人魚姫
人魚姫

登場人物
● 人魚姫:人魚の末の姫 
● 王女:隣国の王女 友好の証として王家に嫁ぐためにやってきた 
● 王子:人魚姫が命を救い、恋した、小国の王子
● 侍女頭(侍女):王女の乳姉妹で王女とともに隣国からやってきた
● 姉姫(声のみ):人魚姫のすぐ上の姉 
● ナレーター(ナレ):声のみ
※ ナレーターと姉姫は同一人物でも可
※ 最小5人で演じることが可能だが、人数に余裕があるときは、家来や侍女などを出してもよい。

場所
ACT1、4、5   城の中庭
ACT2.3     海の見える離れの一室(王女の部屋)






   

【プロローグ】 
        波の音。かもめの鳴き声。
     
ナレ   昔むかし、人間の王子に恋をした人魚の姫がおりました。恋は盲目とはよく言ったもの。恋に目がくらんだ姫君は、美しい声を代償に
     魔女から秘薬をもらい受け、ついには人間になってしまいます。首尾よく王子とめぐり合い、王宮でそれなりに幸せに暮らす人魚姫。
     このまま何事もなく幸せな日々が続けば、お話はハッピーエンド・・・。ところがうまくいかないのが人の世の常。悲劇は突然襲い来
     るもの。

 
【幕開き】

   Act 1 
        お城の中庭。夕暮れ時のホリ。地明かり。
        王子、中庭のベンチにぼんやりとした様子で座っている。上手から人魚姫が上着を手に現れる。
        そっと王子に近づいて、肩に手をかける。
   
王子  (人魚姫に気づいて)おや、わざわざ探しにきてくれたのかい。(下手側、斜め正面の海を指して)ほら、見てごらん。
     ここからは海が良く見える。今日はとても波が穏やかだ。

       人魚姫、上着を王子に着せかけようとする。が、王子がやんわりとその手を押さえて

王子  必要ないよ。春の夜風は心地よい。(なおも着せ掛けようとする人魚姫に)わかった、わかった。ありがとう。
    たしかに風邪を引いてはまずいかな。(素直に上着を着る)

       人魚姫は城の方(上手)を指差して王子の顔を見る。

王子  みな、探してるって?ああ、もうすぐ歓迎の宴が始まる時間か。
    (少しの間。王子、面白くなさそうに)
    隣国の王女か。噂では、かなりわがままで気まぐれな女とか。父上に今朝呼ばれたよ。くれぐれも粗相のないようにと。
    私の未来の妻なのだからと。父は私の意見さえ聞かなかった。私には伴侶を選ぶ自由もないんだ。

       ため息を吐く王子。なだめるようにそっと触れてくる人魚姫。

王子  すまない。愚痴を聞かせてしまった。政略結婚など別に珍しいことじゃない。隣国は大国だ。婚姻の絆を結ぶことはわが国の利益になる。
    王子としての義務だとはわかってるんだ。でも・・・
   (王子、遠い目をして再び、海を眺める)
    忘れられないんだ。あの日、私を助けてくれたあの尼僧が。冷え切った私を温め、命を救ってくれた、名も知らぬ人が。もう二度と会えない
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