オオカミと一匹のコヤギ
オオカミと一匹のコヤギ



オオカミ
コヤギ



小さな家。家の外と中を隔てる鍵のかかった扉。
家の外から、いかにも狼と言ったオオカミが扉の前までやってくる。
扉をノックする。

オオカミ  コンコン。ただいま、開けておくれ。お母さんだよ

家の奥からコヤギが出てきて、扉の前に立つ。

コヤギ   お母さん?
オオカミ  はぁい
コヤギ   ほんとうにお母さんなの?
オオカミ  そうだよ。お母さんだよ。だから、早く開けておくれ
コヤギ   …嘘だ。ほんとうはオオカミさんでしょ
オオカミ  ギクッ!ま、まぁ、何を言ってるのかしら
コヤギ   オオカミさんはわたしのこと食べるんでしょ?
オオカミ  いいから、ここを開けておくれよ!
コヤギ   お母さんは
オオカミ  ?
コヤギ   もっときれいな声だよ。そんなにガラガラ声じゃないもん

コヤギ、家の奥へ引っ込む。
取り残されたオオカミ。

オオカミ  チッ!

オオカミ、足早に帰っていく。

しばらくすると、チョークを持ったオオカミがまたやってくる。
扉の前まで来ると、チョークを食べる。
きれいな声が出るようになったことを確認すると、扉をノックする。

オオカミ  コンコン。ただいま、開けておくれ。お母さんだよ

家の奥からコヤギが出てきて、扉の前に立つ。

コヤギ   お母さん?
オオカミ  そうだよ。お母さんだよ。ほら、きれいな声でしょ?
コヤギ   うん。お母さんの声だね
オオカミ  うんうん。だから、早く開けておくれ。さぁさぁ
コヤギ   …オオカミさん
オオカミ  えっ、は!こんなにきれいな声なのに、オオカミだなんて

コヤギ、扉の下から覗き込む。

コヤギ   足が真っ黒だよ
オオカミ  足?
コヤギ   お母さんの足は白だもん

コヤギ、家の奥へ引っ込む。
取り残されたオオカミ。

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