からくり姉さん

(からくりねえさん)
初演日:0/0 作者:ロウショウ・シュンコウ

「からくり姉さん」

登場人物(男3(4):女2)
リントン(女) 気の抜けた感じの姉さん。年齢不詳
茅野 彩陽(女)    裏表のあるタイプの女
島野(男)      小心者の若者。じつは天才
三村 周平(男)    アホ。うざい。でもいいやつ
内藤 真面目(男)    真面目そうなイケメン
記者(男)      人当たりのいい記者(周平か真面目と兼ね役が可能)

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    ―1―

 登場人物<島野、リントン、記者>

 暗転中。
 ガヤのざわめきと、たくさんのシャッター音。

 明転。
 島野が前に立ってちぢこまっており、リントンはうしろに待機している。
 記者は客席のそばで熱心にメモをとる。
 たくさんのシャッター音。

島野       それではリントン、お願いします
リントン  あいよー

 わずかな歓声があがる。

リントン  (前へ)やあやあ、どうもどうも。しかしすごい眺めですなあ。さて……(なわを見せ、なわとびをはじめる。そんなに上手くはない)

 たくさんのシャッター音。

リントン  最近のマイブームです
記者       ははあ、上手いもんですね
リントン  いやあ、それほどでも〜
記者       ほう、受け答えもばっちりだ
島野       なにか簡単な指示をいただければ、可能なかぎりお答えします
記者       では……歌など、歌っていただければ
リントン  ちょっとそれは、恥ずかしいですかな
記者       恥ずかしい? ……ほほう

 会場ざわつく。島野あわてる。

リントン  楽器の演奏ならできまっせ
島野       そ、そんなの持ってきてないよ!
リントン  ほげー、練習してきたのにー
島野       ご、ご覧のように、彼女自身で機転を利かせて行動することもできるわけです
記者       こう見ると、もはや完全に人間と変わりないといってもよさそうですね
島野       いえ、それは……。一見すると人を完全再現できているようにも見えますが、まだ、本物からはほど遠い。最も重要な研究がおわっていないんです

 たくさんのシャッター音。
 会場が静かになる。

島野       彼女には、決定的に足りないものがあります

 暗転。


    ―2―

 登場人物<彩陽、周平、リントン>

 明転。
 並んだイスに彩陽と周平が座っている。足元には複数の買い物袋。
 そこからやや離れた地べたにリントンが座っている。

彩陽       (猫なで声)あ〜ショッピング楽しかった〜。また行こうね、周くん
周平       えっ? も、もちろん! 毎日だって行ってやるさ!
彩陽       え〜? 毎日はちょっと〜
周平       そ、そうだよね! あはははは! ……あ、彩陽ちゃん
彩陽       なあに、周くん
周平       (くちびるを突き出す)
彩陽       なにしてるの〜?
周平       む〜(くちびるを突き出す)……ほ、ほら!
彩陽       ごめんね〜、わたしわかんな〜い
周平       なんだそっか〜、わかんないか〜。かわいいなあ彩陽ちゃんは!
彩陽       ほんと〜?
周平       本当だとも! 彩陽ちゃん、愛してるよ〜!
彩陽       うれし〜、わたしも愛してる〜!
リントン  いやはや、お暑い! お暑いですねえ!
周平       そうかなあ、きみもそう思う〜?
リントン  ええ、ええ。それで、お暑くやられているところ、たいへん恐縮なんですが
周平       ああ、そうだった。きみ迷子なんだっけ
リントン  へい。恥ずかしながら
彩陽       この人ならだいじょうぶよ。わたしが責任をもって送っておくから
周平       でもさー、ぜんぶ彩陽ちゃんに任せるってのもなあ
彩陽       しょうがないよ〜、周くんはお仕事あるんでしょ? ほらほら、そろそろ時間じゃない?
周平       ……ごめん! 任せるよ!
彩陽       任せて〜!
周平       それじゃあ、寂しいけど行ってくるよ。……あ、彩陽ちゃあああん!
彩陽       周くううううん!

 周平、はける。(下手)

彩陽       周くん! だーいすき!(投げキス)
周平       ……キュンッ


    ―3―

 登場人物<リントン、彩陽、島野>

 二人きりになって、場が静まる。

リントン  さて。彩陽さん
彩陽       (舌打ち)
リントン  へ? あの〜、彩陽さんとやら
彩陽       …………
リントン  家に届けてもらいたいんですが
彩陽       はあ? ひとりで帰んなさいよ
リントン  おわあ……
彩陽       ってか、いい歳こいて迷子ってなんなわけ? 恥ずかしくないの? つーかあんたのせいでデートが台無しだったんですけど。あ、そうだ。じゃああんたさ、荷物もつの手伝ってくんない?
リントン  そうしたら送っていただけるんでしょうか
彩陽       そうねえ。ま、いいわよ
リントン  あ、彩陽さま!
彩陽       様とか付けんな。……おめでたいやつ
リントン  じゃあさっそく(買い物袋を持つ)
彩陽       たのんだわよ
リントン  へい!
彩陽       そういえばあんた、どっかで見たことがあるような気がすんのよね
リントン  あ〜、それならたぶん
島野       いたー!

 島野が飛び出してくる。(下手)

彩陽       (すばやく荷物をうばいとる)
島野       (息切れ)急にいなくなるからどうしようかと……あれ?
リントン  やや、ご主人!
彩陽       (猫なで声)あら。ご家族?
島野       あっ、そ、その……ぼ、ぼくは、その……
リントン  すみませんなあ。女の子とはなすのが不慣れなもんで
島野       り、リントン!
彩陽       ふうん、あなたリントンっていうんだぁ。かわいい
島野       ほ、本当ですか! 名前、かわいいですか!
彩陽       え? ええ
リントン  じつはわたし、この人に名づけてもらったんですよ〜
彩陽       名づけて? わあ、すご〜い! そうなんだ〜!
島野       (照れる)……そ、それで、その。きみは?
リントン  通りかかりの人だよ
彩陽       リンちゃんが迷子になってたからぁ、家に送り届けてあげるってはなしになって〜
島野       リンちゃん?
リントン  わ、た、し
島野       あ……ああ! すいません! ご迷惑をおかけして!
彩陽       気にしなくていいですよぉ〜。好きでやったことだし〜
リントン  ん?
彩陽       ん?(睨む)
リントン  ん〜……
島野       でも、なにかお礼くらいは
彩陽       いいですよぉ。……あら? そういえばあなた、どこかで
島野       ぼ、ぼくですか?
彩陽       リンちゃんもなんだけどぉ、どこかで見たような気がしてて。あっ!
島野       ひぃっ
彩陽       ちょっと前のテレビに出てた人だあ! すご〜い、有名人だったんだあ。島野くんっていうんだっけぇ。あれって、たしか〜……あたらしいロボットの。(素に戻る)えっ? じゃあ、あんた!
リントン  ロボットです
彩陽       うっそマジ? ……え〜、すご〜い! ふつうの女の子だと思っちゃったあ
島野       (照れる)
彩陽       島野くんがつくったんだよね?
島野       ええ、まあ
彩陽       かっこいい〜! いっしょに写真とってもいいですかあ?
島野       ええっ? あ、いえ、その、ど、どどどうぞ
彩陽       やったあ

 彩陽の携帯でスリーショット。リントンはしっかり決める。
 シャッター音。

リントン  ……決まったぜ
彩陽       (携帯画面とリントンを見比べて)やっぱり人にしか見えな〜い。ほんとうはただの女の子だったりして
島野       そ、そんなことは
彩陽       リンちゃんってぇ、ちょこーっとおもしろい性格してるよねぇ
島野       ぼくの趣味です
彩陽       ふうん。どうして女の子なの?
島野       ぼくの趣味です。あっ……
彩陽       そっかあ。島野くん、リンちゃんみたいな子が好きなんだあ
リントン  初耳!
島野       え、あ、いや。……は、はい
リントン  照れますな
島野       ただ、彼女は……あくまでもロボットなので
彩陽       し、ま、の、くん。恋にはそんなの関係ないのよ
リントン  そうだそうだ
島野       いえ、あります
彩陽       え〜、島野くんつめた〜い
島野       ちゃ、ちゃんと理由はあります。リントンは見た目や動きだけなら完全に人間ですし、それについては自信があります。ただ……彼女には、決定的に足りないところがあるんです
彩陽       ……足りないところ?
島野       そうです、人間にあって、リントンに欠けているもの。それは、心です。心までは作れませんでした
彩陽       ……でも、さっきからこんなに楽しくおしゃべりしてるのに
島野       プログラムで受け答えをしているにすぎません。感情があるような素振りをしているだけです。ひとりごとを言ったり、ひとりで遊んだりもしますが、それもすべてプログラムで、より人間らしい振る舞いをするように設定したからなんです

 間。

リントン  えーまあ、そうなんですよー、じつは
彩陽       ぜんぜん見えないけど……そうだったんだぁ
島野       だから、とてもじゃないですが、恋愛感情を持つなんてできません
リントン  ほげー。いまのは傷つきますわあ
島野       と言いながら、なんにも感じてはいないわけです
リントン  へへへ
彩陽       なんだか不思議ねえ……
島野       では、ぼくたちはそろそろ
リントン  はあ。はじめての散歩も終わりですか
島野       散歩じゃなくて脱走でしょ。ほら、行くよ
彩陽       いままで出歩いたことなかったの?
島野       あんまり外に出してなにかあると大変なので
彩陽       ずっとへやに入れてるの?
島野       は、はい
彩陽       え〜! 監禁みたーい。かわいそ〜!
島野       かわいそう……ですか?
彩陽       そうだよ〜。ねえリンちゃん?
リントン  ほんと、かわいそうなやつですよわたしは
島野       だ、だけど本当にあぶないので
彩陽       でもでも〜、それじゃあちゃんと人間らしくなんてできないんじゃない?
島野       ……たしかにそれは、一理ありますね
彩陽       でしょ〜?
島野       ところで、えっと……えーっと……
彩陽       わたしの名前? 茅野彩陽でーす
島野       茅野さんは、リントンのことは好きですか?
彩陽       ええ! だ〜いすき!
島野       でしたら、お願いがあるのですが
彩陽       なになに〜?
島野       彼女をひとりで出歩かせるわけにはいかないのでだれかについていてもらいたいのですが、ぼくではちょっと……なので、ここはぜひ茅野さんにお願いしたいなあと
リントン  おや
彩陽       わ、わたしに?
島野       はい! さいわいリントンともお友だちになっていただけそうですし
彩陽       で、でも〜
島野       ぼくとしてもあなたなら安心できる気がしますしもちろん結果的に研究に協力いただくことになるわけですから報酬はいくらでもお支払いしますしスケジュールはそちらの都合に合わせられますしリントンにも茅野さんを困らせるようなことはさせませんし
彩陽       (島野のセリフにはさむ形で)ちょ、ちょっと、わたしは……わたしはやらないから!

 暗転。


    ―4―

 登場人物<彩陽、リントン、真面目>

 明転。
 下手側、彩陽がイスに座っている。そのそばにリントンが立つ。(荷物はもうない)

彩陽       マジ最悪。てきとうなこと言うんじゃなかった
リントン  姉御、今日からしばらくお世話になりやす
彩陽       なんなのよあの男は。急に早口になるし人の話は聞かないし
リントン  さっそく街に行きたいんですがね!
彩陽       っていうかなんなのっ? なんでこいつといっしょに生活するって話になってんのよ! ちょっと街へ連れて行くって話だったじゃない!
リントン  姉御〜
彩陽       (舌打ち)
リントン  彩陽ちゃ〜ん
彩陽       うっさい。話しかけないでくんない?
リントン  しゅん……
彩陽       うざいんだよ。落ち込んでなんかないくせに
リントン  へへへ
彩陽       だれがいったのよ、このバカがかわいそうなんて。心がないっていってんのよ? かわいそうなわけないじゃない。どうせなにも思わないんだから
リントン  あーでも外に行けないとデータが取れないなあ。いやはや困った困った
彩陽       面倒くさい……
リントン  データ取れなかったら島野くんにばれちゃうなあ。怒られちゃうなあ
彩陽       面倒くさい面倒くさい……

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