君と海と、未来と。

(きみとうみと、みらいと。)
初演日:0/0 作者:野原万葉
<登場人物>

・澤村七海…高校3年生。一花の姉。
・澤村一花…高校1年生。医学部志望。
・清水…高校3年生。保育科志望。
・トシ…高校3年生。漁師の家の一人息子。
・瀬戸…高校3年生。澤村家とは長い付き合い。


第1場 朝の海辺
   波の音、鳥の声。
   七海が浜辺でスケッチブックに絵を描いている。
   一花、清水、トシ、瀬戸が出てくる。朝の登校風景。
清水「おはよう!」
トシ「おーい、澤村!朝っぱらから元気だな!」
一花「姉ちゃん、はよ行かな遅刻するよー!」
七海「はーい、わかってるー!」
清水「元気だねえ、一花ちゃんのお姉ちゃん」
一花「ほんと、毎朝毎朝ひとりで浜辺でスケッチとか。もう、なんなんですかね。」
瀬戸「あはは」
七海「海じゃあ!」
一花「瀬戸先輩、あれ、カクホ」
瀬戸「あ、はい」
清水「七海ちゃん、海が目の前にある高校だからって“みな高”来とんやろ?家けっこう遠いよね」
一花「どんだけ海好きなんでしょうね。ほんと小学生か」
清水「夏が来たから七海ちゃんの時代やもんね」
トシ「いやあ、『海じゃあ!』っていいながら海に飛び込んでいく新入生を見かけた入学式の日、なんかやばいやつがおるっち思ったね」
七海「海じゃあ!」
清水「よっぽど海好きなんやろうね」
トシ「まあ、確かに俺も海は好きやけど、毎日毎日見てもなおあんなテンション上がるとかないわ。ほんとここらへんて海の町じゃん。海しかないじゃん。それで3年間あれだろ。ないわー」
一花「あーもう、あの人!瀬戸先輩もなに一緒に遊んでるんですか!(叫びかける)姉ちゃん、いいかげん学校行くばい!」
トシ「時間やばいんなら先、行ったら?」
清水「まー、(時計をみながら)まだあるし」
七海「おはよー!ごめんごめん、行こっか」
一花「はー、もう」
清水「あ、ねえ、今日なんか提出する課題あったっけ」
一花「数学…」
瀬戸「数学の課題があったと思うけど」
清水「それだけ?」
トシ「おっと記憶にない」
七海「右に同じく」
一花「クズが」
瀬戸「昨日のとこ簡単やったよ」
トシ「お前の簡単は簡単じゃないって」
瀬戸「いやいや、ほんと。ベクトルの最初のとこ」
七海「あー、じゃあ、自分でするかー」
一花「姉ちゃん…」
清水「あ、そういえばこの前の模試、返ってくるんじゃないっけ」
瀬戸「今日なの?」
清水「昨日先生が言ってた気がする。クラスによって違うかもだけど」
トシ「おっと記憶にない」
七海「右に同じく」
一花「あぁ…数学ボロボロだったやつだ…!」
瀬戸「大丈夫大丈夫、そんなにボロボロやなかったやん」
一花「いやでも、大問4のかっこ3…」
七海「え、なんで瀬戸が知ってんの」
一花「だってラインしたし」
七海「え」
瀬戸「あー、うん、たまにするよ?」
一花「昨日の夜も数学の課題見てもらったし」
七海「夜に、ですか」
瀬戸「ああ、あれ難しかったね」
一花「ふふっ、はい」
トシ「あー…、そういえば模試あった気がする」
清水「遅くない?」
トシ「希望校6個書けって言われて焦った記憶がある」
清水「半分は私立やったろ?」
トシ「書かんでよかったん?」
瀬戸「まあ、どうなんやろ」
一花「書いたほうがお得じゃないですか?」
トシ「お得っつってもなあ。俺大学行かんかもしれんしなあ」
清水「結局行かんの?」
トシ「んー、父親は行かせたがってるみたいだけど」
一花「この世の中ですし」
清水「漁師の仕事継いだら、遊ぶ暇とかもないやろうしねえ」
トシ「それいろんな漁師のおっちゃんたちから言われる。若い時遊んどけって」
七海「魚たちに縛られる人生だもんね」
トシ「あ、逆にね。魚を縛るんじゃなくて俺が縛られる…」
瀬戸「漁師になるための学校とかないん?」
トシ「ないこたないけど…」
七海「まあ、まず、模試の結果見てからだよね。」
トシ「そうだなー」
清水「学校行けるだけの頭があるかどうかをね」
トシ「ひでえなあ」

第2場 それぞれの将来
   BGM(東進ハイスクール?)
   七海、一花、清水、トシ、瀬戸の5人がそれぞれ椅子を持ってくる。
   模試をもらう。抽象的な場面。
5人「ありがとうございます」
   1人にスポットライトが順番に当たっていく。他の4人はストップモーション。
   清水にスポットライト。
清水「あ、英語伸びてきたな。校内平均余裕でオーバー。ただ数学は平均よりちょっと下。でも前に比べたらよくなってきてる。志望校の判定も(紙を裏返す)、まあ、そんな悪くないし、なんとかなるかな…。この進路が自分にとってベストな選択なのかはわからないけど、でも。保育科の大学に行って、保育士になる。子供のころからの夢なんだ。夢が叶う時が来てる。どんどん近づいて行ってる。何一つ曇りなんてない。曇りなんてない、はず。けど、本当にこのままでいいのかな。…いや、これが最善の選択なんだ。」
   一花にスポットライト。清水、はける。
一花「(恐る恐る見る)…おお、3教科とも、校内偏差値、上回ってる。順位も…まあ、よかったー。判定は…(紙を裏返す)まあ、そうだよね。そんな簡単に医学部は通らないよね。私は、私の家が医者の家系だからってだけで医者になろうとしてるんじゃない。ちゃんと医者になりたくて、なろうとしてる。その選択に後悔なんてない。後悔なんてない、はず。ただちょっと、…なんでもない。勉強頑張らんとな!」
   瀬戸にスポットライト。一花、はける。
瀬戸「相変わらず数学は優秀。数学は優秀…。(紙を裏返す)判定も、まあ、そこそこ。ただ、なんだろう。この釈然としないかんじ。このまま大学行って、就職して、何がしたいんだろう。みんなみたいに明確な夢があるわけじゃない。澤村みたいに、がむしゃらに追いかけるような夢なんてない。ただただ、起きて食って働いて、寝て食って働いて。特に役に立つことも意味もなく、あってもなくても同じような、ただっぴろい面積だけ取ってる水たまりと同じ。その点、澤村は、…海って感じ。」
   トシにスポットライト。瀬戸、はける。
トシ「はい、欠点、欠点、欠点、欠点、欠点!うわあ、まっかっか。…ま、良い成績取ったところで、ではあるんだけどねえ。漁師になって、海の男として、命かけて生きていく。親父みたいに。…親父みたいに、ね。親父は、良い漁師だと思う。良い漁師だし、良い人間でも良い父親でもあると思う。ほんとかっこいいし、ほんと、尊敬してる。ま、気持ちと態度が比例してるかと言えば、まあ、その…。…俺がそんな男になれるか、っつの…。俺は今、なにをどう、せにゃならんのかの」
   七海にスポット。トシ、はける。
七海「(紙を見る)…うん、予想通り…。いや、予想以上、いや予想以下か?…今この高校にいるのがまず奇跡みたいなもんだし。…幼稚園は大人の決定で小学校は義務。中学校も義務。高校は奇跡で、大学は…。大学は、なんだろう、もはや義務かな。大学卒業して一人前みたいな。でもそれも、安定した職業につけたらのことで。…画家になりたい、とか、青いかな。中二っぽい?東京の学校で絵、やりたいとか、みんなに迷惑かな?安定した職業じゃないし、そもそも医者だらけのうちじゃあ、ね。小さい時から、私馬鹿だったからそんなに両親も期待してなさそうで、病院継ぐなら妹の方にって、そうなってた。ほら、スポーツでもなんでも、兄弟で同じことやり始めたらだいたい下の子が上の子抜くでしょ。フィギアとか野球とか。うちはそれが勉強だっただけ。(成績表を見ながら)逃げてる訳じゃない。ずっと描いてたいんだ。絵を描くのが好きで、死ぬまでずっと、描いていたい。ずっと描き続けてたい。そのためだったら…」
   清水、登場。
清水「七海ちゃん!」
七海「はっ、どうした?ああ、ゆりちゃんか…。」
清水「模試返されたん?」
七海「あ、うん」
清水「どうやった?(七海、うなだれる)次、次がんばろ!あ、そういえば来週ぐらいまた模試なかったっけ」
七海「またこの悪夢が繰り返されるんですか」
清水「高3の1年間はすべてが悪夢なんですよ」
七海「はああー…」
清水「でも、その日、たしか花火大会あったよ。同じ日にあるからって覚えてるからたぶん間違ってないと思う」
七海「模試の後、花火!?」
清水「終わった後、一緒行く?」
七海「行きたい!」
清水「あ、そういえばあいつたちも誘っとく?ボディーガード役として。一緒に行く人いななさそうだし。」
七海「おー、そうしょっか」
清水「一花ちゃんは?」
七海「一花は、友達と行くって言ってたけど」
清水「あ、そうなんだ」
七海「まー、どっかで会うかもね」
清水「あ!ちょうどいいところに!」
トシ「なになに?」
清水「来週ぐらい花火大会あるんだけど、一緒行く?行く人どうせいないでしょ?」
トシ「おーあー、うん、いないけど」
七海「よし、ボディーガードゲットだぜ」
トシ「あ、わー、両手に花だー」
清水「あ、瀬戸君も!ちょうどいいところに!」
瀬戸「うん?あ、模試大丈夫やった?」
七海「大丈夫大丈夫。ねえねえ、来週ぐらい模試の後に花火大会あるんだけど、」
トシ「え、模試あんの模試の後にあんの!?」
清水「うん、そうだけど。瀬戸も行く?」
瀬戸「うん、行く」
七海「よし、けってー」
トシ「模試の後にあんのかよ…。もう、花火と共に打ちあがってしまいたい…」
七海「たまやー」

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