時間切れ
机が1つ。椅子も1つ。机を照らす電気スタンドも1つ。照らされている置き時計も1つ。パソコンも1つ。プリンターも1つ。マグカップも1つ。コーヒー豆の入った容器も1つ。コーヒーミルも1つ。電気ケトルも1つ。2リットルの水が入ったペットボトルは3つ。紙フィルターは沢山。コーヒー関連のものは1つの棚の中。
散らばった紙。破れていたり、くしゃくしゃだったり、意図のある折り方だったり、綺麗なままだったり、白紙だったり、何か書いてあったり、ルーズリーフだったり、原稿用紙だったり。それらは沢山。それらに様々な長さや曲がり方をした線を引く道具も沢山。多くは机の上のペン立てに入っている。他はちょいちょい散らかってる。
そして、そういったものを入れるべきゴミ箱は空っぽ。

そこに用を足して戻ってきた男が1人。

「やっぱ緑茶に戻そうかなあ。コーヒーだとどうもトイレが近くなる。でも、こっちの方がかっこいいもんなあ……」

男、机の上の書きかけの脚本を持つ

「なんてこと考える暇があったら脚本のこと考えろって話だよね。はいはい、わかってますわかってます」
「ああああ!何書こう!いや、書く事は決まってるんだよ。秋刀魚とトマトと米糠の話。しかもコメディ。糠床にトマトを入れて先客の秋刀魚と糠床の糠との自己紹介的なことをさせるとこまでは成功した。でもこの先が書けないぃぃ」
「あー、進まない思いつかない。筆が進まな……い……。あ、筆持ってない。筆筆……」

男、筆を持つ

「って思いつく訳あるかあ!墨ねえし!むしろ不便だし!……あ、ペンが進まないとも言うな。ボールペン、シャーペン、万年筆」

ボールペン、シャーペン、万年筆と繰り返しながら、それらを持つ。そして、急に呟くのを止め、ニヤっとしてもう1本ペンを取る。そして机の前に移動し、ペンを床に置く。
そして、ボールペンを持つ。

「よし、ボールペン!」

決めポーズ(?)そしてシャーペンに持ち替える。残り2本も同様

「シャーペン!」
「万年筆!」
「って、思いつくわけないよね。うん」
「こうなったら最終手段」

以下のセリフを言いながらペンを持ち替える。地の底から湧き上がるような迫力(を出せたらいいな)

「筆でもありペンでもある筆ペ……」

男、唐突に決めポーズまでのモーションを止め、ペンたちを机のうえに戻し、代わりに鉛筆と消しゴムを持ってくる

「すべりそうだから普通に書こ」
「まあ、普通にしても進まないんだけど。このままだと締切に間に合わない。時間切れ。時間切れの合図はこの幕が降りたとき。これは違う意味でも時間切れなんだけど」
「ほんとにどうしようこれ……そうだ!こういうときは一旦今まで書いた話の内容を整理しよう。そしたらなにか思いつくかも」

立ち上がり移動しながら周りがみたらアニメの見過ぎのように

「まず、米糠と秋刀魚が薄暗い糠床の中にいる(消灯)。そして光が差し込んだと思ったら(点灯)米糠が混ぜられる(混ぜられるように動く)。そしてそこに何かが落ちた音(停止)!これは糠床に新しい食材が入ったと言って2人は賭けをする。米糠は人参、秋刀魚は胡瓜。さあ、果たしてそこに現れた食材とは……!」
「次回、リコピン豊富なお前って糠漬けにして美味しいの!?乞うご期待!!」

段々白熱していってのフィニッシュ!!!
そして急に虚しくなる男

「って、なにやってんだ俺。あ!トマト、お前の糠漬けは美味しいよ……(慰めるように)。(咳払い)とりあえず今書いたのはこのあとにみんなが自己紹介するとこまでだもんな」
「こうやってみると整理するほどかいてねえ。もー、こうなったら仕方ない。身近なところからヒントを探す作戦だ!ピピピピピ(以下略)」

ピピピ言いながら部屋を物色。なにか探しているのかただ散らかしているのかわからない。

「ピ!」

1冊の本を持つ。

「シェイクスピア作品集」

パラパラとページをめくる。
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