『KAYA-温羅の伝説-』ver.2.82

(かや うらのでんせつ にいてんはちにい)
初演日:2017/9 作者:白神貴士
『KAYA-温羅の伝説-』 ver.2.82

【原作】乙倉 俊
【戯曲・監修】白神 貴士
【演出】井上 瑞穂
【副演出】釣田 京子

【登場人物】
阿曾女          …
温羅(吉備の冠者)役者   …
秋鹿           …
五十狭芹彦(吉備津彦)   …
吾田媛・巨鳥(ガルーダ)  …
秦の蔵人     …
山犬(大神)・書道     …
阿曽媛          …
耶夜           …
伎加           …
百襲媛          …
卑弥呼          …
楽々森舎人        …
犬飼命          …
留玉臣          …
ヤマトの軍団       …
長老          …
伊草(父)       …
伊草(子)       …
農奴・たたら吹きの工人たち・加夜の人々…
大猿(ハヌマーン)     …
黒子(3名)        …

▼鍛冶
川島一城さん(刀匠)

【演奏】
▼和太鼓
beZen鼓空
▼チャンゴ
チョヨンヒ+韓国伝統公演芸術団
▼SAX等
赤田晃一
▼Kyb等
赤田美由紀
▼歌
蛹(さなぎ)



序曲…和太鼓とチャンゴ中心の「序曲」が流れる。

【第○場】アゾメ-阿曾女

阿曾女、進み出て観客席に頭を下げる。

阿曾女
「私は、御釜殿で温羅様に仕えております阿曾女でございます。
 湯を沸かして温羅様の唸り声が聞こえるか聞こえぬかで吉凶を占っております。
 温羅と申しますのは鬼でございます。
 その昔、あちらの方の山の上にある鬼ノ城、おにのしろと呼ばれる山城におったと
 いわれている鬼でございます…その頃は、この辺りまで『吉備の穴海』と呼ばれる海が
 あったそうで倉敷なんかもほとんど海の中だったそうです。
 ここ、吉備の地で御伽噺「桃太郎」の源流とされるのが『温羅』の伝説でございます。
 この物語は、室町時代の成立と推定される『鬼城縁起』に始まり、
 幕末期の『吉備津宮縁起』に至るまで、六つの資料が残っておりますが、
 実はそれぞれ様々に違っているのでございます。
 鬼の正体ひとつとっても「天竺(インド)から来た鬼神『剛伽夜叉(ゴウキャヤシャ)』」、
 「日本侵略に来た新羅の国王『(吉備津の)冠者(カジャ))』」、
 「大唐の白斉国の皇帝だった『吉備津冠者(キビツノカシャ)』」、
 「百済の王『温羅』」、「百済の皇子『温羅』」と変化し…
 その最後も、首を斬られ退治されたとする『鬼城縁起』以外は、
 降参して吉備津彦の家臣、吉備の守護神となり、180歳まで生きたとする資料も
 ございます。
 果たして温羅の正体は何だったのでしょう?
 吉備津彦はなんと281歳まで永らえたと書いてあるのは本当でしょうか?
 古代出雲、ヤマトとは、都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)、百襲媛、たたら製鉄…
 そしてKAYAとは?
 いつしか、そんな事ばかりが頭の中を巡りはじめ、夜ごと夢の中に、
 角がある大男が現れるようになりました。
 その男はまん丸な目をぎらぎらと光らせながら…私に向かって、
 『温羅』と名乗ったのでございます…おや?」

阿曾女客席側へ隠れる。

【第一場】ウラ-温羅

[第一景]

浜で荷を運んでいる農奴2人と鞭で脅すヤマトの兵2人。


「温羅じゃあ〜!! 温羅が出たぞぉ〜!!」

農奴2人は荷物を置いて逃げる…
巨大な牛頭の鎧を被った温羅と兵たちの殺陣(兵たちは直剣、温羅は棒)
兵たち、蹴散らされて逃げる。温羅追ってゆく。
温羅荷物の元に戻ると
農奴が一人物陰から出てくる。

農奴
「吉備の冠者、いや、温羅!…様…」
温羅
「何じゃ?」
農奴
「わしも連れて行ってつかあさい…そっちが、ええ…」

温羅、農奴の顔をじっと見定めて

温羅
「…名前は?」
秋鹿
「わしゃあ、児島の秋鹿(あいか)じゃ」
温羅
「そうか。ついてくりゃあええ。」

温羅、山ほどの荷を袋につめ、踵を返す。
自らも荷を持って、後へ続く秋鹿。

[第二景]

タタラ製鉄・鍛冶の場。
たたら吹きの踊りを踊る。
前景に川島一城さん(刀匠)リアル刀鍛冶。

♪眞金の歌
たたら吹け吹け 火の粉の祭り
あがる炎が 胸焦がすよ
眞金吹け吹け 炎の色に
明ける夜ぉさが 胸焦がすよ
かたな打て打て 火の粉の祭り
槌の響きが 胸を打つよぉ
たたら吹け吹け 眞金吹け
たたら吹け吹け かたな打て

[第三景]

秋鹿
「鉄ぅ作っとるんか…そしたらあんたは出雲か?」
温羅
「いいや違う。出雲にも寄ったが、もっと遠(とい)いところから来たんじゃ。」
秋鹿
「ヤマトの方か?あんたみたいな肌の色でそねーにでけえ人は見たことがねーが…」
温羅
「いいや、海の向こう…朝鮮という半島に伽耶という国を作っとった…
 元々の先祖ゆーたら、もっと遠い。はるか天竺のアヨーディヤーから来たんじゃ。」
秋鹿
「そうなんか、わしゃあ生まれてこのかた、どけーも行っとらんけぇ…
 どのくれーといーんかよーわからんが…ぼっけぇといーんじゃな。」
温羅
「秋鹿は出雲とヤマトどっちじゃ?」
秋鹿
「どっちも嫌いじゃ…どっちなんか、よーわからん。」
温羅
「もともとの者(もん)か?」
秋鹿
「…そーじゃ。わしらぁはずーっと昔から、ここにおったんじゃ。
 貝をとって、タコぉとって、魚ぁとって、鳥ぃとって、鹿ぁとって、イノシシとって、
 キノコや木の実ぃ食べて生きて来た…そけぇ『クニツクリ』のもんらあが来て、
 『こっからあっこまではわしらの土地じゃ、おめぇら米ぇ作れ』言われて、
 そっからぁずーっと奴隷ぐらしじゃ…やれ、出雲じゃ、吉備じゃ、ヤマトじゃゆーて、
 仕える相手はどんどんかわりょーるけど、どれも同じじゃ…けどなぁ…」
温羅
「…けど?」
秋鹿
「ヤマトぁ一番よーねー。出雲の方がましじゃった。」
温羅
「…そうか…ならなぁ…」
秋鹿
「…なら?」
温羅
「わしゃあ、も少しましにすらぁ。こかぁ、えー鉄が採れる。
 わしゃあヤマトと違うて、ここから搾り取るつもりゃーねえ。
 わしゃあ、こけー第二の伽耶、故郷を作りてーんじゃ。秋鹿、手伝ぉてくれぇ。」
秋鹿
「…故郷か。ならわりぃ国にゃあせんじゃろう…よっしゃ、わかった…
 わしゃあ手伝うで!」
温羅
「秋鹿!」

温羅が嬉しくて思わず肩を叩くと秋鹿吹っ飛ぶ…「あああ」と助け起こす温羅


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