ヤンキーとストーカー -平成舞台心中-
『ヤンキーとストーカー -平成舞台心中-』

■登場人物 3名
・ヤンキー(男)
・ストーカー(男)
・事務員(女)


    現代。信夫山の名月の碑の前にて。夕刻
    この物語は、ヤンキーと事務員がこれまであったことを語る形をとっている。


ヤンキー 「20○○年〇月〇日!須藤馨、ストーカー卒業宣言!!須藤馨です!小学生の時から!!想い続けていました!! あなたと一緒に見た、名月の碑、覚えていますか!!! 月明かりにあなたを重ね!! いつも僕は、あなたのことを想い続けていました!!ずっと好きでした!!!」


    時代は戻り5年半前。ストーカーの働く市役所にて。


事務員 「五年半前のことです」
ストーカー 「午後4時45分、不要書類をゴミ処分。勤務時間終了間際、目をやる窓際、陽が射していた外には、迫りきた大きな黒雲、にわか雨が降り出してきた。コンクリート濡らしムンムンと雨の匂い、僕の鼻に入り込んだ。午後5時になったら、飛び出す予定の仕事場。隣席の女(婚期逃すラインギリギアウトの年齢)が僕に仕事を持って来ようとしているのが見えて時計チラリ、よそゆき笑い、空気読もうねと無言の圧力。キッと睨む女に、さらに重ねるよそゆき笑いの活用。僕には退勤後にこそやらなければならない使命があるのだ!
雨!これこそ天が僕に与えてくれた千載一遇のチャーンス。僕の手元には、紳士的なデザインの傘と一枚のハンカチーフ。ああ、今朝、花柄の可愛い傘が、あの子の手あったか?いいや、なかった。つまり彼女は白いブラウス濡らし、柔肌透かして駅へと早足で歩いて行く。
僕が紳士的に、傘を渡す。
僕「お嬢さん」いや、違うな。僕「マドモアゼル!」彼女「はい!」僕「これを」彼女「まぁ、この傘は?」僕「お使いください。風邪をひかれますよ(ハンカチで頬をぬぐいながら)」彼女「まぁ!ありがとう、素敵!」僕「いえいえ!」彼女「あの、もしよかったら一緒に」僕「そんな滅相も無い」
彼女「ぜひ」僕「だってそれじゃあ」………。
あいあい傘!あいあい傘!!肩とか、触れ合っちゃう感じ!?
こういったイベントの為にたとえ、ストーカーと呼ばれようとも僕は物陰からずっと彼女を見守ってきていたと言ってもいい。不良に絡まれたらすぐに守りに行けるように!車が突っ込んできたら身を呈して守れるように!
…それらに比べればまぁ、大したイベントにはならないだろうけれども。あいあい〜〜!! あいあい〜! 頑張れ!僕!! …カウントダウン〜、5,4,3,2,1」


    5時になった瞬間、ヤンキーがやってきて、事務員に絡み出す


ヤンキー 「おう…。あのさぁ、嬢ちゃん。俺の家にさぁ、手紙来てたんだけど税金?年金?払えって話だろ。嬢ちゃん代わりに出してくれよ、なぁ…??あ?終わり?なんだ、てめぇ、こんな雨の中来てやったのに、今度は!帰れってか!?」


    ストーカーその姿を見ながらも


ストーカー 「それじゃあ、あの、五時ですので、退勤しますー…。何か仕事ありますか、ないですよね!お先しま〜す!。」


    ストーカーはけようとするが、戻ってきて
   

ストーカー 「…う、うわあああ!!」


    ストーカー、傘を片手に突っ込む


ヤンキー  「 あん!?」
ストーカー 「それじゃあ!」
ヤンキー  「何だてめぇ…
ストーカー 「えっ… えっと… ッカッカ!!!(恐怖の表情)
ヤンキー  「 か?
ストーカー 「…カ、傘!
ヤンキー  「 何だ、この傘!」
ストーカー 「おおおおおおお使いください!風邪をひかれますよ!(ハンカチで頬をぬぐいながら)」
ヤンキー  「ああん!?」
ストーカー 「いえいえいえいえ! ね! ほら、なかなか」
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