勇者ノエルの華麗なる冒険

(ゆうしゃのえるのかれいなるぼうけん)
初演日:2018/9 作者:あかざとう
『勇者ノエルの華麗なる冒険』
 
 上演人数の目安:15(兵士3人、ナレーターを他のキャストが兼任で演じた場合)-18人(兵士5人、ナレーター専属のキャストを設けた場合)
 
 ・ノエル:魔王から国を救うべく選ばれた勇者。武器は剣。
 ・アシュレイ(男):勇者と共に戦う魔道士。武器は杖。
 ・ジュリエット(女):勇者と共に戦う巫女。武器は魔道書。
 ・セレン(男):ジュリエットの魔道書。
 ・エレオノーラ(女):国家征服を企む魔王。武器は杖。
 ・ロバート(男):エレオノーラの側近。武器は剣。
 ・ジャック(男):エレオノーラの執事。武器は銃。
 ・バートランド(男):フォルトレア王国国王。武器は剣。
 ・側近:バートランドの側近。
 ・青年(男):旅立ち街道の付近に住む青年。
 ・したっぱ(女):魔王軍のしたっぱ。青年の恋人に化けている。
 ・兵士:無限平原や災いの森に現れる、魔王軍の兵士。3-5人程度を推奨。
 ・呪術師:災いの森を守る呪術師。魔王軍に仕える。武器は魔道書。
 ・ナレーター:ナレーター。
 
 ◯フォルトレア城・謁見の間
 
    絢爛豪華な装飾が施された、謁見の間。中央には王座が置かれている。
    王座にバートランドが座り、その横に側近が控える。
 
 ナレーター(声)「むかしむかしあるところに、フォルトレア王国という大きな国がありました。平和で豊かなフォルトレアでは、人々が幸せに暮らしていました。
 ですがある日、その幸せを脅かす魔王が現れたのです。国を乗っ取ろうと企んだ魔王は、フォルトレアの大事な宝『王者の真珠』を奪ってしまいました。
 嘆き悲しんだフォルトレアの王様は、魔王を倒して『王者の真珠』を取り戻せる、勇者を探していました---」
 
    明転。アシュレイ、入場。
 
 アシュレイ「バートランド国王陛下、この度はお会いできて光栄です。アシュレイと申します。」
 バートランド「まあ、そう堅苦しゅうせんでもよい。ここに招いたのは余であるからな。」
 アシュレイ「寛大なお言葉に感謝いたします、では---陛下。本日は、どのようなご用件で僕をここに?」
 バートランド「知っての通り、フォルトレアは国家滅亡の危機に瀕しておる。」
 アシュレイ「魔王エレオノーラ…それほどまでに強大な相手なのですね。」
 バートランド「うむ。あやつ自身の実力も確かなものじゃが、それ以上に恐ろしいのはあやつが持ち出した…『王者の真珠』じゃ。悪しき心を持つものには、決してあれを使われてはならぬ。
 そこでじゃ!国内随一の魔道士であるそなたに、折り入って頼みがある。」
 アシュレイ「はい。」
 バートランド「フォルトレアのため、ひいては世界のため…魔王を倒し、『王者の真珠』を取り戻してほしいのじゃ!」
 アシュレイ「えっ!ぼ、僕が…魔王を、ですか?」
 バートランド「おっと、安心したまえ!無論1人では行かせたりなどせぬぞ。他にも頼もしい者たちを集めておる。実を言うと、そなたが最後の1人なのじゃ。」
 アシュレイ「ああ、そうなんですか…。なら、お引き受けいたします。国のお役に立てればなによりですから。」
 バートランド「うむ、そなたの熱意に感謝するぞ!では、さっそく旅の仲間を紹介するとしよう。入りたまえ。」
 
    ジュリエット、セレン、入場。
 
 ジュリエット「まあ、あなたが陛下のおっしゃっていた魔道士さんなのですね。初めまして、ジュリエットと申します。」
 アシュレイ「アシュレイだよ。よろしく。」
 バートランド「彼女は、国教会からの推薦を受けて派遣されてきている。優秀な巫女じゃ。」
 アシュレイ「国教会から?すごいんだね!」
 ジュリエット「うふふ、ノエルさんに比べれば大したことはありませんよ。」
 アシュレイ「ノエルさん…?」
 ジュリエット「この旅のリーダーを務められる方---勇者様ですよ。」
 アシュレイ「勇者か…どんな人なんだろう。きっとかっこいいんだろうなあ…。」
 セレン「サア、どうだかナ。」
 アシュレイ「うわっ!?本が喋った?」
 ジュリエット「ああ、驚かしてしまってすみません。この子はセレン。わたしの魔道書です。」
 セレン「よろしくナ、ぼっちゃん。」
 アシュレイ「ぼっちゃんって…僕子供じゃないし。」
 セレン「なーに言ってんダ、俺から見りゃ赤ん坊みたいなモンヨ。」
 アシュレイ「あっ!魔道書のくせに生意気だぞ!」
 セレン「まったく、ぼっちゃんといいあの勇者といい、ドイツもコイツも威勢がいいネエ。」
 バートランド「して、そのノエルはどこにおるのじゃ?」
 ジュリエット「お召し物の準備に、少々お時間がかかっているそうです。」
 バートランド「さようか。」
 アシュレイ「陛下の召集に遅れる勇者って、なんなんだ…?」
 
    ノエル、入場。
 
 アシュレイ「えっ。」
 ノエル「今日も素敵ですね、バートランド陛下!」
 アシュレイ「えっ。」
 バートランド「冗談はそのあたりにしたまえ、ノエルや。」
 ノエル「嫌だなあ、これでも私は本気ですよ。やあ!調子はどうだい、ジュリエットくん?」
 ジュリエット「おかげさまで絶好調ですよ、ノエルさん。」
 ノエル「それはなによりだ!大切な仲間が元気でいてくれることは、私の望みでもあるからね。」
 アシュレイ「い、今ノエルって…。」
 ノエル「これはこれは---陛下の側仕えの方が、こんなに素敵な方だったとは!よければ今度、私とお茶でもどうだい?」
 側近「えっ、えっと、その…!」
 アシュレイ「ストーップ!」
 ノエル「ああ、君が噂の魔道士くんか!」
 ジュリエット「アシュレイさんです。」
 ノエル「初めまして、私はノエル。魔王を倒すべく選ばれた---勇者さ。」
 アシュレイ「やっぱりあんたなのか…正直同じ名前の別人であってほしかった。」
 ノエル「なにか私の言動で、気に入らないことがあったのかな?大切な仲間の要望だ、できる限り改めるよ。」
 アシュレイ「全部だよ!」
 ノエル「それは…難しいな。」
 アシュレイ「ていうかあんた、本当に勇者なの?」
 ノエル「というと?」
 アシュレイ「歯が浮くような挨拶!陛下の側近を口説く!おまけにその服!勇者ってか、ただのナンパ師じゃん!」
 ノエル「おやおや、これは勇者の正装だよ。」
 アシュレイ「恐れながら陛下、この人は計画から離脱させた方がいいのではないでしょうか!パーティーの風紀を乱しすぎます!」
 バートランド「口を慎まぬか、アシュレイ。この者は、神からのお告げを得て選ばれたのじゃぞ!」
 アシュレイ「そ、そうなんですか?」
 ノエル「えっへん!」
 ジュリエット「まさに勇者とお呼びするのにふさわしい方と存じますが…。」
 アシュレイ「今だけは神を疑いたい…。」
 ノエル「まあまあ、アシュレイくん。案外楽しくなるかもしれないよ?」
 アシュレイ「あんたは黙ってろよ!」
 バートランド「フォルトレアのため、どうか…頼む。」
 アシュレイ「…わかりました。」
 
 バートランド「うむ!行け、勇者一行よ!魔王エレオノーラを倒し、『王者の真珠』を取り戻すのじゃ!」
 ノエル「お任せください陛下!勇者の名にかけて、必ずや使命を果たしてご覧にいれます!」
 ジュリエット「ええ、頑張りましょうね。」
 アシュレイ「僕、このパーティーでやってける気がしない…。」
 セレン「ったく、コイツラうまくいくのカネエ。」
 
    ノエル、アシュレイ、ジュリエット、セレン、退場。
 
 バートランド「…さて。行くとするか。」
 側近「陛下、どちらへ?」
 バートランド「散歩じゃ、散歩。」
    
    暗転。バートランド、側近、退場。
 
 ◯フォルトレア王国・旅立ち街道
 
    大きな街道に店が並んでいる。青年をはじめとする数人の市民があちこ
    ちに立ち、呼び込みや雑談を行っている。その中をノエルが歩き回って
    いる。
    明転。アシュレイ、ジュリエット、セレン、入場。
 
 ノエル「お兄さん、少しお話でもしないかい?
 なんと、こちらのお嬢さんもずいぶん素敵な方だ!よければ宮廷に斡旋してあげようか---」
 アシュレイ「このバカっ!」
 ノエル「なんだいアシュレイくん、せっかくいいところだったのに。」
 アシュレイ「僕らがこの商店街に来た目的はなんだ?」
 ノエル「情報収集を行い、魔王城の場所を突き止めるためだね。」
 アシュレイ「じゃあなんで、老若男女問わず口説きまくってるんだよ!」
 ノエル「勇者の宿命…かな。」
 アシュレイ「全然かっこよくないから!」
 ジュリエット「でも、これだけ聞き込みをしてもなにも手がかりがないとなると…先は長そうですね。」
 セレン「そんなカンタンに見つけられるホド、魔王も甘くねえダロ。」
 ジュリエット「それもそうかもしれません。」
 ノエル「ならば、引き続き聞き込みあるのみだね!」
 アシュレイ「あんたのそれは聞き込みじゃなくてナンパだ!」
 ノエル「そこのお兄さん!」
 青年「は、はい。僕ですか?」
 ノエル「思った通り…美しいね!よければ私と2人で、ゆっくりしていかないかい?」
 青年「お、お気持ちはありがたいんですけど…僕には、その…。」
 したっぱ「おいテメエ!」
 ノエル「おや?」
 
    したっぱ、入場。
 
 したっぱ「人の彼氏に手ぇ出してんじゃねえよ!」
 アシュレイ「あーあ…。」
 ジュリエット「あらあら。」
 セレン「アノ勇者、かなりロクでもねえナ。」
 アシュレイ「すみません、この人ナンパ癖がひどくて…後できつく言っておきます。」
 したっぱ「ああ?誰だテメエ?なんだ、コイツの連れか?」
 アシュレイ「ぱ、ぱぱ、パーティーメンバーです。」
 したっぱ「じゃテメエが落とし前付けろや!」
 アシュレイ「ひっ!?」
 セレン「バカダナ、マジメに相手すっからソウなんダヨ。」
 ノエル「まったく…あまり彼を困らせないでくれるかな。」
 したっぱ「アアン!?」
 
    ノエル、剣でしたっぱを切りつける。
 
 したっぱ「ぐわあああ!」
 セレン「ア、やりヤガッタ。」

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