群読「雉の谷の男」〜桃太郎異聞〜
   群読「雉の谷の男」〜桃太郎異聞〜
                         高橋幸良

演者10人(1〜10)
前列下手から1〜5(1が、主に主人公ハヤテを演じ、5が桃太郎)
後列下手から6〜10

3    雉の谷の男
全      雉の谷の男
      
 篠笛演奏(できれば主人公ハヤテ役の1が生演奏) 
      
3    むかし、讃岐の国は雉の谷に、弓の名人あり
全      名人あり
2    近隣の村々でそれを知らぬ者はない
4    「雉の谷の名人を知っておるか?」
6    「知っておる」
7    「知っておる」
8    「知っておる」
4    「どのような名人であるか知っておるか?」
9    「見たことはないが、名人は矢をジグザグにとばせるという」
10   「見たことはないが、名人は一本の矢で五羽の鳥を射抜くという」
5    「見たことはないが、名人は飛ばした矢を自由にあやつり、手元まで引き戻すという」
4    「なるほど、それこそは名人」
全      名人!
1    ある日のこと、この名人を訪ねるものがあった
8   「私めは、同じ讃岐の国とはいえ、ここ雉の谷よりずっと西のかなた、
     五色の村の使いのものでござります。
     こちらに弓の名人様がおられるとの噂。ぜひ私どもの村を救っていただき
     たく、馳せ参じましてござりまする」
3    使いのものの言うことに、最近、牛鬼が現れ頻繁に村を襲うようになっ
     た
4    牛鬼は、老若男女を問わず、人と見れば頭から丸呑みにしてしまう
     恐ろしい化け物だ
8    「どうか、名人様の弓矢をもって、牛鬼を退治していただきたく、お願い
     申し上げまする」
3    名人は目を閉じた
4    なにやら思案しているようである
5    しばらくして目を開け、静かに答えた
2    「話はわかり申した。さぞお困りでござりましょう。されど、この身、
     見てのとおりの老体。もはや五色の村まで出向き、牛鬼と一戦交える
     だけの力が残っておりませぬ」
3    なるほど、名人は白髪、長くのびた白ひげの老人
4    まるで仙人のような風貌であった
2    「かと言って、牛鬼を野放しにしておくわけにもまいりませぬ
      ここはひとつ、わしの一人息子をつかわそうと思いまするが、
     いかがかな?」
6    いかがかといわれても、使いのものにすれば否応ない
7    藁をもすがる思いでやってきたのだ
8    それに名人の息子であれば、名人ほどではないにしろ、いくばくかの技を使えるはず、
9    伝授されているはずであろうと考えた
10   また世間では、雉ヶ谷に名人がいることを知っていても、その容貌や名前まで知るものはない
5    使いのものとて、名人がこのような老人であるとは知らずにやってきたのである
8    「わざわざ、皆に名人の息子であると説明することもあるまい要は、牛鬼を退治してもらえばよいのだ」
4    使いのものはそう考え、名人の息子ハヤテという若者を連れて帰り、雉の谷の名人であると、皆に紹介した
10   「よくぞ参られた」
3    「ありがたや」
6    「牛鬼をやっつけてね」
全    「名人、名人、名人様!」

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