チェリーに口づけを

(ちぇりーにくちづけを)
初演日:0/0 作者:田口ユウタ
【チェリーに口づけを】
                           
                             作 田口ユウタ
     CAST【男6:女1】
  
     高橋 誠  (21) サークル長      
     大川 祐  (20) 誠の親友      
     林 信二  (21) 真面目      
     岡 友則  (20) いじられ役      
     松本 俊  (18) 新入部員      
     星川 光  (18) 誠の好きな人     
     坂西 亮  (18) ヒカリと同サークル 

1、   脱○○宣言  8月7日
 
    ここは恋愛研究部(通称恋研)の部室。
     いたるところにガラクタや恋愛に関する本から
     関係ない本が重ねられている。
     舞台中央にはテーブルが置いてあり、上手には
     出入り用のドアが、下手には窓がある。
     外からはセミの鳴き声がする。
     誠、イスにどっしりと座っている。
    すると、ドアのほうから騒がしい声が聞こえてくる。

 祐  「いや、だから本当なんだって」
 信二 「誠が?」
 祐  「うん」
 信二 「女の子と?」
 祐  「うんうん」
 信二 「ふーん」
 祐  「なんだよ、その反応」
 信二 「でも、ただの夢でしょ?」
 祐  「いや、まぁそうなんだけどさ」
 信二 「第一、実際に誠が女の子とキスなんてありえないでしょ」
 祐  「それも、そうか」

    信二、ドアを開ける。
    すると、ドアの前には誠が。

 信二 「うわっ!」
 祐  「え、何!?」
 誠  「・・・」
 祐  「なんだ、誠か。驚かすなよ」
 信二 「心臓に悪い」
 誠  「・・・」
 祐  「ちょっと入れないんだけど」
 信二 「誠?」
 誠  「なぜ、そう言い切れる?」
 信二 「え?」
 祐  「何のこと?」
 誠  「なぜ俺がキスできないと言い切れるんだ?」
 信二 「あ、そのこと」
 祐  「なになに盗み聞きー?悪趣味だねぇ〜」
 誠  「俺は真面目に聞いてるんだよ!なんであり得ないんだよ」
 祐  「お前さんは22年間生きてきてそんな経験したことあるのか?」
 誠  「いや、それは、ねぇけど」
 祐  「だろ?だから、あり得ないって言ってるの」
 信二 「淡い期待は自分を苦しめるだけですよ、お客さん」
 誠  「あり得るかあり得ないかは誰にもわからないだろ」
 祐  「はいはい」
 誠  「ってか、お前ら来るの遅いんだよ!」
 信二 「何のこと?」
 誠  「昨日の夜、明日は朝9時に集合ってLINEで言っただろ」
 信二 「あー、ごめん、普通に忘れてた」
 祐  「俺も」
 誠  「いやいや、あり得ないお前ら」
 祐  「そう言われてもね?」
 信二 「しちゃったものはしょうがないしね?」
 誠  「大事な話があるって言ったろ!?」
 祐  「うるせーなー」
 誠  「うるせーとはなんだ」

     誠、祐を後ろから押す。
     祐が飲んでいたトマトジュースが床にこぼれる。

 祐  「ああ!」
 誠  「あ」
 信二 「うわ、誠ひどーい」
 誠  「うるさいうるさい!早く来なかったからこうなったんだ!」
 信二 「いや、わけわかんない!」
 祐  「ていうか、友則も来てないじゃん」
 信二 「そうだそうだ!俺らよりも遅く来てる友則を叱るべきだ」
 誠  「あいつは、はなから時間に間に合うとはとは思ってないよ」

    友則、入って来る

 友則 「ちょっと、待ったー!」
 信二 「あ、来た」
 友則 「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん(ベートーヴェン:運命風)
 祐  「呼んでねーよ」
 信二 「いや、呼んだよ?」
 友則 「俺だって時間を守るときは守るぜ?」
 祐  「でも、今日も守れなかったな」
 友則 「まぁ、そういうとこも俺の愛嬌じゃん?」
 祐  「いや、ちょっと何言ってるかわからない」
 友則 「(信二に)なっ?」
 信二 「それで話って?」
 友則 「お前ら、そんな態度ながらも俺のこと大好きだもんな」
 信二 「ごめん、本当にちょっと黙ってて!」
 祐  「暑苦しいから!」
 友則 「お前ら、ひでーよ。野口英世」
 
     間

 友則 「それで、話って?」
 三人 「いやいやいや」
 祐  「この空気で話し始めるのは無理だろ」
 信二 「今のなかったことにするなよ」
 友則 「え、何のことですか? 怖い怖い怖い」
 祐  「お前のほうが怖いわ」
 友則 「暑苦しい空気が冷め切ったところでどうぞ」
 祐  「別に上手くないからな」
 誠  「君たちに集まってもらったのは理由があってだな」
 信二 「まぁ、そうだろうな」
 誠  「無事にテストも終わり、いよいよ夏休みだ」
 友則 「おー」
 誠  「さて、君たちの夏休みの予定は?」
 祐  「俺はたぶん一日中家でゲームやってるな」
 友則 「俺も」
 誠  「信二君は?」
 信二 「俺も家でグダグダしてるだけだな」
 祐  「全員例年通りってことか」
 誠  「なるほどなるほど」
 信二 「それがどうかした?」
 誠  「君たちは例年通りの夏の過ごし方で満足なのか?」
 友則 「え?」
 祐  「どういうこと?」
 誠  「他の連中は海だ川だと夏を満喫しているにも関わらず、ここの連中は
     ただ家に籠っているだけでいいのかと聞いてるんだよ」
 友則 「あ、わかったぞ! お前の言いたいこと!」
 信二 「本当に?」
 誠  「はい、友則くん」
 友則 「さてはお前、俺達と海に行きたいんだろ!」
 信二 「そうなの?」
 祐  「なんだ、それならこんな遠回りなことしないで単刀直入に言えよ」
 友則 「ほら、こいつなかなかなシャイボーイだから」
 祐  「それな」
 友則 「ジャリボーイだから」
 祐  「それな」
 友則 「チェリーボーイだから(小声)」
 祐  「それな(小声)」
 信二 「いいよ。今年はみんなで海に行こう!」
 三人 「おー!」
 誠  「ちげーよ!」
 三人 「え?」
 祐  「何がちげーの?」
 友則 「チェリーボーイが?」
 祐  「そこは合ってるよ」
 友則 「それな!」

    祐、友則 爆笑。

 誠  「うるせぇ!何で男4人で海なんか行かなきゃならないんだよ!
     寂しいわ!寂しすぎるわ!」
 信二 「じゃあ、何が言いたいの?」
 祐  「もうハッキリ言えよ。めんどくさいな」
 友則 「そうだそうだ」
 誠  「おん・・・(小声で聞き取れない)」
 信二 「え?」
 誠  「だからー! 女の子と・・・」
 祐  「女の子と?」
 誠  「女の子と今年こそは夏祭りに行きたいんだよ!」
 信二 「女の子と」
 祐  「夏祭りに」
 誠  「そして、あわよくば!」
 友則 「あわよくば?」
 誠  「・・・チッスがしたい」
 
     間

 誠  「何とか言えよ!」
 祐  「それはな・・・?」
 信二 「うん・・・」
 誠  「なんだよ」
 祐  「いや、まぁ志は高く持つべきだと俺も思う。けど」
 信二 「あまり高すぎても現実味がないというか」
 友則 「無理でしょ」
 祐  「おい、友則!」
 信二 「お前ってやつはどうしてそういうことをすらっと言うんだよ!」
 友則 「え、何で?ダメだった?」
 祐  「俺たちが必死にオブラートに包もうとしてたのに」
 友則 「だって、これまで一回も女の子と夏を過ごしたことないんだろ?」
 信二 「そうだけど!」
 友則 「まず、チッスって何?キスじゃないの?」
 祐  「それはだな、誠なりにかっこつけて言ったんだよ!」
 信二 「そこは触れてくれるなよ」
 誠  「・・・」
 祐  「あーあ、こりゃ怒られるわ」
 信二 「俺、知らないからね」
 誠  「・・・くっくっく」
 祐  「やばいやばい、こいつ不敵な笑みを浮かべ始めたぞ」
 友則 「え、これ俺が悪いの?」
 信二 「早く謝れ!」
 誠  「友則君、君は本当に正直な子だ」
 友則 「やった、なんか褒められた」
 祐  「いや、そうじゃねえだろ!」
 信二 「絶対、褒めてない!」
 誠  「君のそういうところ、俺は大好きだ」
 友則 「やった、なんか告白された」
 信二 「いやいや」
 祐  「まず嬉しいの?」
 信二 「夏祭りって、来月の中旬にある花火大会?」
 誠  「いかにも」
 信二 「仮に女の子が現れたとしても、誠女の子と話せるの?」
 祐  「確かに。今の誠じゃ無理だ」
 友則 「見るからにダサいしな」
 祐  「お前はまたそんなこと言って」
 誠  「確かに、今までの俺はそうだった。だが、今年の俺は違う!
     なぜなら、この本があるから!」

     誠、カバンからある本を取り出す。

 信二 「なにこれ」
 祐  「『これで君もリア充の仲間入り!秘技、女の落とし方 Ver 1.2』」
 信二 「どうしたのこれ」
 誠  「甲高い声で有名な某ショッピングチャンネルで購入した」
 祐  「いくらで?」
 誠  「4980円!(モノマネ)」
 祐  「高っ!」
 誠  「かの有名な、パッション恋愛子先生の本がこの値段で買えるなら安い
     もんだ!」
 祐  「名前、ださっ!」
 信二 「パッションって何」
 祐  「無駄遣いじゃん!」
 信二 「もったいない」
 誠  「女が落とせるなら安い安い。これで俺もリア充の仲間入りだ」
 祐  「こいつはだめだ」
 誠  「そして! あわよくば、この忌々しき支配からの卒業を!」
 信二 「いやいや、誠、今ならまだ返品できるだろうから連絡しなよ」
 誠  「とか言って、お前らも中身が気になるんだろ?」
 祐  「いや、全然興味わかない」
 信二 「俺も」
 友則 「・・・」
 祐  「友則?」
 友則 「お、おう?」
 誠  「あれ?友則君は興味あるみたいだね」
 友則 「! ぜ、全然興味なんか!」
 誠  「そうか、残念だ」
 友則 「あ、あぁ・・・」
 祐  「友則・・・」
 友則 「いや、本当に、興味なんか・・・」
 信二 「ねぇ」
 誠  「なんだい、俺と同じくらい非リア充な信二君」
 祐  「なんだこいつ」
 信二 「あのさ、その本結構ネットで叩かれてるけど大丈夫?」
 誠  「え?」
 信二 「ほら」
 祐  「うわ! うわうわうわ」
 友則 「『何ひとつ役に立ちませんでした。まず読者を下に見て
     いる感じに腹が立ちました。40代 男性 アルバイト』」
 祐  「『書いてあることが古典的でネットで調べれば出てくのばかりで
     話にならない。最悪の本。 30代 男性 フリーター』」
 信二 「『とりあえず作者の顔が気に食わない。50代 男性 無職』」
 祐  「最後のレビューは本とまったく関係なかったけど、これはやばいな」
 信二 「しかも、レビュー書いてる人ほとんどダメ人間だけど」
 
     三人、誠を見る。

 誠 「何を言われようと俺は今年リア充の仲間入りしてやる!!!」
 
2、   新入部員?  8月28日
 
    舞台下手で誠が筋トレをしている。
    祐と友則、そんな誠を見ている。
     セミの鳴き声。

 祐  「うぃーす」
 友則 「おう」
 祐  「誠、まだやってるんだ」
 友則 「うん」
 
     間

 祐  「俺思うんだけどさ」
 友則 「ああ」
 祐  「誠にしては頑張ったっと思うんだ」
 友則 「と、言うと?」
 祐  「前までの誠はさ、何というか、まるで絵に描いたような非モテ男
     だったろ?」
 友則 「そうだな」
 祐  「でも、この一か月毎日筋トレとかしてさ、正直俺
     誠のことだからまた三日坊主で終わると思ってたよ」
 友則 「俺も」
 祐  「でもさ」
 友則 「・・・」
 祐  「もう、諦めようぜ?誠」
 誠  「なんでだー」
 祐  「いやだって夏休みもあと半分だぜ?」
 誠  「だから、なんだよ!まだ、終わってないだろ!」
 祐  「じゃあ、お前は今までの期間女の子に声かけられたか!?」
 誠  「そ、れは」
 祐  「ないだろ!? ないから言葉に詰まってるんだろ!?」
 誠  「ちげーし、ちょっと酸欠起こしてるだけだし」
 祐  「あとお前さ香水つけてるだろ?」
 誠  「あ、やっぱわかる?」
 祐  「そんだけ、匂いぷんぷんさせてたら嫌でもわかるわ」
 友則 「え、そうなの?」
 祐  「お前気づいてなかったの!?」
 友則 「うん。何の香り?」
 誠  「インディアン・スパニッシュ」
 友則 「なんじゃそりゃ」
 祐  「インド人なのかスペイン人なのかはっきりしろよ」
 誠  「でも、いい匂いだろ? ゴーグルで調べたんだよ」
 友則 「ゴーグル?」
 誠  「あの検索サイトの」
 友則 「・・・あ、グーグル?」
 誠  「それそれ」
 友則 「リアルで間違える人初めて見た」
 祐  「とりあえず、その香水臭いから使うのやめろ」
 誠  「え、なんでだよ、いい匂いだろ」
 祐  「お前のせいで部室がカレー臭いんだけど」
 友則 「あ、これ誠の香りだったんだ」
 誠  「ったく、うるせーな。筋トレの邪魔するなら出てけよ」
 祐  「いやいや、ここ俺らの部屋だから」

     誠、筋トレに戻る。
     信二、入って来る。

 信二 「おはよう、っ臭」
 友則 「やっぱ臭いみたいよ」
 誠  「うるせ」
 信二 「何、この香り?」
 友則 「インディアン・スパニッシュの香りだって」
 信二 「何それ、インド人なの?スペイン人なの?」
 祐  「同じこと俺も言った」
 信二 「にしても誠よく続くね」
 祐  「ちょっかい出してると出てけって言われるよ」
 信二 「ここ俺らの部屋なのに?」
 祐  「それも言った」
 友則 「でも、本当に頑張るよね」
 信二 「その頑張りを部員勧誘のほうに回してくれるといいんだけどね」
 祐  「だよな」
 友則 「部員勧誘?」
 祐  「ああ」
 友則 「どういうこと?」
 祐  「部員勧誘しないと、このサークル廃部になっちゃうんだよ」
 友則 「なんで?」
 信二 「なんでって部員がいなくなったらこのサークルの存在意義は?」
 友則 「なくなる」

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