ジューンブライド
6月 ジューンブライド

 婿と、嫁らしき人がいる。嫁は私服。

婿「いよいよ、この時が来たんだな」
嫁「…うん」
婿「感慨深いよな。だって、俺たち高校からだろう?あの時からしたら、結婚なんてって感じだよな」
嫁「ああ、はい」
婿「やっぱり、雨降っちゃったな。6月は結婚生活の女神ユノーが見守ってくれるからって、ギリギリ6月に式を入れたんだぞ」
嫁「そうだったのね」
婿「あ、いや、ごめん。別に雨降ったこと責めてるわけじゃないんだ。雨降った、けれど、単純に嬉しいって伝えたかったんだ」
嫁「はあ」
婿「ああ、いよいよだな」

 いよいよな雰囲気の音楽。

嫁「なんだよ、これ」
婿「え」
嫁「え、じゃないだろう。式を前にお嫁さんがいなくなったと言うから来たんだぞ。何をちゃっかり私で進めようとしているの」
婿「もういっそ君と式を挙げちゃおうと思って」
嫁「そんな軽いものじゃないからな」
婿「よし分かった。いくらだ?」
嫁「は?」
婿「いくら積めばやってくれるんだ?」
嫁「お金の問題じゃない」
婿「僕の気持ちにもなれよ。花嫁は失踪したかもしれないが、出席者は誰一人として失踪していないんだぞ」
嫁「そりゃそうでしょうね」
婿「これじゃあ西園寺家の面目丸つぶれじゃないか。君でもいいから式だけは挙げる」
嫁「私で妥協みたいになってるじゃないの」
婿「百か。百積めばやってくれるのか」
嫁「だからやらな…。ひゃ、百、かぁ」
婿「ふふ、大金を前に揺らいでいるようだねえ」
嫁「あ、あう、そんなことは」
婿「ようし、望み通り100g積もうじゃないか」
嫁「1円玉100枚の100円じゃないか」
婿「…君、すごいね」
嫁「ちゃんと探したの?花嫁さん、案外トイレにこもってたりするんじゃないの」
婿「散々探した結果がこれだ。憐れむなら、好きにすればいいさ」
嫁「…。あ、あたしもう一度探してくるよ」
婿「いいよ、探さなくて」
嫁「いやでも、いるかもしれないから」
婿「いいんだってば」
嫁「西園寺家の面目が丸つぶれになるんでしょ」
婿「結婚してくれよ!」
嫁「…は?」
婿「だから。僕と、結婚生活の女神ユノーの見守る六月に、結婚してください」
嫁「いや、そんな説明足してほしいわけないでしょ。状況分かって言ってるの?」
婿「今日は結婚式。式場には友人、知人。僕は君と結婚する」
嫁「わかってないじゃないの。全然理解していないと言うより、記憶の一部が改ざんされてるじゃない」
婿「改ざんなんてされていないよ」
嫁「もういい。花嫁を見つければそんなバカげたこと言わなくなるんでしょ」
婿「だからムダだって」
嫁「そんなの分からないでしょ」
婿「分かるよ。だって、そんな人存在しないんだもん」
嫁「ほら、分かってないじゃな。…ん?」
婿「だから、花嫁が失踪したというのは、君を呼び出すための口実」
嫁「あ、何これやだ、どっきりだったの?うわー、まんまと騙されたぁ」
婿「君がいくら隠しカメラのありそうな方向にアピールしても終わらないからね」
嫁「恥ずかしいです」
婿「さあ、腹を決めて、僕と結婚しよう」
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