泡の城
泡の城(あぶくのしろ)
 
作 渡辺キョウスケ
 
 
《登場人物》
・力哉(りきや 男・31才 先輩ホスト)
・麗児(れいじ 男・23才 後輩ホスト)
・明日実(あすみ 女・26才 麗司の女)
・隆聖(りゅうせい 男・35才 ホストクラブ代表)
 
 
 舞台、ホストクラブ「パレ・シャンブルグ」の店内。
 舞台中央、客席のソファーとテーブル。
 上手が事務室、下手が店の出入口になっている。
 
 開店前の昼間。
 店内には誰もいない。
 と、事務室の方から麗児の声が聞こえる。
 
麗児の声「・・・ああ・・・ああ・・・っせーな、だから落ち着けって・・・」
 
 麗児、事務室から、携帯電話で誰かと話しながら出てくる。
 
麗児「(ソファーに腰掛けて)・・・ああ・・・大丈夫だよ。こんなん、どうにでもなんだよ・・・え?今?(周りを確認し)オレ以外誰もいねえよ・・・つーか、誰かいたらオメーに電話してる場合じゃねえだろ。少しは考えろよ、バカ・・・だー、もー、いいからさっさと来いよ。早くしねえと誰か来ちまうだろうが。(胸ポケットからタバコを取り出そうとしながら)速攻な速攻・・・(タバコが見つからず)あ、来るときさ、タバコ買ってきてくんねえ?・・・あと、何か腹減ったから、菓子パンな・・・え?甘えヤツじゃねえよ、しょっぺえのだよ・・・(イラついて)何でもいいからさっさと買ってこいよ!パンの種類なんか今どうでもいいだろうがよ!・・・ああ・・・じゃあ店ん中で待ってっから。マジ、ダッシュで来いよ・・・おお、じゃあな。(電話を切り)・・・あああああ!!マジメンドくせえなクソッ!!!」
 
 麗児、テーブルを蹴る。
 
麗児「(天を仰ぎ)・・・あー、腹減った・・・」
 
 と、店に力哉が入ってくる。
 
力哉「(麗児を見て)あ・・・」
麗児「(力哉に気付き、舌打ちして)・・・マジかよ・・・」
力哉「・・・何だよ」
麗児「いや、何でも無いっす。力哉さん、お疲れ様っす」
力哉「おお・・・え、何、麗児、お前早くね?」
麗児「何がっすか?」
力哉「いや、店来んの。まだ昼だぜ」
麗児「ああ・・・いや、何か、代表に呼ばれて」
力哉「隆聖さんが?何で?」
麗児「いや、何か、分かんねーっすけど・・・」
力哉「? 何だよそれ?」
麗児「力哉さんこそ何でこんな早いんすか?」
力哉「オレ?いや、オレは・・・アレだよ、あの・・・忘れモン」
麗児「忘れモン?」
力哉「そう、あの・・鍵」
麗児「鍵?え、家か何かのっすか?」
力哉「ああ、そう、家の」
麗児「(笑って)マジすか?え、じゃあ昨日店終わってから家帰ってないんすか?」
力哉「ああ、そうそう」
麗児「え、じゃあどうしたんすか?」
力哉「何が?」
麗児「いや、何処泊まったんすか」
力哉「ああ・・・漫喫」
麗児「漫喫?」
力哉「ほら、駅前の」
麗児「ああ・・・」
力哉「うん・・・」
麗児「何漫喫なんか泊まってんすか(笑)」
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