聖夜通販物語

(せいやつうはんものがたり)
初演日:2016/12 作者:みなきし
聖夜通販物語

  

   ♀冬子…淡々としている。頭のネジ何本か無い
   ♂鈴夫…ポジティブストーカーアホ。冬子の前ではコミュ障。
   ♀夏美…しっかりしてる冬子の妹
   ♂山田…店長。不審者みが強い
   ♀十中井(となかい)(通販・店員)…ニコニコしてる。強そう。
   ♀田中(通販)…声がでかいオーバーリアクションおばさん。ンフンフ笑う。
   
   ♀買い物中の奥様…キィキィする   

























■12月22日・深夜の通販番組

通販番組っぽいME
二人の女性が出演する通販番組のラストシーン

十中井「ーハイ、では本日の『テレビショッピング・じゃばねっと田中』、お別れが近くなってまいりました〜!田中さん、締めをよろしくお願いします!」

田中「はい〜!では番組を途中からご覧のお客様にもわかりやすいよう、少し説明をはさみつつ商品のまとめをさせていただきますね!こちら、先ほど紹介いたしました『特選フグ』と『お目目ぱっちりマラカス』、そしてお楽しみの、ンフフ、シークレット商品でございます!番組も最後になりますので、お聞き逃しの無いよう、ご注意くださいませ!」

十中井「ではまず…こちらの丸々と太っているフグ、とっても美味しそうですが…どちらで採れたものなんですか?」

田中「はい!こちら冬の味覚としてね、名高いフグでございますが産地はなんとイタリア!この秋、地中海で発見された新種のフグになります。」

十中井「新種ですよ!」

田中「特徴はなんと言っても毒性のなさ!普通、フグはテトロドトキシンという神経伝達を麻痺させる成分を持っているのですが、このフグは鈍くさいのでしょうねえ、身を守る術を持たないフグなのです!なのでご家庭で裁くときも安心!フグ調理師の免許も要りません!」

十中井「すばらしい!外食に行かなくてもご家庭で手軽に新鮮なフグがいただけるわけですね!この時期、どこのお店も予約でいっぱいですから、ご家庭で美味しいものを食べて一息つけるというのはいいですねえ」

田中「そのとおりです!さてこちら、お値段のほうなのですが…なんと丸々一匹、5千円になります!」

十中井「5千円!とってもお買い得です!」

田中「はい、大変お求め安くなっております!さあ深夜ですがジャンジャン電話のほう、鳴っております!テレビの前のあなたも、今すぐお申し込みください」

十中井「こちら先着五百名様となっておりますのでお早目のご決断をお勧めします!さて、では次はこちら、田中さん、よろしくお願いします!」
田中「はい!では続きまして、マラカスです!」

十中井「あの、マラカスなんて生活の中で必要になりますかね?一応、この番組は『あなたの生活に潤いを!』をモットーとしているんですが…」

田中「ご安心ください!必要ですよ!十中井さん、朝早い時ってどうやって起きてますか?」

十中井「え?そうですねえ、普通に目覚ましアラームをセットして」

田中「ンフフうんうん、そうやって起きる人が多いと思います。かくいう私も、そうやって朝、無理やりアラームでたたき起こされてきました。でもそのたびに思うんです、もっとさわやかに起きられる方法はないのかなって。でね、このマラカスを使った起床法に出会って、とってもすっきり目が覚めるようになったんです!」

十中井「まあ!」

田中「詳しい起床法はこちら!只今ワイプにて実践しておりますのでご注目ください!(ワイプがあるていで右上を手で指す)」

十中井「(ワイプもクソも無い右上の虚空を見つめながら)わあ〜画期的〜!」

田中「ンフフ…おっと、そろそろ時間がなくなってきたようです!巻きでいけとADさんが言っております…ンフフ。さて〜こちらお目目ぱっちりマラカスですね、お値段のほうはこちら!通常店頭でお買い求めの場合3980円のところ…なんと!1980円でのご提供になります!」

十中井「え〜っ!それって大丈夫なんですか!?」

田中「大丈夫…じゃないです(笑)メーカー大損覚悟!ぜひお買い求めください!」

十中井「はい!お申し込み先は先ほどのフグと同じく0120-114-280。イイヨ・ツーハンまでお電話ください!…さて、田中さん。今回はクリスマス特別商品があるとお聞きしていたのですが…時間があまり無いですね?ご紹介のほうはどうしましょうか…?」

田中「大丈夫です、安心してください十中井さん!実は今回ご用意したものは、番組冒頭と先ほど申し上げたとおり『シークレット商品』のため、詳しく番組でご紹介することができないんですよ」

十中井「えっ!紹介しないんですか?」

田中「ハイ、しかもこちら、通販ではなく店頭のみのお取り扱いになります」

十中井「ええっ」

田中「こちら私どもの番組のスポンサー、『あなたの生活に潤いを』でおなじみの、もみの木グループ系列店でのお取り扱いが決定しております。そしてこちら、一番お伝えしたいことになるんですけれども、なんと各店限定一個のみのお取り扱いになります!」

十中井「一個のみですって!」

田中「こちら中身のほうはシークレットとなっておりますが、理由があるんですよ。実はこれ、各店店長が心をこめて選んだ最高の一品がね、入っています!」

十中井「日ごろのお客様への感謝をこめての一品になっているんですね。…それにしても何でそれを今、この番組内で告知するんですか?いや、出演者の私が言うのもなんですが、深夜番組なのに…」

田中「それもちゃんと理由があります。実はこれ、どちらかというと私たちの番組の視聴者さんに向けた感謝の気持ちなんですよ。なのであいことばを言わなければ受け取ることができないんです」

十中井「あいことばってなんですか?」

田中「いま番組を見てらっしゃる方には見えていると思いますが、こちら、いま画面の下のほうに出ているのがあいことばになります。お気をつけください、こちらのあいことば無しにはお渡しすることができません。こちらのシークレット商品が店頭に並ぶのは明日から一日間だけ!お値段はなんとタダです!」

十中井「タダ!?」

田中「はい!なのでくれぐれもお早めに!お早めにお店にいらしてください!」

十中井「店員一同、お待ちしております!……さて、そろそろお別れの時間になりますね。田中さん、今日もありがとうございました」

田中「はい!では『テレビショッピング・じゃばねっと田中』、この辺で失礼します!また明日のこの時間お会いしましょう!それでは!」

田中・十中井「さようなら〜!」

番組EDのME 
暗転

アナ(録音)「この番組は『あなたの生活に潤いを』、もみの木グループの提供でお送りいたしました」


■12月23日・店頭

ガヤ

百貨店の中、ひときわ目立つ「クリスマス特別商品・一品限り・無料」というPOPが掲げられた謎の箱と、それいちゃもんをつけるおばはんと店員・十中井がアドリブでやいやいしつつ明転

奥様「タダなんでしょ!?早くよこしなさいよ!」

十中井「すみませんお客様、こちらあいことばを言っていただかない限り、お渡しできないんですよ」

奥様「何よあいことばって!知らないわよそんなの!」

十中井「ではお渡しのほうはできま」

奥様「キィ〜ッあんたねえ、アタシはお客様なのよ!?わかる!?アンタは店員、アタシは客なの!」

十中井「はあ、そうですねえ」

奥様「はあって何よあんた!何!?アンタ名前なんていうの!?本社に社員の教育がなってないんじゃないかって言ってやるから名前教えなさいよ!(名札ガン見する)何?じゅう…じゅうな…?…何この名前?読めやしないわ早く名前言いなさいよ!」

十中井「はあ、となかいと申します」

奥様「と〜な〜か〜い〜?ハ〜ッ浮かれた名前ねえ!さぞ冬は楽しいんでしょうねえ!」

十中井「はい、おかげさまでエンジョイしております」

奥様「キィ〜ッエンジョイですって!まったくもう最近の若者は乱れに乱れてもう大ッ変!だいたいねえ……」

おばさんの昔語りが始まる。冬子登場
おばさんの独り言と冬子と十中井の会話は◇から同時進行

◇奥様「(声は小さめに。張らなくていい)アタシの若い頃のクリスマスはねえ、こんなもんじゃなかったわ!あの頃はダンナも優しくて強くてお金も持っててもう最ッ高!白い雪が降る中を二人でロマンチックに歩いたのよ素敵な夜だったわ!まさにホワイトクリスマスって感じ!それが何?今となったらあんなにかっこよかったダンナも髪はなくなるし腹は出るし足はくさいしだからアタシ、イブの前日なのに消臭剤買いに来たのよ意味わからないわあの頃のトキメキを返してお願いってカンジなのに(次の台詞の『ちょっと!』にうまいことつながればOK)」


◇冬子「あの」

十中井「あ、はい」

冬子「昨日のじゃばねっと見て来たんですけど、まだ商品ってありますか?」

十中井「はい、大丈夫ですよ。あいことばのほうはご存知ですか?」

冬子「はい。えっと…『ハッピーラッキーミラクルクリスマス』」

十中井「はい!確かにあいことば受け取りました!こちら当店の商品です」

冬子「わあ…ありがとうございます。タダで…いいんですよね?」

十中井「はい、無料のものになっています」

冬子「よかった…あの、十中井さんですよね?いつもテレビ見てます。店員さんもされてたんですね」

十中井「あ、お気づきでしたか。うれしいなあ、あれはバイトみたいなもんでして」

割って入るおばはん

奥様「ちょっと!何アンタ勝手にゲットしてんのよ!」

冬子「は?」

奥様「は?じゃないわよ!アンタそれね、アタシがもらうはずだったのよ!よこしなさいよ!」

冬子「いやです。これ、妹へのプレゼントにするんです。だから渡せません」

奥様「ぷれぜんとぉ〜?アンタこれタダよ?しかも中身もわからない、そんなもんをクリスマスのプレゼントにするの?見たところ学生っぽいけど,姉としてどうなの〜?」

十中井「お客様、ちょっと」

奥様「ねえ、店員さんもそう思わない?」

冬子「…うち、親居ないんで。お金ほかに使えないんです。」

奥様「えっ」

冬子「今まで家にサンタさんとか来たことないねって、昨日の晩妹に言われてハッとしたんです。でもお金ないし。だからタダのこれ、狙って店まで来たんです。悪いですか?」

奥様「…あ、あ〜…え〜…(バツが悪そう)」

冬子「悪いですか?(威圧)」

奥様「わ、悪くないわ。ごめん、アタシが悪かったわだから早くその、もって帰りなさい…」

冬子「よかった。おばさんも消臭剤買ったら気をつけて帰ってくださいね。じゃあ失礼します。」

奥様「おば…!?」

冬子「あ、十中井さん、これからも応援してます。田中さんにも応援してるって伝えておいてください。妹もファンなんです」

十中井「あ、はい。ありがとうございます、伝えておきます」

冬子「おねがいします」

冬子スタスタと退場
呆然とする奥様、しれ〜っとしている十中井

奥様「なにあのさらっと失礼な子は…いや苦労してるのか知らないけどそれにしたって」

十中井「まあまあ」

奥様「まあまあじゃないわよホントアンタ何なの。…テレビでてんの?」

十中井「まあ」

奥様「まあじゃないわよ」

鈴夫「あーーーっそこの店員さぁーん!」

ドタドタしながらダッシュで入ってくる鈴夫

奥様「うわっ何?」

鈴夫「あの!あの!あいことば!ハッピーラッキーときめきクリスマス!」

奥様「は?」

鈴夫「あれ?違った!ハッピーラッキーくるくるクリスマス!」

奥様「何この子」

十中井「お客様、すみません。限定商品のほう先ほどもう出てしまいまして」

鈴夫「ハッピーラッキードキドキクリスマス!」

十中井「ミラクルです」

鈴夫「ああ!ハッピーラッキーミラクルクリスマス!」

十中井「はい。でも商品もう無いです」

鈴夫「(くい気味)ハッピーラッキーミラクルクリスマス!」


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