。

B 「冷えますね。」
A 「え?」
B 「いや、寒いなって。」
A 「そう、ですね。」

  沈黙。

B 「コーヒーですか、いいですね。」
A 「え?」
B 「いや、あったかいコーヒー、いいなって……」
A 「ココアです。」
B 「え?」
A 「コーヒー、飲めないので。」
B 「おいしいじゃないですか、コーヒー。大人の味ですよ。」
A 「苦いじゃないですか。」
B 「そうですかね。苦いだけじゃないと思いますけど。」
A 「甘い方がいいですよ。糖分は疲れにも効きますし。」
B 「チョコレートなんか食べながらコーヒー飲むのもいいですよ。」
A 「そういうこと言ってるとモテませんよ。」
B 「え?」
A 「女性の言うこと否定してばっかりいる人、モテませんよ。」

  沈黙。

B 「(ぽつりと呟くように)だからユウナは俺のこと愛してくれなかったのかな。」

  Cが入ってくる。AとBの間に座る。ポケットからチョコレートを取り出し、食べる。AとBは驚いた様子でCを見ている。

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