『騎士の務め』
登場人物

王国騎士
村長


明かりが付くと舞台上、王国騎士と村長がいる。

村長「王国騎士殿、本日はよくぞこのような辺鄙な村に来てくださった。心から礼を言う」
騎士「いえ、騎士として当然のことです。困っている人が居れば手を差し伸べ助ける、それが王国騎士である我々に課せられた義務なのですから」
村長「そう言って頂けると、我らも助かります。大したものは出せませんが、今夜は宴です。飲んで食ってこの村を楽しんでください」
騎士「お気持ち痛み入ります。しかし、依頼は明日だと伺いました。その前日にどんちゃん騒ぎなどできません」
村長「しかし、報酬も大した額を出せない故、何か騎士殿に我らの気持ちを……」
騎士「村長殿、お気になさらないでください。騎士として当然のことです」
村長「あぁ……本当に、なんとお礼を言えば良いのか……」
騎士「して、明日の依頼と言うのは?」
村長「えぇ、この依頼はこれまで何度も色々な方にお頼み申して来ました。されどその誰もが達成出来なかった……豪傑と呼ばれし戦士達も、やつの前では無力でした……」
騎士「もしや、何かを討伐するということですか?」
村長「……はい」
騎士「それならばお任せ下さい! 私は王国騎士、戦い守ることが生業です。この村が何者かの脅威に晒されているならば、この身を以てお救い致しましょう。それで、その討伐対象とは?」
村長「……ドラゴンです」
騎士「……?」
村長「ドラゴンです」
騎士「……ドラゴン?」
村長「ドラゴン」
騎士「……なるほど、わかりました。一つだけ言わせて頂きたい。何故私一人か!!」
村長「もう何人も雇うお金がこの村には無いのです……」
騎士「そ……れを言われたら何も言えないでしょうが!!」
村長「やはり……無理を申してしまいましたな……」
騎士「……いや、申し訳ございません。取り乱してしまいました。この依頼、必ずや私が達成してみせましょう」
村長「騎士殿……」
騎士「目の前で困っている人がいる。それを助けるのは、騎士として当然のことです」
村長「本当に、本当にありがとうございます……」
騎士「しかし、ドラゴンと戦うとなると準備が要りますな。まずドラゴンのことを調べないと」
村長「私めがお答えしましょう」
騎士「それは如何なる?」
村長「こう見えて、私は昔魔導師でしてな、ドラゴンと戦ったこともあるのです」
騎士「なんと!!」
村長「50年前現れたドラゴンは、私と私の仲間で倒したようなものです」
騎士「倒したのにまた現れたのですか?」
村長「ええ、そのドラゴンの孫が」
騎士「孫……」
村長「ドラゴンのことなら私が何でも答えましょう」
騎士「それでは、ドラゴンと戦うに当たって気をつけねばならないことは?」
村長「それは勿論、一撃も攻撃を受けないことですな」
騎士「一撃も?」
村長「そりゃドラゴンの攻撃喰らえば死んじゃいますから」
騎士「サラッと恐ろしいことを言わないで頂きたい」
村長「爪の攻撃が掠っただけで、身体吹っ飛びますからな」
騎士「私、こんな装備で大丈夫でしょうか」
村長「後、口から火を吐くのでそれも一撃ですな」
騎士「火吐かれたらこっちは何も出来ないじゃないですか」
村長「防ぐしか無いですな」
騎士「盾とかで防げるものなのですか」
村長「何でも燃やしますな」
騎士「もう、どうしろと」
村長「ですが、ドラゴンの火をも防ぐ盾と鎧が存在します」
騎士「なんと!! そんなものがあるなら早く教えてください!! それは今どこに?」
村長「フッフッフ……なんと村長の家にありまーす!!」
騎士「おおおおおお!!!!! 突然村長が頼もしく見えてきました!!」
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