SWEET BITTER PRINCIPAL

(すうぃーと びたー ぷりんしぱる)
初演日:2017/11 作者:安田コショウ
SWEET BITTER PRINCIPAL
登場人物
○大鶴一義
●七海アイ
●鬼塚三葉
○金子英一
●クロエ王妃
○アカシ国王
▲秘書
※○男役 ●女役 ▲指定なし

SCENE1
舞台はとある王国の小さな菓子店『くちひげ』
もうす国王と王妃の結婚記念式典。国中がその準備で活気づいている
照明フェードイン
くちひげのバックヤード。金子英一(以下、金子)が台本を持っている

金子 「助けを求める声あらば、どこからだって駆けつける
    私はジャック・トロント。この世の英雄となる男
ついに見つけたぞ、悪の帝王ロイヤル公爵
なぜこの場所がわかったかって?お前の部下に聞いたら、素直に答えてくれたよ
さあ観念して、その娘を返してもらおうか
えい、だまれ。魔女の言うことに耳を貸すな。こうなれば…いくぞ、みんな
勇気あるものは、己の武器を掲げよ
さあ一緒に呪文を唱えよ。我らが三銃士の力を合わせる時だ。いくぞ
    …『スウィートビタープリンシパル』」

セリフの途中で鬼塚三葉(以下、鬼塚)が登場。しかし金子は気がつかない

鬼塚 「…金子さん?」
金子 「わっ、びっくりした」
鬼塚 「なにしてるんですか、気持ち悪いですよ、独り言言うの」
金子 「違うよ、(台本を見せて)これこれ。今度の芝居の練習」
鬼塚 「ほどほどしてくださいよ」
金子 「役に没頭すると周りが見えなくなっちゃうんだよね」
鬼塚 「そうですか」
金子 「でもさアレに向けて今、劇団でもオーディションが始まってさ
結構大事な時期なんだよね。(わざとらしく)あー大変だなー」
鬼塚 「そうですか」
金子 「いや、そうじゃないでしょ。聞くことあるでしょ」
鬼塚 「そうですか」
金子 「興味持とうよ。バイト同士なんだし」
鬼塚 「そうですか」
金子 「俺の話聞いてる?」
鬼塚 「そうですか」
金子 「ちょっと」

鬼塚、はける。あとを追うように金子もはける
鬼塚はエプロンを身に付け、金子は鬼塚のあとを追うように登場

金子 「ほんとさ、アレが大変でさ〜。アレがアレしてアレになっちゃってね
    いやほんとアレだな〜。…(強調して)アレだな〜」
鬼塚 「…アレってなんですか」
金子 「気になる?」
鬼塚 「そんだけ言われたら、嫌でも気になりますよ」
金子 「聞きたい?聞きたい?」
鬼塚 「いや別に」
金子 「聞きたいでしょ?」
鬼塚 「だから…」
金子 「どうしようかな〜。そこまで言うなら言ってあげてもいいんだけどな〜」

鬼塚、金子の耳を引っ張る

金子 「痛い痛い、なにすんの?」
鬼塚 「顔の横にゴミが付いてたんで」
金子 「耳だよ、これ」
鬼塚 「…で、アレってなんですか?」
金子 「やっと興味持ったね
ほら、○月×日に国王と王妃さまの結婚記念パーティーがあるでしょ」
鬼塚 「毎年結婚記念日にやるやつですよね」


金子 「そう、毎年その日は王様たちの結婚記念日を国中でお祝いする。あちこちで出店がならび、王様の目の前で出し物が披露され、その様子がテレビで中継される。
そこで我が劇団『少年パイナップル』でもお芝居をご覧頂こうって思ってね」
鬼塚 「そうですか」
金子 「つれないな。もしかしたら芝居が関係者の目にとまって
一躍トップスターってことも無きにしも非ずでしょ」
鬼塚 「自分が有名になりたいだけじゃないですか」
金子 「ちゃんとお祝いの気持ちもあるからね」
鬼塚 「どのくらい?」
金子 「…2割」
鬼塚 「ダメだ、こいつ」
金子 「年上に向かって、そういう言い方はないんじゃない?」
鬼塚 「それより店番はどうしたんですか?私とアイさんがケーキ配達してる間、
お願いしますって言いましたよね」
金子 「そうだっけ?」
鬼塚 「そうですよ」
金子 「じゃあ、その代わりと言うとあれだけど
ケーキ作ってみたんだよ。見よう見まねだけどさ」

金子、袖からトレイにのった丸焦げのスポンジケーキを持ってくる

鬼塚 「なんですか、これ」
金子 「ハート型のスポンジケーキ」
鬼塚 「丸焦げじゃないですか」
金子 「いや、いろいろと大変だったんだよ」
鬼塚 「そういうのいいですから」

七海アイ(以下、七海)が登場

七海 「配達終わりました」
鬼塚 「アイさん。ちょっとこれ見てくださいよ」
七海 「ああ、こんなに焦がしちゃって」
金子 「すこし目を離したらそうなっちゃって」
鬼塚 「店番もせず、何やってるんですか」
金子 「いや、これにはいろいろ事情があって…」
七海 「それで店長は帰ってきました」
鬼塚 「そうだ。最初は店番、店長に頼もうとしたのにいなくて
ほんとどこいったんですかね」

くちひげの店長、大鶴一義(以下、大鶴)が登場

大鶴 「なに?呼んだ?」
七海 「店長どこいってたんですか…ってなんか臭い」
鬼塚 「もしかしてお酒飲んでます?」
大鶴 「ピンポーン、大正解」
七海 「また営業中ですよ」
大鶴 「でも、安いやつよ、お酒」
七海 「値段の問題じゃなくて」
鬼塚 「それよりどこに行ってたんですか?」
大鶴 「どこだと思う?」
鬼塚 「うわ、なんかデジャブ」
七海 「そういうのいいですから」
金子 「店長、冷蔵庫で寝てたの」
鬼塚・七海 「冷蔵庫」
金子 「ちょうどスポンジを焼いてたら、なんか物音がするのに気がついて、
冷蔵庫開けたら店長がいたんだよ」
鬼塚 「まず材料取り出すところで気づくでしょ」
金子 「材料は適当に選んだだけで、じっくり見てたわけじゃないからさ」
大鶴 「でも助かったよ。内側からだと開けられないから
あやうく死んじゃうところだったよ、アハハ」
鬼塚 「笑い事じゃないですよ」
七海 「でもなんで、そんなところに」
大鶴 「…実は昨日娘がバンドマンの彼氏を連れてきたんだよ
初めて見た時の衝撃ったらないよ。耳と鼻に無数のピアスを開けて、眉毛がなく
てね、髪の毛なんて真っ赤で、しかもモヒカン。見た目トサカだよ
親としては心配で、心配で、ついお酒を飲みすぎてしまって」
金子 「それで記憶がなくなって気がついたら冷蔵庫にいた」
大鶴 「そう」
金子 「気持ちわかりますよ、俺」
大鶴 「わかってくれる?」

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