憑依一体

(ひょういいったい)
初演日:2018/12 作者:おすず
「憑依一体」

小夜 サヨ (享年18)
大和 ヤマト(19)
詩織 シオリ(20)
和望 ナゴム(享年17)
1.   見えてるからね。(公園)
音響、照明卓が、舞台上手側にあると嬉しい。※本作品は、和望役が音響照明をしながら演者をする前提で書いております。この設定は、演じやすいよう変更していただけますと幸いです。
公園。
舞台下手から小夜、登場。
どこか緊張した面持ちで舞台上を歩き回り、上手側で立ち止まる。
しかし、まだ落ち着かない様子。

舞台下手から大和、登場。それに気づいた小夜、何か言いたげに大和に駆け寄る。

舞台上手から詩織、登場。

詩織に気づいた大和、小夜には目もくれず詩織に駆け寄り、楽しそうに二人談笑している。

寂しげにそれを見つめる小夜。

詩織と大和、そのまま上手に退場。

小夜、しばらく二人を見送るが、やがて後をついて上手に退場。

詩織と大和のデートシーンを数パターン繰り返す。(相合傘、イヤフォンはんぶんこなど)それを小夜が見守る。回を重ねるごとに、小夜の距離が近づいていく。最後のデートで詩織と大和、客席ごと写し込むように自撮り、それに小夜も勝手に映り込む。
大和   「ちょ、トイレ」
詩織   「遅かったら、置いてくからね〜。」
大和、トイレにハケ。ついていこうとした小夜の肩を詩織が掴む。
詩織   「いやさすがにトイレは駄目でしょう。」 
小夜、自分じゃないと思い、詩織の目線の先を追う。
詩織   「どう考えてもあなたに話しかけているでしょ。」
小夜、自分の顔を指差す。
詩織、頷く。
小夜   「見えているんですか!? 」
詩織   「はい。」
小夜   「いつから!? 」
詩織   「最初から。今、トイレ覗きに行こうとしたのも全部見えてるからね。変態。」
小夜   「変態じゃないです! 」
詩織   「じゃあなんでトイレについていく必要があるの? 」
小夜   「いや、男子ってどんなってするのかなー?って」
詩織   「変態じゃん。」
小夜   「っていうか! 見えてるならなんで最初から教えてくれないんですか!? 」
詩織   「いや、害なさそうだし大丈夫かなーって」
小夜   「軽いですね。」
詩織   「いや、正直最初は焦ったよ? あんまりはっきり見えるから人間のストーカーかと思ったら、大和には見えてないみたいだし、私がおかしいと思われたら嫌だから、とりあえず様子みようかなって」
小夜   「へえ、そんなにはっきり見えてるんですね。」
大和、トイレから入り。
大和   「シオリ、次どこ行く? 」
小夜、呆けた表情で大和を見つめながら、小さい声でぶつくさ大和を褒めちぎっている。
詩織、小夜を一瞥し、ため息を吐く。
詩織   「ごめん。予定はいちゃった。」
大和   「は? 今日一日空いてるんじゃないの? 」
詩織   「そうなんだけど、友達から今すぐ相談したいって連絡あって。」
大和   「……いや、意味わからないんだけど。」
小夜、変わらず小さい声でブツブツ言っている。
詩織、苛立ちが態度にでないように気をつけながら大和と会話を続ける。
詩織   「なんかすごく深刻な相談みたいでさ。幽霊みたいな顔で見てるから。」
大和   「見てる? 」
詩織、小夜を睨む。気づかない小夜。
詩織   「いや、さっきビデオ通話が掛かってきて。」
大和   「……。」
詩織   「せっかくバイト休み入れてくれたのにごめん! 」
大和   「……。」
小夜   「え、大和さん帰っちゃうんですか……? 」
詩織、手を大和の前で合わせる動きで、小夜を殴ろうとする。
小夜、それを避ける。
詩織   「今度埋め合わせするから。」
大和   「もう、わかったよ……。」
詩織   「本当ごめんね。」
大和   「待ち合わせ場所まで送るよ。」
詩織   「ここだから大丈夫。」
大和   「そうなの? じゃあ、一緒に待つよ。」
詩織   「もう来てるから大丈夫。」
大和   「マジで? (キョロキョロする。)」
詩織   「極度の人見知りなの。だから大和が帰らないと絶対出てきてくれないの。」
大和、ため息。
詩織   「ごめん。」
大和   「じゃあな。」
詩織   「焼肉おごる! 」
大和、ハケながら手を振り、立ち去る。
小夜、大和の後を着いて、同じように手を振ってハケようとする。
詩織、小夜の手を掴み舞台中央へ連れ戻す。
小夜   「え? なんですか? 」
詩織   「いや、『なんですか? 』じゃないよね。」
小夜   「お友達来てるんですよね? お邪魔しちゃ悪いかと思って帰ろうと思ったんですが……。」
詩織   「今のは大和に帰ってもらうための嘘。」
小夜   「なんでそんな嘘吐くんですか! 」
詩織   「あなたがずっと変なこと言っているからでしょう! 」
小夜   「あたし、なにか変なこと言ってました? 」
詩織   「死なしたい。」
小夜   「安心して下さい。死んでますよ。」
詩織   「……。」
小夜   「どうしたんですか? 」
詩織   「あなたさ、なんで死んじゃったの? 」
小夜   「え? 」
詩織   「幽霊なんでしょ? はっきり見えるからあんまり実感ないけど。」
小夜   「そうですね。幽霊です。死にました。」
詩織   「……いくつなの? 」
小夜   「18です、た。」
詩織   「年下じゃん……。」
小夜   「あはは、車に轢かれたんです。最初は理解できなかったけれど。」
詩織   「ねえ。」
小夜   「はい? 」
詩織   「どうやったら成仏できるの……? 」
小夜   「……さあ? 」
詩織   「さあって! 」
小夜   「自分でもなんでここに留まってしまっているのかわからないんです。」
詩織   「心残りがあるんじゃないの? 」
小夜   「心残り……なかったんですけどね。」
詩織   「なかった? 」
小夜   「最初幽霊になった時は、単純に死んだこと理解できてなくて。」
詩織   「それでここに残ってたんだ? 」
小夜   「はい。でも、別にこの世に残ってまでしたいこともなかったんです。タイミングを逃しちゃったんですよ。」
詩織   「成仏するのに、タイミングなんかあるの? 」
小夜   「……あたし、馬鹿なんです。」
詩織   「何急に。」
小夜   「だって、おかしいじゃないですか。死んで初めて人を好きになるなんて……。」
詩織   「……大和のこと? 」
小夜、頷く。
詩織   「……。」
小夜   「ごめんなさい。」
詩織   「なに? いきなり。」
小夜   「彼には、あなたが居るのに。」
詩織   「その意識はあったんだ。」
小夜   「自分が死んだって自覚した時には、大和さんを好きになっていました。好きになる前に、死んだ自覚が持てたらきっとその時に成仏できていたと思います。」
詩織   「でも、大和を好きになって、それが未練で、成仏できないって事? 」
小夜、俯く。
小夜   「本当、馬鹿ですよね。」
詩織   「大和の、どこがそんなに良いの? 」
小夜   「最初は……めっちゃ嫌いなタイプでした。」
詩織   「一応私の彼氏なんですけど。」
小夜   「最初、死んだ場所からほとんど動けなくてパニックで、近くの人に声を掛けては無視されて。それでも死んだって気づかなくて。」
詩織   「……。」
小夜   「あたしが死んだ道路の、近くのバス停の人たちを、ただなんとなく観察するようになったんです。そしたら、チャラチャラした男の人がいて、なんかこういう人苦手だなって思ってたんです。足短いし。」
詩織   「それ気にしてるから……。」
小夜   「でも、今思えば、その時から惹かれてたんですかね。目が離せなかったな。」
詩織   「一目惚れ? 」

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