ロメンとジュリエット

その恋、最高かよ!

(ろめんとじゅりえっと)
初演日:2017/7 作者:志野英乃
ロメンとジュリエット  〜その恋、最高かよ!〜

                    作・志野 英乃


   路面電車を通すかどうかで揺れる街に
   燃え上がるひとすじの恋……。
   そのあまりにも純粋な恋が
   アニオタ女子の部屋に転がりこんできた……。


   CAST
    黒須花蓮 くろすかれん 高1女
    江藤樹里 えとうじゅり 高2女
    小田裕三 おだひろみ  高2男
    別宮市長
    警察の人
    機動隊の人1
    機動隊の人2
    テレビレポーターの人
    防衛副大臣


   花蓮が住むアパートの一室。

   ■ 第一幕 ■

花蓮 模試お疲れ〜。あ〜、出来は別にして終わってよかった〜。よ〜し、ではでは、
   週末の夜を心ゆくまで満喫しようではないか〜。カップラーメンよ〜し。おにぎ
   りよ〜し。お菓子よ〜し。アイスよ〜し。そして、あたしよ〜し。この夢のメニ
   ューを食べながら〜の、大好きな声優さんの出ている撮りためたアニメを心ゆく
   まで見るぞ〜!見るぞ〜!オールナイトで見るぞ〜!この幸せ者。ぶははははは。
   っしゃ行くぞ〜!ではでは、テレビ、スイッチオ〜ン!

   花蓮、食べながらテレビを見ながら幸せに浸る。
   ピンポ〜ン。
   花蓮、気づかず食べながらテレビを見ながら幸せに浸っている。
   ピンポ〜ン。ピンポ〜ン。

花蓮 ん?
声  花蓮ちゃん、いる〜?!
花蓮 え?……あ、は〜い。

   花蓮、ドアを開ける。

樹里 よっ。
花蓮 えっ?!せ、先輩?!
樹里 よっ。グッド・イブニ〜ング。
花蓮 じゅ、樹里先輩。えっ?な、何で?
樹里 いや、偶然この辺通りかかったらさ、あ、そういえばこの辺に花蓮ちゃんのアパ
   ートあるんじゃね?みたいな感じで思い出してさ、何か見上げたらここじゃね?
   みたいな感じになってさ、そしたら表札に黒須ってあったらからさ、さらにここ
   じゃね?みたいな確信に変わってさ、偶然たどり着いたこの奇跡を何としよう?
花蓮 ……。
樹里 ま、玄関先も何ですから上がってください、みたいな?
花蓮 いや、それどっちかっていうとあたしのセリフですけど。
樹里 わ〜、これが憧れの一人暮らしってやつですか?

   樹里、靴を脱いで上がる。

花蓮 わ〜、上がっちゃうんだ。
樹里 え〜?一人暮らしして半年くらい?
花蓮 そうですね、五月からですから、半年くらいです。
樹里 入学して一カ月は家から通ってたんだっけ?
花蓮 はい。売山村から通ってました。
樹里 あ〜、売山村なんだ。あの、山が売るほどあるという。
花蓮 はい。山が売るほどある売山村です。実際、山売ってますけど、いまいち買い手
   がつかないという。
樹里 え〜っ?何で買い手つかないの?何か山欲しくない?
花蓮 家とかは建てちゃダメって、法律で決められている山が多いらしくて。
樹里 じゃ、山買ったら何に使うの?
花蓮 林業とか、あとはきのこ採るとか。
樹里 へ〜。花蓮ちゃんちって何やってる家?
花蓮 ……林業とか、きのこ採って生活しています。
樹里 ふ〜ん。売山村から学校まではやっぱ遠いの?
花蓮 はい。片道三時間くらいですかね。
樹里 三時間?!
花蓮 はい。片道三時間です。朝は五時半の始発に乗らないと間に合わないんで。
樹里 えっ?!ま、立ち話も何だからここ座っちゃうね。

   樹里、こたつに入る。

花蓮 あ〜、座っちゃうんだ。

   花蓮もこたつに入る。

樹里 わ〜、何か落ち着く。あれ?何かお菓子がある。食べちゃお。
花蓮 わ〜、食べちゃうんだ。
樹里 それでそれで。
花蓮 帰りなんか少し合唱部やったりするじゃないですか。そしたら十八時の電車で帰
   っても今度は少し連絡が悪いんで、家着くの二十二時です。
樹里 二十二時?!それでさすがに別宮に住もうってなったんだ。
花蓮 はい。高校生から一人暮らしって少し早いんですけど、通学に往復七時間かかる
   っていうのは、さすがにどうよということで、親がここ借りてくれました。
樹里 八雲ハイツって言うんだ。
花蓮 はい。ここ家賃五万円なんですけど、日当たりいいし、学校までチャリで五分で
   すし、結構気に入ってます。
樹里 いいな〜、夢の一人暮らし。
花蓮 親に感謝って感じです。別宮高校に行きたいって言った時も応援してくれました
   し。
樹里 ……いい親じゃん。
花蓮 はい。感謝しないとですよね。将来は恩返しで売山村に戻って何か村のために尽
   くそうと考えてます。
樹里 ほぉ。今、夕食食べてるとこだったんだ。何かごめんね。
花蓮 いえ。先輩は夕ご飯はこれからですか?
樹里 うん。あ、このおにぎりも食べちゃお。

   樹里、おにぎりを食べる。

花蓮 ははは。こんな庶民の部屋に先輩みたいなお嬢様が。
樹里 お嬢様じゃないよ。
花蓮 お嬢様じゃないですか。だって、先輩のお父様は別宮市長じゃないですか。
樹里 たいしたことないって。別宮市長なんて。
花蓮 たいしたことありますよ。市長様ですよ。世が世ならお殿様じゃないですか。
樹里 ただのそういう役職ってだけだよ。
花蓮 先輩なんか世が世ならお姫様じゃないですか。
樹里 もうそんな世の中じゃないでしょ。市長なんて落選したらただの人だよ。てか、
   落選したらただのプーだよ、あんな人。
花蓮 でも、この前の選挙勝って三選決めましたよね。
樹里 危なかったけどね。てか、その話題止めない?私、あんまり父親の話されるの好
   きじゃないから。
花蓮 あ……はい。すみません。
樹里 花蓮ちゃん、最近、部活来ないね。どうした?
花蓮 すみません。実は合唱部辞めようと思ってまして。
樹里 えっ?何で?
花蓮 部活と趣味の両立が難しくなりまして。
樹里 部活と趣味?
花蓮 もともと勉強と家事が忙しいってのもあるんですけど、残った時間を部活と趣味、
   どちらに振り分けるかというと、やはり趣味かなぁと。
樹里 花蓮ちゃんの趣味って何だっけ?
花蓮 いやぁ……ははは。
樹里 アニメだ。
花蓮 えっ?図星!
樹里 顔に描いてあるって。大好きな声優さんとかいるんでしょ?
花蓮 えっ?……はい。実はおっしゃる通り大好きな声優さんがいまして、その方の出
   ているアニメを見るのが至上の喜びと言いますか、至福の時と言いますか。
樹里 大好きな声優さんって男?
花蓮 ……男の方です。
樹里 ふ〜ん。
花蓮 ……何かいけなかったでしょうか?
樹里 いや、べつに。今、かかってるアニメに出てる?その人。
花蓮 あっ、はいっ!いや、ははははは!
樹里 ……あ。

   樹里、携帯を見る。

花蓮 え?
樹里 ……。

   樹里、携帯を見る。何か文字を打つ。

花蓮 ……。
樹里 何でもない。ごめんごめん。で、大好きな声優さんって、誰?誰?
花蓮 いや、秘密です!秘密!それはあたしの心の中のプライベートエリアですから、
   誰も立ち入り禁止と言いますか!
樹里 そのプライベートエリアに入っちゃおうかな。
花蓮 ダメですって!ダメ〜!それが明らかになった日には、あたしの中の何かが崩壊
   します!あ〜、もうビデオ消しましょうね!テレビ見ましょう、テレビ!ぽちっ。

   花蓮、テレビに切り替える。

樹里 え〜、知りたかったな〜、その大好きな声優さん。
花蓮 いいんですって!あっ、テレビ面白いなぁ。マジウケるんですけど。わはははは。
樹里 笑い方、学芸会か。

   ピンポ〜ン。

樹里 !
花蓮 わはははは。
樹里 てか、花蓮ちゃん、誰か来たよ。

   ピンポ〜ン。ピンポ〜ン。

花蓮 え?誰か来た?普段誰も来ないのに、な、何で?
声  黒須、いる〜?!
花蓮 え?……あ、は〜い。

   花蓮、ドアを開ける。

裕三 おす。
花蓮 えっ?!お、小田先輩?!
裕三 おす。こんちは〜、いや、もうこんばんはかな〜。
花蓮 お、小田先輩。えっ?な、何で?
裕三 いや、偶然この辺通りかかったらさ、あ、そういえばこの辺に黒須のアパートあ
   るんじゃね?みたいな感じで思い出してさ、何か見上げたらここじゃね?みたい
   な感じになってさ、そしたら表札に黒須ってあったらからさ、さらにここじゃね?
   みたいな確信に変わってさ、偶然たどり着いたこの奇跡を何としよう?
花蓮 ……何かさっき聞いたようなセリフですけど。
樹里 ……花蓮ちゃん、誰?
花蓮 先輩です。委員会で一緒の。
樹里 委員会?
花蓮 はい。園芸委員会で一緒にひまわり植えた小田先輩って言って。
裕三 ま、玄関先も何だから上がってください、みたいな?
花蓮 いや、それもどっちかっていうとあたしのセリフですけど。
裕三 何か部屋の中に誰かいるみたいだし。さすがに女の子一人だったら僕も上がった
   りはしないけど、誰かいるなら安心、みたいな。おじゃましま〜す。
花蓮 はい?
裕三 お〜、これが憧れの一人暮らしってやつですか?

   裕三、靴を脱いで上がる。

花蓮 わ〜、上がっちゃうんだ。てか、お父さん以外でこの家上がる男の人初めてなん
   ですけど。
樹里 ……。
裕三 ……。
花蓮 え〜と、お二人は?
樹里 ……ひ、裕三君。
裕三 ……じ、樹里さん。
花蓮 あ、やはりお知り合いでしたか?
樹里 うん。同じ学年だから。裕三君とはクラスは違うけど。
裕三 うん。樹里さんとはたまに廊下ですれ違った時に立ち話くらいはする間柄だから。
花蓮 あ〜、そうでしたか。
樹里 ま、立ち話も何だから。
裕三 そうだね。ここ座ってください、みたいな。

   裕三、こたつに入る。

花蓮 あ〜、座っちゃうんだ。
樹里 何か落ち着くでしょ?
裕三 うん。落ち着く〜。あれ?何かアイスがある。食べちゃお。
花蓮 わ〜、食べちゃうんだ。
樹里 (微笑)
裕三 (微笑)
花蓮 (微笑)……何だろ?一人で過ごそうと思っていた夜になぜか千客万来。
裕三 え?二人、何してたの?
樹里 テレビ見てたとこ。
裕三 ああ、テレビね。テレビはいつの時代も娯楽の王様ですな。あ、カップラーメン
   がある。このカップラーメンも食べちゃお。

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